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「自分で考えることが大事だから」と無責任な言葉を放つ新しい主任。だが、新年度の人事発表で明かされたのは

  • 2026.5.20

経験1年半で主任に手を挙げた、新園のスタート

新園としてオープンしたばかりの、まだ壁紙の匂いが残る保育園でした。

新しい園には、まっさらな体制を一から組み立てる立候補制の役職がいくつかあります。

そのひとつ、現場をまとめる主任の席に、保育経験わずか1年半の人が手を挙げました。

性格的に、役職と人の上に立つことがこの上なく好きなタイプであることは、なんとなく感じ取っていました。

朝の打ち合わせで、若手の同僚と顔を見合わせて目で頷き合うような場面が、最初の数週間で何度もあったほどです。

知識も経験も追いついていないことは、現場で働く側からすれば、すぐに分かります。

保護者対応で迷ったクラス担任が、彼女のところへ相談に行ったときのことでした。

「私が答えを言うのは簡単だけど自分で考えることが大事だから」

そう、新人主任は柔らかい笑顔で答えを返したのです。

一見、教育的で優しい言葉に聞こえる。けれど現場の感覚では、答えを持っていないからはぐらかしているだけだと、誰もが薄々気づいていました。

うまく対応できた日には、園長へ報告するときの主語が、ふしぎと「私」に変わるのです。

「私がフォローして見守ったから、無事におさまりました」

手柄は自分、失敗は現場。積もる不満が動かした新年度

失敗した日は、その逆でした。

「自分たちで考えたことだから失敗から学んだでしょ」

上から目線でそう言い切り、自分は責任の輪の外側に、すっと足を引いていく。

クラス担任たちは、最初こそ呑み込んでいました。

新園の立ち上げで、ただでさえ慣れない事務仕事が山積みです。主任とぶつかって余計な火種を増やすより、目の前の子どもたちに集中したほうがいい、と。

けれど、半年が過ぎる頃には、職員室の空気が静かに変わっていきました。

休憩時間に交わされる会話の話題が、子どものエピソードから、彼女の口癖のものまねへと、ゆるやかに置き換わっていったのです。

「私が答えを言うのは簡単だけど」と誰かが小声で口にすれば、別の誰かが「あー、出たぁ」と肩をすくめる。

笑い話として消費されているうちは、まだ穏やかな抗議でした。

潮目が変わったのは、園庭でのケガが続いた一週間の後始末で、現場が連帯して園長へ事実を上げたときです。

誰の判断で、どの場面でどう動いたのか。手柄話で塗り替えられてきた数ヶ月の出来事を、職員たちが冷静に時系列で並べ直しました。

新年度の人事発表の日。

主任の名前は、グループの中でもかなり小規模な姉妹園への異動として読み上げられました。

狭い職員室で、誰も声を上げず、それぞれの机で静かに頷いた瞬間。

朝の打ち合わせで肩に乗っていた重さが、すっと一段軽くなった、新しい年度の幕開けでした。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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