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嘘を見抜くコツは「顔を見る」のではなく「声だけを聞く」こと

  • 2026.5.17
Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

誰かが嘘をついているかどうかを見抜こうとするとき、私たちはつい相手の表情や目の動き、しぐさに注目しがちです。

しかし、実はその「見ること」こそが判断を邪魔しているかもしれません。

英ポーツマス大学(UOP)らの研究によると、人は相手の顔や体の動きを見ながら話を聞くよりも、声だけを聞いたほうが、嘘を見抜く精度が高くなる可能性があることが示されました。

つまり、嘘を見抜くコツは、相手をじっと観察することではなく、いったん目を閉じて「声だけ」に集中することなのかもしれません。

目次

  • 顔を見ないほうが、嘘を見抜きやすくなる?
  • 声は、本人が思う以上に多くを語っている

顔を見ないほうが、嘘を見抜きやすくなる?

私たちは普段、相手の表情や身ぶりから気持ちを読み取ろうとします。

目が泳いでいる、声が上ずっている、落ち着きがない。こうしたサインを見ると、「この人は何か隠しているのでは」と感じることがあります。

しかし、嘘のサインはそれほど単純ではありません。

研究者は、人間には一度に処理できる情報量に限界があると説明しています。

相手の顔、表情、姿勢、手の動き、声の調子、話の内容を同時に追いかけると、脳はどこに注目し、どこを無視するかを絶えず選ばなければなりません。

その結果、情報が多いほど正確に判断できるどころか、かえって判断を誤る可能性が高まるのです。

研究では、模擬的な容疑者インタビューを使い、参加者に「映像と音声」を見聞きして判断してもらう条件と、「音声だけ」を聞いて判断してもらう条件を比べました。

すると、音声だけを聞いた参加者の嘘を見抜く全体的な正答率は61.7%だったのに対し、映像と音声を見聞きした参加者では35%にとどまりました。

これは、相手の顔をよく見るほど嘘を見抜ける、という一般的なイメージとは逆の結果です。

もちろん、声だけを聞けば必ず嘘が分かるという意味ではありません。

それでも、余計な視覚情報を減らすことで、声のリズムや抑揚、話し方の変化に注意を向けやすくなる可能性があります。

声は、本人が思う以上に多くを語っている

では、なぜ声にはそこまで多くの情報が含まれているのでしょうか。

英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のソフィー・スコット教授は、声を「楽器」にたとえています。

ウクレレ、ギター、バイオリンがそれぞれ素材や形、弦の数によって異なる音を出すように、人の声も身体の特徴を反映しています。

背の高い人は声道が長いため、低い響きになりやすく、男女や年齢によっても声の高さや質は変わります。

さらに、病気で声帯が炎症を起こせば声の振動は変わり、笑っていれば口の形が変わるため、声は少し明るく温かい印象になります。

声は、体の状態だけでなく、感情や緊張も映します。

強いストレスを受けると、闘争・逃走反応によって喉の周囲の筋肉が影響を受け、声が高くなったり震えたりすることがあります。

嘘をつく場面でも、話し方のリズムや抑揚が変わる場合があります。

ただし、ここで注意すべきなのは、「声が高いから嘘」「早口だから嘘」と単純には言えない点です。

そうした変化は、嘘ではなく緊張や不安によっても起こります。

研究者も、嘘を確実に暴く単一の言語的サインは存在しないと述べています。

よく言われる「目をそらす」「落ち着きがない」といった非言語的な手がかりも、必ずしも信頼できるものではありません。

つまり、嘘を見抜くうえで重要なのは、「この動作が出たら嘘」と決めつけることではなく、相手の声に含まれる複数の変化を、余計な視覚情報に邪魔されずに聞き取ることなのです。

また、英エセックス大学のシルケ・パウルマン教授によると、私たちの脳は誰かの声を聞いた瞬間、わずか約200ミリ秒で声の手がかりを評価し始めるといいます。

言葉の意味を完全に理解する前から、脳は相手が落ち着いているのか、緊張しているのか、温かい態度なのか、距離を置いているのかを読み取り始めているのです。

声は秘密を教えてくれるが、万能の嘘発見器ではない

今回の話で面白いのは、嘘を見抜くために「もっと観察する」のではなく、「見る情報を減らす」ことが役立つ可能性がある点です。

私たちは、相手の顔を見れば見るほど多くの情報を得られると考えがちです。

しかし実際には、表情やしぐさに気を取られることで、声の変化を聞き逃しているのかもしれません。

とはいえ、声だけで相手の心を完全に読めるわけではありません。

声は状況によって変わります。

人は緊張しているだけで声が震えることもありますし、疲れているだけで口数が少なくなることもあります。

専門家が指摘するように、声はDNAのように一生変わらない証拠ではなく、場面によって揺れ動くものです。

それでも、相手の本音を知りたいとき、私たちにできる意外な工夫があります。

それは、相手の目をじっと見ることではありません。

むしろ一度、顔から視線を外し、声の高さ、間、リズム、言葉の揺れに耳を澄ませることです。

声はすべてを教えてくれるわけではありません。しかし、私たちが顔ばかり見ているあいだに、声はすでにいくつかの秘密をこぼしているのかもしれません。

参考文献

Listen and learn: the hidden secret to spotting a liar
https://www.theguardian.com/science/2026/may/14/hidden-secret-to-spotting-a-liar-voice-inflections

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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