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シャフトを最大限にしならせるには?賞金王のスイングから学ぼう

  • 2026.5.16

一見ユニークなスイングの見た目とは裏腹に、優勝のほかトップ10フィニッシュは11回。抜群の安定感を誇る金子駆大のスイングを徹底解説する。

アドレス~テークバック

シャフトを最大限にしならせるには?賞金王のスイングから学ぼう
アドレス(左)、テークバック(右)【Point】バックスイングで右足の上に体重が移動する(写真右)

左足のツマ先を少しターゲット方向に向けることで体を回しやすくしています。右手のグリップがややウィークグリップなのは、左へのミスをケアするためと思われます。

金子選手といえばショットの際に少し口をつぐむような仕草をするのも特徴。体全体に“締まり感”がある状態でスイングをしたいのでしょう。バックスイングの初動では頭が右へスライドするので、体重移動を使って動き出しているのがわかります。

バックスイング

シャフトを最大限にしならせるには?賞金王のスイングから学ぼう
【Point】すでに切り返しがはじまっている(写真右)

シャフトが地面と平行になったタイミングで、すでに肩の回転はかなり深くなっています。金子選手は体幹部分の柔軟性が高く、上半身と下半身の捻転差が大きい。クラブがトップへ上がりきる直前、骨盤がやや沈みながらわずかにターゲット方向へ動きます。つまり、この時点で切り返しがはじまっているのです。クラブがバックスイング方向へ動きながら切り返しの初動がはじまることによって、体の捻転がさらに深くなる。

捻転をうまく使うことでヘッドスピードを速めることができますが、体の柔軟性には個人差があります。背中や腹部の筋肉が強く引き伸ばされるため、無理に行なうとケガにつながってしまう。アマチュアは自身の体と相談しながらマネるようにしましょう。

神ワザPoint

バックスイングの途中から、顔の向きが体の回転と同調するのが特徴的です。肩が深く入り、バックスイングを大きくとれるのがメリット。ダウンスイングで体のヨコにクラブを下ろしてくるスペースができるので、インサイドからボールをつかまえやすくなります。

【Column】賞金王は小心王?

金子選手にはスイング、ショートゲーム、パッティングと部門ごとに異なるコーチがついており、チーム体制でツアーを戦っています。とあるツアープロコーチに聞いたところ、金子選手はすごく心配性とのこと。力強いスイングからは想像しがたいですが、この性格がつねに自分のプレー内容をレビューし、修正に取り組む姿勢につながっているようです。

【JGTO STUTS】2025年シーズン 各部門データ
●賞金ランキング:1位
●予選落ち回数:0回
●平均ストローク:1位
●フェアウェイキープ率:10位

トップ~切り返し

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トップ(左)、切り返し(右)【Point】体重移動が行なわれても捻転差が保たれている(写真右)

トップ

かなりコンパクトですが、ここが金子選手のトップとなります。体の回転は十分に行なわれており、このアングルから右肩がわずかに覗いているのがその証拠。両腕がほぼ重なって見えていることから、体の正面から腕が外れていないこともわかります。体の正面に腕があるからスイング軌道が安定し、精度を生み出すのです。

切り返し

トップから骨盤が少しターゲット方向へスライドします。この動きによって左足に体重が乗って、力を出す準備が整う。このとき胸は右うしろを向いたまま下半身が動いており、金子選手の驚異的な体幹の柔軟性が伺えます。上半身と下半身の捻転差はさらに大きくなり、より大きなパワーを溜めることができるのです。

ダウンスイング

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【Point】すさまじいシャフトのしなり(写真左)【Point】両腕のポジションは体の正面をつねにキープ(写真右)

シャフトが地面と平行になるあたりで上半身も徐々に加速し、下半身とのねじれが解消していきます。このとき右ワキが開かないよう、左肩を外転する方向に力を入れないと体幹の回転に腕が追いつかず、振り遅れてしまう。ですが、金子選手はここでも完全に胸の前に両腕がある。これがインパクトの再現性を高めているポイントです。

【神ワザPoint】

ダウンスイングでこれほどまでに、シャフトがしなっている選手をほかに見たことがありません。クラブがまだトップに向かう途中で切り返すため、グリップとヘッドが逆方向へ動きます。その結果、中間に位置するシャフトに強烈な負荷がかかる。しなりを活かすことによってムチの原理が働き、ヘッドが効率よく加速します。

【Column】賞金王まで駆け抜けた原動力

試合でのラウンド後、金子選手はとても長い時間パッティングの練習をします。とくに今年のベイカレントクラシックでは、海外選手のグリーン上でのパフォーマンスの高さに刺激を受け、一層積極的にパッティングを磨いたそうです。ラインを読むための「エイムポイント」を導入したのもそこから。平均パット数は23年シーズンから毎年ランクアップ。25年の成績にも納得がいきます。

アッキー永井の独り言①

25年シーズンは、多くの若手の活躍が見られました。国内では女子ツアーにスポットライトが当たりがちですが、男子ツアーにも金子選手のほか、生源寺龍憲、小木曽喬、吉田泰基ら、注目の若手がたくさん出てきています。一方で優勝がなくともポイントランキング10位に入った石川遼選手もあっぱれ。「ANAオープン」での金谷拓実選手との白熱した優勝争いは手に汗を握る迫力がありました。読者のみなさんもせび1度、試合会場に足を運んでみてはいかがでしょうか。

インパクト

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インパクト(左)、フォロースルー1(右)【Point】インパクトで左手が掌屈している(写真左)

インパクトで注目すべきポイントはふたつ。ひとつ目は「ヘッドビハインドボール」といって、ボールの位置よりも頭が右に残っていることです。このポジションを維持すると入射角が適正化され、ボールを強く叩くことができる。ボールの真上に頭が移動してしまうと“詰まった”インパクトとなり、打ち出しが不安定になってしまいます。

ふたつ目は「手の形」。左手首がやや手の平側へ折れる「掌屈」という動きが見られます。この動きは意図的に行なっているのではなく、先行する体と腕に対してヘッドが遅れ、その負荷が手首にかかって起こる現象です。これによってロフトの変化が制御され、安定した打ち出しを得ることができます。

フォロースルー~フィニッシュ

シャフトを最大限にしならせるには?賞金王のスイングから学ぼう
フォロースルー2(左)、フィニッシュ(右)【Point】右カカトがあまり浮かない(写真左)

フォロースルー

男子プロのなかでは、とくに腕が真っすぐのまま動く時間が長いです。通常、胸の回転にブレーキがかかりはじめて腕が回旋(ローテーション)し、ヒジが畳まれるタイミング。飛ばしで有名なローリー・マキロイはどちらかといえば畳むのが早いタイプですが、金子選手のように腕が伸びたままのタイプは、フェースの向きを安定させることに長けています。これもまた、彼の卓越した柔軟性があってなせるワザです。

フィニッシュ

フィニッシュでは体を起こしており、体への負担が少ない姿勢をとっています。左ワキが大きく開いているところを見ると、自信をもって振り切っているのでしょう。ダウンスイング中、左腕でクラブを引いてくる意識が強いと左ワキは開きやすくなる。振り切る最後まで両腕を胸の前にとどめるタイプの選手もおり、石川遼選手などはその代表例。腕と体の一体感を最後までキープしながら、フィニッシュまでスイングしています。

【神ワザPoint】

アドレス時の左足(左)とインパクト後の左足(右)を見比べると、ツマ先の向きが大きく変化しています。ツマ先が開くというよりは、カカトが内側へ回るような動きをしている。これは、切り返し以降に左ツマ先方向に地面を強く蹴り込む力をかけた結果、その地面反力で一瞬体が浮くために足が回転しているのです。自分の力だけではなく、地面からもうまくパワーをもらいながらヘッドを加速させています。

アッキー永井の独り言②

21年に松山英樹選手が日本人としてはじめて「マスターズ」を制してから早4年が経ちました。その間にも「ZOZO CHAMPIONSHIP」など、日本人選手とPGAツアーの選手がしのぎを削る戦いがありましたが、松山選手以外の日本人がPGAツアーで優勝をすることはありませんでした。金子選手がベイカレントクラシックで衝撃を受けたように、まだまだ世界の壁は高い。

それでも、26年シーズンは石川遼選手をはじめ、多くの日本人選手がPGAツアーや下部ツアーのKorn Ferry Tourに挑戦します。彼らの活躍と日本男子ゴルフのさらなるレベルアップが楽しみです。

いかがでしたか? 金子選手のスイングをぜひ参考にしてください!

金子駆大
●かねこ・こうた/2002年生まれ、愛知県出身。177cm、83kg。2025年は飛躍の年となり、「関西オープンゴルフ選手権」でツアー初優勝、「三井住友VISA太平洋マスターズ」では2勝目をあげて賞金王に輝く。NTPホールディングス所属。

解説=アッキー永井
●ながい・あきふみ(永井研史)/1987年生まれ、神奈川県出身。“アッキー”の愛称で親しまれている人気コーチ。人体解剖学や物理学の視点を取り入れたわかりやすいレッスンに定評がある。

写真=田中宏幸
撮影トーナメント=ベイカレントクラシック

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