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丸山隆平が「貪欲に頑張った」『名無し』でにじませた人間味。SUPER EIGHTから受ける刺激と現在地を語る

  • 2026.5.15

役柄に人間味とリアリティを吹き込み、観る者に深くその存在を刻み込む…。近年、俳優としての存在感を高めているSUPER EIGHTの丸山隆平。佐藤二朗が原作・脚本・主演を務める映画『名無し』(5月22日公開)では、主人公の名付け親となるキーパーソンを担い、過酷な世界観のなかでかすかなぬくもりを灯す人物として、鮮烈な印象を残す。キャリアを積み重ねるなかでは、苦しい時期もあったという丸山。その度に自分の足元を見つめ、エンターテイナーとしての覚悟を確かなものとしてきた彼が、本作で得た経験と共にグループのメンバーから受ける刺激について明かした。

【写真を見る】丸山隆平のクールな表情を撮り下ろし!

「二朗さんのどういった部分が、本作に注入されているのか。とても興味があります」

白昼のファミレスで無差別大量殺人事件が発生。被害者は、客も店員も例外なく、鋭利な刃物で刺されていた。防犯カメラの映像に残っていたのは、容疑者らしき中年男(佐藤)。しかし男が相手を刺していることは明らかなのに、大勢の警官がどんなに目を凝らしても、証拠となる凶器を握っているはずの右手にはなにも見えない。この不可解な状況に捜査本部の国枝(佐々木蔵之介)らが苛立ちを募らせるなか、容疑者の過去が明らかとなる。

佐藤二朗が『怪物』とは違う怪演で魅了する『名無し』は5月22日(金)公開 [c]佐藤二朗 永田諒 / ヒーローズ [c]2026 映画「名無し」製作委員会
佐藤二朗が『怪物』とは違う怪演で魅了する『名無し』は5月22日(金)公開 [c]佐藤二朗 永田諒 / ヒーローズ [c]2026 映画「名無し」製作委員会

佐藤が漫画原作を手掛けるところからスタートし、自らの手で実写映画として念願の企画を実現させた。見えない凶器を振りかざし、相手を次々に刺し殺していく、恐ろしい主人公。誰とも接することなく生きてきた、彼のはらむ狂気や孤独、絶望…。劇中で描かれるキャラクターや展開、テーマなどすべてが強烈で、実に独創的だ。原作・脚本を読んだ丸山は、「どこからこんな発想が生まれたのか」と驚いたという。加えて、「ただ残忍なだけでなく、深く共感せざるを得ない、人間としての欠落を象徴するような特殊性を感じた」と打ち明ける。

「エンタメや映画が、みんなが抱えている憤りの代理人になることもある気がする」と明かした丸山隆平 撮影/興梠真穂 ヘアメイク/NOBU(HAPP'S.) スタイリスト/袴田能生(juice)
「エンタメや映画が、みんなが抱えている憤りの代理人になることもある気がする」と明かした丸山隆平 撮影/興梠真穂 ヘアメイク/NOBU(HAPP'S.) スタイリスト/袴田能生(juice)

共感せざるを得なかったのは、暴走していく主人公の抱えた葛藤。「理解したくないんですけどね」と前置きした丸山は、「僕は厳しい境遇に生まれたわけでもなく、どちらかと言えば恵まれて、愛されて育ってきました」と切り出し、「そんな僕でもこれまで生きてきた42年の間で、いろいろな不条理に対して鬱々とした怒りを覚えたり、スカッとしなかったり、“生き地獄だな”と思うこともあったり。戦争など、自分の力ではどうにもできない世界的な情勢に対して、ふと怒りが湧き上がってくることもある」と吐露。「きっと皆さんも同じで、社会で生きていくために、そういった感情を抑えていたりする。誰もが生活していかなければならないので、身近な人や自分のために働くことで、バランスを取っているのかもしれません」と思いを巡らせつつ、「だからこそエンタメや映画が、どこかでみんなが抱えている憤りの代理人になることもある気がしています」とエンタメの力について言及する。

丸山隆平が演じる警官の照夫は、少年時代の容疑者を路上で保護し、施設に紹介して名付け親となる [c]佐藤二朗 永田諒 / ヒーローズ [c]2026 映画「名無し」製作委員会
丸山隆平が演じる警官の照夫は、少年時代の容疑者を路上で保護し、施設に紹介して名付け親となる [c]佐藤二朗 永田諒 / ヒーローズ [c]2026 映画「名無し」製作委員会

鑑賞後にも「いろいろと考察したり、自分の感情の動きを振り返ったりすることのできる作品だと思った」と独特の余韻を味わったという丸山。この物語を生み出した佐藤とは、今回が初めてのタッグとなった。

「二朗さんと僕、共通の知り合いの方がいて。以前からその方が、『丸と二朗さんを会わせたいんだよね』とお話をされていて。でも劇中では共演シーンがないので、二朗さんとはじっくりとお話ができていないんです。織姫と彦星のよう(笑)」と会いたいけれど会えない、もどかしい時間を過ごした様子。「どうやってこの物語を生み出したのか、二朗さんにめっちゃインタビューしたいです。これまでにも、俳優としてだけではなく、二朗さんが脚本を手掛けられている作品も拝見していて、勝手ながら、僕の“好きだな”と感じる思考回路やマインドをされている人なんだろうなと思っていて。ちょっと謎な部分があって、だからこそ役者としてもおもしろい方なんだろうなと感じるし、二朗さんのどういった部分がこの作品に注入されているのか、とても興味があります」と目を輝かせる。

「貪欲に頑張りました」

丸山隆平が、主人公の名付け親となる警官の照夫を演じる [c]佐藤二朗 永田諒 / ヒーローズ [c]2026 映画「名無し」製作委員会
丸山隆平が、主人公の名付け親となる警官の照夫を演じる [c]佐藤二朗 永田諒 / ヒーローズ [c]2026 映画「名無し」製作委員会

丸山が演じたのは、主人公の名付け親となる警官の照夫。少年時代の主人公を保護し、“山田太郎”という名前を与えつつ、彼に人とのつながりや温もりをそっと提示するような役柄だ。たたずまいや太郎との接し方、彼を見つめる眼差しなど、丸山扮する照夫には、全身から人間味と市井に生きる人としてのリアリティがにじんでいる。

照夫が太郎に向けて放つ言葉は、「空はどこまでもつながっている」「人はみな、1人じゃない」と人生の光の部分に目を向けたものも多い。丸山は、「衣装合わせでお会いした時、城定(秀夫)監督から言われていたのは“いいセリフを、きれいごとで終わらせないでほしい”ということでした」と役作りについて回顧。

「僕、1人の力でどうなるものではなかった」と周囲に感謝をにじまた丸山隆平 撮影/興梠真穂 ヘアメイク/NOBU(HAPP'S.) スタイリスト/袴田能生(juice)
「僕、1人の力でどうなるものではなかった」と周囲に感謝をにじまた丸山隆平 撮影/興梠真穂 ヘアメイク/NOBU(HAPP'S.) スタイリスト/袴田能生(juice)

「絶対的に正しい心を持っているわけでもないし、ツルツルとしたきれいな人間でもない。監督からは、“公務員として働く、1人の人間としてそこに立っていてほしい”という言葉をいただきました。“空はつながっている”、“人は1人じゃない”というセリフは、言おうとすればいくらでも美しく言えると思うんですが、そうならないように意識していました。たたずまいもそうですが、“昭和のおじさん”みたいなものがにじみ出たらいいなと思っていました」と語る。まさにそういった人物としてスクリーンに登場する照夫だが、丸山は「僕、1人の力でどうなるものではなかったと思います。遊園地をはじめ、雰囲気のあるロケーションや、その場の空気、衣装など、そういった相互作用があってこそ、照夫をその世界で生きる人として演じ切ることができました。僕は発注されたネジをどういった感じで作っていけばいいのか考えたり、“これでいいですかね”と監督と相談しながら、毎カット、毎カット、アプローチをしていくだけ」と周囲の力を噛み締めながら、「そのなかで貪欲に頑張りました」と柔らかな笑顔を見せる。

MEGUMIや佐々木蔵之介ら、すばらしい役者が顔をそろえた [c]佐藤二朗 永田諒 / ヒーローズ [c]2026 映画「名無し」製作委員会
MEGUMIや佐々木蔵之介ら、すばらしい役者が顔をそろえた [c]佐藤二朗 永田諒 / ヒーローズ [c]2026 映画「名無し」製作委員会

佐藤をはじめ、容疑者の最大の理解者にして、トリガーでもある正体不明の女性を演じるMEGUMI、異常な執念で容疑者を追いかける刑事役の佐々木蔵之介、そして子役たちも熱演を見せるなど、すばらしい役者が顔をそろえている。「二朗さんのお芝居、すごかったですね。映画を観終わった時に、マネージャーさんと『あそこ、ヤバかったよね!』と話した大好きなシーンがあって!」と佐藤の演技にシビれたと、声を弾ませた丸山。「MEGUMIさんも蔵之介さんも、ヤバかったですね。役者としては、“あのお芝居、どうやっているんだろう”と考えてしまったりするんですが、純粋に“素敵だ!”と思う人ばかりでした」とたっぷりと触発されたという。

「SUPER EIGHTのメンバーはそれぞれ、頑張り方や美徳、信念など、より色濃くなってきている」

人とつながることができない主人公が見上げる空は、彼の目に“黒いもの”として映っている。10代のころからアイドルとして活躍し、俳優としての存在感もしっかりと確立してきた丸山だが、歩みを進めるうえで、空が暗く見えてしまうような苦労を味わった時期はあるのだろうか。

丸山は「コロナ禍でエンタメが後回しにされていったり、事務所の今後について考えていた時期は、“これからどうしていったらいいんだろう”と不安になったことがあります」と告白。「でもそういった時こそ、エンタメや僕らの活動が渇望されているものだと知ることができたり、僕のやることは、誰かに夢を見てもらえるような仕事をすることなんじゃないかと噛み締めることができました」と人生の苦境や分岐点は、自らの足元をしっかりと見つめ直す契機にもなったといい、「いろいろなことをエネルギーにしながら、作品を通して楽しんでもらう。それこそが、僕らの仕事」とエンターテイナーとしての覚悟を握りしめる。

“黒い空”は、本作のキーワードとなる [c]佐藤二朗 永田諒 / ヒーローズ [c]2026 映画「名無し」製作委員会
“黒い空”は、本作のキーワードとなる [c]佐藤二朗 永田諒 / ヒーローズ [c]2026 映画「名無し」製作委員会

1983年生まれの、42歳。40代に突入してから、走り方に変化が生まれてきたとも。「10代、20代はとにかくガムシャラ。“怪我をしようがどうしようが、関係あらへん!”と無敵な感じがしていました」と笑いながら、「40代は、自分の身体、そして周りの方々に相談させてもらうことも増えました。例えば舞台などに出演させていただくとそれなりの公演数があるので、やっぱり健康面が心配になります。周囲から、“長く続けていくためには、どうすればいいか”という知恵を借りるようになりました」としみじみ。

「例えば、4月まで出演していた舞台(『oasis』)ではおんぶをするシーンがあって。そこで腰を痛めてしまったら終わりですから。もちろんできることはすべて一生懸命やるけれど、“頑張ります!”だけでは成立しづらくなってくる。迷惑をかけることなく、どうすれば求められていることに最大限応えられるのか。そうやって冷静に先を見据えながら、チャレンジするようになったと思います」と責任感と真摯さを携えつつ、「身体が資本」と実感する日々だという。

【写真を見る】丸山隆平のクールな表情を撮り下ろし! 撮影/興梠真穂 ヘアメイク/NOBU(HAPP'S.) スタイリスト/袴田能生(juice)
【写真を見る】丸山隆平のクールな表情を撮り下ろし! 撮影/興梠真穂 ヘアメイク/NOBU(HAPP'S.) スタイリスト/袴田能生(juice)

インタビューでも気さくな笑顔を絶やさず、その場をパッと明るく輝かせるオーラを放つ姿からも、丸山の個性や魅力、そしていまの充実ぶりがうかがえる。そんな彼にとって、いつもいい刺激をくれるのが、「SUPER EIGHT」のメンバーだ。

「村上(信五)くんはAIを使ったプロジェクトをやったり、大倉(忠義)くんはプロデュース業務を手掛けたり、横山(裕)くんはドラマでいろいろな役をやっているし、章ちゃん(安田章大)はテント芝居に挑んでその文化を残そうとしていたり。みんなやっていることのジャンルや、表現の仕方も違ったりするので、“またおもしろいことをやっているな”と刺激を受けます」と一人一人に愛情を傾けつつ、「40代という年齢的にも、それぞれ自分がやっていきたいことや、なんのために動くのかという道のりが明確に見えてきたり、頑張り方や美徳、信念など、より色濃くなってきている気がします。そのなかでSUPER EIGHTとして、どうしていくのか。25周年に向かってなにをやるべきなのか、なにを求められているのかなど、定期的に集まって会議をしています。いい関係性やなと思います」と熱を込めていた。

取材・文/成田おり枝

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