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東南アジア史上最大となる「新種の恐竜」を発見

  • 2026.5.15
新種恐竜のイメージ画像/ Credit: Patchanop Boonsai

今回、東南アジアのタイ北東部で、この地域としては過去最大となる新種の恐竜が発見されました。

新たに付けられた恐竜の名前は「ナガティタン・チャイヤプーメンシス(Nagatitan chaiyaphumensis)」

推定体重は約27トン、全長は約27メートルに達し、アジアゾウの成獣9頭分ほどの重さがあったと考えられています。

新種の化石は、英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)、タイ・マハーサーラカーム大学らの国際研究チームにより発見されました。

では、この「東南アジア最大の恐竜」は、どのような世界に生きていたのでしょうか。

研究の詳細は2026年5月14日付で学術誌『Scientific Reports』に掲載されています。

 

目次

  • 池のほとりに眠っていた「タイの最後の巨人」
  • 川辺に暮らした27メートルの草食恐竜

池のほとりに眠っていた「タイの最後の巨人」

ナガティタンの化石が見つかったのは、タイ北東部チャイヤプーム県の池のほとりです。

発見されたのは約10年前で、研究チームは脊椎、肋骨、骨盤、脚の骨などを詳しく分析しました。

中でも目を引くのが、長さ1.78メートルもある前脚の骨です。

これは成人の身長に匹敵する長さであり、この恐竜がいかに巨大だったかを物語っています。

【巨大すぎる化石の実際の画像がこちら

分析の結果、ナガティタンは長い首と長い尾を持つ植物食恐竜、いわゆる竜脚類の仲間だと判明しました。

竜脚類には、ディプロドクスやブロントサウルスのような有名な恐竜も含まれます。

属名の「Naga」は、タイや東南アジアの伝承に登場する水棲の蛇「ナーガ」に由来します。

「Titan」はギリシャ神話の巨人を意味し、種小名の「chaiyaphumensis」は、化石が発見されたチャイヤプーム県にちなみます。

つまりナガティタン・チャイヤプーメンシスは、「チャイヤプームから来たナーガの巨人」とも読める名前なのです。

チームは、この恐竜を「タイの最後の巨人」とも呼んでいます。

その理由は、ナガティタンがタイで恐竜化石を含む最も新しい地層から発見されたためです。

恐竜時代の終わりに近づくと、この地域は浅い海になっていったと考えられており、より新しい地層から恐竜化石が見つかる可能性は低くなります。

そのためナガティタンは、東南アジアで今後見つかる大型竜脚類の中でも、最後、あるいは最も新しい時代のものになる可能性があるのです。

ただし、ナガティタンが生きていたのは白亜紀前期の1億〜1億2000万年前であり、小惑星衝突による恐竜絶滅の直前(約6600万年前)ではありません。

この「最後の巨人」という呼び名は、タイの恐竜化石を含む地層の中で最も新しい層から見つかったことを指す表現です。

川辺に暮らした27メートルの草食恐竜

ナガティタンが暮らしていた白亜紀前期のタイ北東部は、現在とはかなり異なる環境でした。

研究では、当時のこの地域は乾燥から半乾燥の環境だったと考えられています。

こうした環境は、巨大な竜脚類にとって適した場所だった可能性があります。

竜脚類は、長い首と尾を持つことで広い範囲の植物を食べられただけでなく、その大きな表面積を使って体の熱を逃がし、体温を調節していたと考えられています。

巨大な体は一見すると暑さに弱そうですが、長い首と尾は、いわば天然の放熱装置として役立っていたのかもしれません。

化石が見つかった場所は、蛇行する川の一部だった可能性があります。

その川には魚や淡水性のサメ、ワニなどが生息していたと考えられています。

川辺では翼竜が魚を狙い、陸上ではイグアノドン類や初期の角竜類といった小型の植物食恐竜が歩き回っていたのでしょう。

ナガティタンは、そんな多様な生き物が集まる川辺の世界で、巨大な体を揺らしながら植物を食べていたのかもしれません。

骨格の全体像(黄色が見つかった化石部分)/ Credit: Thitiwoot Sethapanichsakul et al

これまで東南アジアの恐竜研究は、北米や南米、中国などに比べると国際的な注目を集めにくい面がありました。

しかしタイでは、1986年に最初の恐竜が命名されて以降、恐竜化石の研究が進み、今回のナガティタンはタイで命名された14番目の恐竜となりました。

しかも、まだ正式に記載されていない竜脚類化石のコレクションも残されているとされます。

これは、タイや東南アジアの地層に、まだ知られていない恐竜の歴史が眠っていることを示しています。

ナガティタンの発見は、「巨大恐竜の世界」は南米や北米だけの物語ではないことを教えてくれます。

かつてタイ北東部の川辺には、27メートルの首長恐竜が歩き、その足元には魚やワニ、翼竜、肉食恐竜たちが織りなす白亜紀の生態系が広がっていました。

東南アジア最大の新種恐竜ナガティタンは、タイの大地に眠っていた「最後の巨人」であると同時に、この地域の恐竜研究がこれからさらに広がっていくことを示す、最初の大きな一歩でもあるのです。

参考文献

A new dinosaur dubbed the ‘Last Titan of Thailand’ weighed more than 9 elephants
https://www.popsci.com/science/new-dinosaur-nagatitan-thailand/

‘Last titan’: Southeast Asia’s biggest dinosaur discovered
https://www.eurekalert.org/news-releases/1127693

元論文

The first sauropod dinosaur from the Lower Cretaceous Khok Kruat Formation of Thailand enriches the diversity of somphospondylan titanosauriforms in southeast Asia
https://doi.org/10.1038/s41598-026-47482-x

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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