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赤毛マンモスのような「新種の魚」を発見ーー研究者「スナッフルパガスそっくり」

  • 2026.5.14

サンゴ礁の海に、赤毛のマンモスのような姿をした小さな魚が隠れていました。

オーストラリアの海洋生物学者らは、南西太平洋で見つかったカミソリウオ科を新種として記載し、正式に「ソレノストムス・スナッフルパガス(Solenostomus snuffleupagus)」と命名しました。

名前の由来は、子ども向け番組『セサミストリート』に登場する、毛むくじゃらの大型キャラクター「ミスター・スナッフルパガス」です。

研究者自身も「一度そう見えてしまうと、スナッフルパガスとの類似は無視できない」と語るほど、この魚は長い鼻先とふさふさした体表を持っていました。

研究の詳細は2026年5月10日付で学術誌『Journal of Fish Biology』に掲載されています。

目次

  • 20年越しに正体がわかった「毛むくじゃらの魚」
  • ふさふさの毛は、海の中で消えるための迷彩だった

20年越しに正体がわかった「毛むくじゃらの魚」

物語の始まりは2001年、パプアニューギニア付近でのダイビングでした。

サンゴの間を調べていた海洋生物学者のデイビッド・ハラスティ氏は、これまで見たことのない奇妙な魚に出会います。

細長い体つきから、タツノオトシゴやヨウジウオに近い仲間であるカミソリウオ科の魚のように見えました。

しかし、手元の魚類図鑑を調べても、ぴったり一致する種は見つかりません。

「これは科学にとって、まだ記録されていない種なのではないか」

そう感じたものの、魚の正体を確かめるには、写真だけでは不十分でした。

【実際に発見された赤毛マンモスのような魚がこちら

新種として記載するには、標本を採集し、体の形、骨格、ひれ、遺伝情報などを詳しく調べる必要があります。

その後もダイバーによる目撃情報はありましたが、実際に研究できる標本はなかなか得られませんでした。

転機が訪れたのは2020年です。

オーストラリア北部のケアンズ付近で目撃情報が寄せられたことを受け、ハラスティ氏と共同研究者のグラハム・ショート氏はグレートバリアリーフ周辺の海へ向かいました。

数日かけて大型藻類の中を探し回った結果、2人はついにオスとメスの個体を採集することに成功します。

こうして、長年“正体不明のふさふさ魚”だった存在は、ようやく科学のテーブルに乗ることになりました。

ふさふさの毛は、海の中で消えるための迷彩だった

詳しい分析の結果、この魚は既知のカミソリウオ科の種とは異なる新種だと確認されました。

標本の体長は18〜34ミリメートルほどとされ、体の前方が比較的深く、全体に長い糸状の突起を豊富に持つことが特徴とされています。

この突起は、特に吻、あご、頭部、ひれの端に密集しており、魚全体を「毛むくじゃら」に見せています。

その姿が、赤茶色の毛に覆われたスナッフルパガスを連想させたことから、種小名にスナッフルパガス(snuffleupagus)が選ばれました。

【ミスター・スナッフルパガスとの比較画像がこちら

ただし、この“毛”は可愛らしさのためにあるわけではありません。

野外観察では、この魚は糸状の赤い大型藻類が密生する場所と強く結びついていました。

体色も赤、オレンジ、ときに緑がかった色を帯び、周囲の藻類やサンゴ礁環境に溶け込むようになっています。

つまり、ふさふさした姿は、海中で目立つためではなく、逆に「見つからない」ための迷彩である可能性が高いのです。

さらにチームは、見た目だけでなく、DNA解析やマイクロコンピューター断層撮影による骨格比較も行いました。

その結果、よく似た既知種(Solenostomus paegnius)とは遺伝的にも大きく異なっていました。

また、本種は椎骨数が36個であることなど、骨格上の特徴でも他の同属種と区別されています。

つまり、この魚は「スナッフルパガスに似ているから面白い魚」ではなく、形態、骨格、DNAの複数の証拠から新種と判断された、れっきとした科学的発見なのです。

現時点で、本種はオーストラリア北東部のコーラル海、パプアニューギニア、ニューカレドニア、フィジー、トンガを含む南西太平洋域から知られています。

サンゴ礁はカラフルで目立つ生き物の宝庫に見えますが、その一方で、背景になりきる達人たちも暮らしています。

赤毛マンモスのようなこの小さな魚は、派手な姿でありながら、実は海の中で姿を消す名人でした。

そして、その隠れ上手な体こそが、科学者に20年越しの発見をもたらしたのです。

参考文献

Real-life Snuffleupagus found swimming in the Great Barrier Reef
https://www.popsci.com/environment/snuffleupagus-fish-sesame-street/

元論文

Solenostomus snuffleupagus sp. nov., a hairy ghost pipefish (Teleostei: Solenostomidae) from the Southwest Pacific, with an integrative comparison to S. paegnius
https://doi.org/10.1111/jfb.70497

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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