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中村勘太郎さん&中村長三郎さん「江戸って面白い!」|江戸東京博物館「大江戸礼賛」展でタイムトラベル

  • 2026.5.14
撮影=セドリック・ディラドリアン

東京・両国の東京都江戸東京博物館が約4年ぶりにリニューアルオープン。その記念となる特別展「大江戸礼賛」が、2026年5月24日(日)まで開催されています。

本展では同館が誇る珠玉のコレクションから、初公開作品を含む約160件を展示。

甲冑や刀、奥道具が飾られる第1章に始まり、相撲・歌舞伎・吉原など文化や娯楽を堪能できる第2章、火消の装束や道具などから当時の江戸消防の様子がわかる第3章など、6つのテーマに分かれた貴重な資料や作品を通して、100万人都市“大江戸”の魅力をたっぷりと味わえる特別展です。

東京都江戸東京博物館の常設展には、江戸の芝居小屋「中村座」が再現されている縁もあり、特別展の内覧会にはこの春に高校と中学に進学した若き歌舞伎俳優・中村勘太郎さん、中村長三郎さん兄弟が登壇。

「江戸を深く知ることができて、楽しかったです!」と声を弾ませたおふたりに、歌舞伎俳優ならではの視点で捉えた展示品の面白さや江戸への思いについてお話をうかがいました。

父・中村勘九郎さんにも見せたい、迫力ある絵と芝居小屋の賑わい

─リニューアルされた東京都江戸東京博物館ですが、おふたりも高校と中学へ進学されて、新たな学校生活が始まっていますね。

〈左〉中村勘太郎さん 〈右〉中村長三郎さん 撮影=セドリック・ディラドリアン

中村勘太郎さん(以下、勘太郎) 高校生になると勉強が大変になってきて……数学が苦手なので、頑張ります。

中村長三郎さん(以下、長三郎) 僕は卓球部に入ることに決めました。部活動に励みたいと思っています。……ま、勉強も頑張ります。中学校に上がると、中間、期末と試験が増えるので、ちょっと手強いです。

─今回の特別展をご覧になって、お気に入りの作品を教えてください。

《讃岐院眷属をして為朝をすくふ図》 歌川国芳/画 嘉永4年(1851) <strong></strong>東京都江戸東京博物館蔵 撮影=セドリック・ディラドリアン

勘太郎 歌川国芳の《讃岐院眷属(さぬきいんけんぞく)をして為朝をすくふ図》[*1]です。国芳という絵師が昔から大好きなのですが、大きい鰐鮫(わにざめ)と源為朝の構図がとてもかっこよくて、父にも見せたいですね。「こんな迫力ある絵があるよ」って。

『椿説弓張月』の一場面で、歌舞伎にもなっている作品なので、いつかこの絵を芝居にも活かしてみたいです。

特別展の最後に設置されたパネル前で。《東都両国ばし夏景色》 橋本貞秀/画 安政6年(1859) 東京都江戸東京博物館蔵 撮影=セドリック・ディラドリアン

長三郎 僕は最後に展示されていた《東都両国ばし夏景色》[*2]という作品が好きになりました。川の鮮やかなグラデーションや、細やかな筆使いがとても素敵でした。

父に見せたいのは、芝居小屋の様子が描かれている浮世絵たち。昔もいまも町が賑わっているのが嬉しい、と伝えたいです。昔の人たちが歌舞伎に熱狂していたのが感じられて、楽しかったので。

[*1]曲亭馬琴が執筆し、葛飾北斎が挿絵をつけた読本『椿説弓張月』から、源為朝が難破した場面を、歌川国芳が三枚続の錦絵に描いた作品。

[*2]人がひしめく両国橋、そこから見える花火、真夏の江戸の賑やかな夜が描かれている、橋本貞秀画の三枚続の錦絵。

「第2章:江都繁華──町人文化の開花」 の展示風景。右側に見える拡大パネルには、浮世絵に描かれた芝居小屋「中村座」の櫓も確認できる。 撮影=セドリック・ディラドリアン

火消道具に龍の刺繍も!江戸の「派手好き」を実感

─この特別展で、江戸についての新しい発見はありましたか。

勘太郎 町火消の半纏や武家火消の装束など、火消にまつわる道具がすごく豪華でした。半纏は、裏地が龍と虎の絵になっているんですよね。火を消して、帰る時に派手な裏地にして「戻ったぞ!」となるのが、江戸の気性だなぁと。笠にも金箔がついていて、江戸っ子は派手好きだなと改めて思いました。

「第3章:火事と喧嘩は江戸の華──武家火消と町火消」に展示された華やかな火事頭巾。左から《立烏帽子形火事頭巾 鶏文様繍》 江戸後期~明治期頃、《立烏帽子形火事頭巾 緋羅紗地波涛に竜文様繍鷹取瓜紋付》 江戸後期 ともに東京都江戸東京博物館蔵 撮影=セドリック・ディラドリアン

長三郎 僕は人が多いなと感じました。いまも東京には全国から人が集まってきますが、江戸時代のほうがもっと多かったんじゃないかと思うほど、浮世絵には人がいっぱい描かれていてびっくりしました。(《東都両国ばし夏景色》の橋の上を差して)これすごいでしょ! 全部、頭ですよ! 描くのも大変(笑)。

─おふたりが4年前に出演された平成中村座の『唐茄子屋』の舞台も橋がかかっていて、賑やかな江戸の風景でしたね。

勘太郎 幕開きの場面は、橋の周りをいろんな職業の人が行き交っていました。

長三郎 まさに、こういう賑わいだったね。三味線持っている人がいたり、太鼓持っている人がいたり。

勘太郎 僕はあの場面には出ていなかったのですが、舞台袖で見ていて、江戸はこんな風景だったんだろうなぁと思っていました。あの光景は、鮮明に覚えています。

─平成中村座でのお芝居は、やはり江戸を感じますか。

常設展では、芝居小屋「中村座」の1805年当時の様子を原寸大で復元。 撮影=セドリック・ディラドリアン

長三郎 感じますね。歌舞伎座は現代の劇場という印象ですが、平成中村座は江戸にあった芝居小屋を再現していて、江戸時代と同じような雰囲気で僕もお芝居ができているんだな、と思っています。昔の人もこの雰囲気で演じていたのかと思うと、嬉しさがあります。

勘太郎 楽屋も大きな大劇場とは違っていて、お客様の顔がより見えたり、舞台の背景が開いたりといつもとは違う部分があるので、楽しいです。

─江戸をテーマにお芝居を作るとしたら、どんな作品にしたいですか。

長三郎 歌舞伎はどうできたのか、という作品を作ってみたいです。いまの役者が江戸の役者を演じるというのをやってみたいですね。

勘太郎 浮世絵にあるように、隅田川や花火を背景にした話がいいかな。歌舞伎にあまり花火が出てこないので、面白そうです。

「中村座」と同じく常設展内に復元された全長約15mの「日本橋」からは、芝居小屋の櫓が目の前に。櫓の側面には、初代座元・猿若勘三郎(初代中村勘三郎)の名前が記されている。 撮影=セドリック・ディラドリアン

お互いに江戸っ子気質? 江戸時代でやりたいこと

─江戸時代にタイムトラベルできるとしたら、何がしたいですか。

長三郎 やりたいこと、あります。僕、二代目長三郎なんですけれど、初代の人に会ってみたいなって思うんですよね。父と母がいろいろ探して見つけてくれた名前なんですが、僕の前は江戸時代に生きた人なので。

勘太郎 探したら、初代長三郎の浮世絵が出てくるかもしれないよね。

長三郎 探してみたい!

勘太郎 僕は当時の中村座に行ってみたいです。東京都江戸東京博物館の常設展に「中村座」が実物に近い大きさで再現されているのがすごく嬉しくて、以前訪れたときは写真をいっぱい撮りました。江戸時代の中村座でお芝居を生で見てみたいです。昔といまの違いや、お客様がどんな感じだったかも知りたい。

撮影=セドリック・ディラドリアン

─それこそ、初代勘三郎さんに会えるかもしれません。

長三郎 会えたら、なんで役者になろうと思ったのか聞きたいです。初代ということは、自分で始めた人なので。

勘太郎 江戸歌舞伎の始まりを描いた『猿若江戸の初櫓(さるわかえどのはつやぐら)』にもありますが、出雲阿国との出会いや別れが本当はどうだったのか、直接聞いてみたいです。

─江戸で職業に就くとしたら、何がいいでしょう。

勘太郎 なんだろう。火消だと、僕は体力がないので……。

長三郎 怖いから、僕は後方援護しかできないと思う。後ろから、水鉄砲で!

勘太郎 水鉄砲も展示されていたね。やっぱり火消は自分たちにはちょっと難しそうだなぁ。

長三郎 役者かなぁ……。

勘太郎 あ! 僕は版元になってみたいですね。編集者のようなことをしてみたいです。特別展にも当時の本がたくさんありました。

長三郎 僕は、屋形船とかを漕いでみたいです。乗るほうではなくて、漕ぐ人!

撮影=セドリック・ディラドリアン

─江戸からお土産を持って帰れるとしたら?

勘太郎 歌舞伎の小道具かな。いまは上演されていないお芝居の小道具や衣裳を持って帰って、復活させる時に使いたいです。

長三郎 僕は本です。昔の字は難しいですが、まずは絵で感じて、字も読めるようになれたらいいなと思います。本を見ながら、江戸に行ったことを感じたいですね。

─歌舞伎にもたくさんの江戸っ子がいますが、好きな役はありますか?

勘太郎 『め組の喧嘩』の辰五郎。一番の江戸っ子だなと思います。いつか演ってみたいです。

長三郎 あぁ! そうだね!僕も演じてみたい。

─身近に江戸を感じる人はいらっしゃいますか。

勘太郎・長三郎 父です!

長三郎 父は、江戸を背負うというか、まとうというか。『髪結新三』の新三も、本当に江戸の職人みたいな雰囲気があるんです。僕の想像する江戸っ子は、父そのものです。

普段の父からも江戸っ子気質を感じます! 気前よく衝動買いするところとか。

勘太郎 あとは派手好きです(笑)。

長三郎 早食いもありますね。蕎麦だったら一瞬で食べてしまいます。

─お互いに、ここは江戸っ子だな、と思うところはありますか。

長三郎 せっかち!

勘太郎 僕、せっかちかな!?

長三郎 この前も先生に「意外とせっかちだよね」って言われてたよね。僕は?

勘太郎 派手好き(笑)。あと、寿司、蕎麦が好き。

長三郎 美味しいもんね。寿司、蕎麦っていう文化を作った江戸って、やっぱり面白いよね。

現代で上演されていない浮世絵の場面を演じたい

撮影=セドリック・ディラドリアン

─もし、ご自身の写真や衣裳が展示されるとしたら、何を選びますか。

長三郎 江戸の役者絵と全く同じ構図で、自分も扮装して、照らし合わせてみたいです。昔の役者さんと自分の違いもよくわかって、いろいろなことを知れるかなと思います。

勘太郎 それ面白いね! 僕も似ていますが、いまはやっていないお芝居の絵がアップで描かれていたので、同じ画角で僕も写真を撮ってみたいです。

たとえば、(東洲斎)写楽が描いた『恋女房染分手綱(こいにょうぼうそめわけたづな)』の大首絵《市川鰕蔵の竹村定之進》は、いまは上演されていない場面なんです。

市川鰕蔵の竹村定之進 東洲斎写楽/画 寛政6年(1794) 東京都江戸東京博物館蔵 Hearst Owned

この後の『重の井子別れ(しげのいこわかれ)』はよく展示されているのですが……。浮世絵には見たことのないお芝居の場面が描かれているものも多いので、いつか見てみたいなぁとか、演じてみたいなぁと思っています。

長三郎 僕もいまは上演されてない作品に挑戦してみたいです。あと、歌舞伎の浮世絵といったら、舞台の上や芝居小屋の賑わいの絵だけだと思っていたんですけれど、楽屋で化粧をしている場面の浮世絵があって面白かったです。

─歌川国貞の《役者化粧姿絵 中村芝翫》は、まさに鏡台に向かって鬘をつけているところが描かれていました。おふたりも楽屋風景を撮影されることがありますが、カメラを意識してしまうものですか。

勘太郎 気にならないですね。でも、先輩方の化粧をするところは気になります。人それぞれ違うので、参考になります。

長三郎 僕もあまり気にならないです。いまは写真がありますが、《役者化粧姿絵 中村芝翫》を見て、江戸のお客様を喜ばせるために、浮世絵も頑張っていたんだなぁと思いました。

─最後に、この特別展でおふたりが感じた“礼賛ポイント”を教えてください。

勘太郎 江戸のことを深く知ることができて、体感できます。たとえば、火消についてなら、絵だけではなく、実際の半纏や鳶口などの道具もある。その面白さが、礼賛ポイントです!

長三郎 浮世絵なら浮世絵展、甲冑なら甲冑展とか、一つのテーマでまとめた展覧会が多いですよね。でも、この特別展では、江戸のさまざまな文化を一度に見ることができるので、楽しみながら江戸全体を感じることができます。皆さま、新鮮な江戸を感じに来てください!

撮影=セドリック・ディラドリアン

三代目 中村勘太郎
なかむらかんたろう○2011年生まれ。六代目中村勘九郎の長男。2017年2月、歌舞伎座『門出二人桃太郎』の兄の桃太郎役で三代目中村勘太郎を名乗り初舞台。

2021年には歌舞伎座史上最年少の9歳で『連獅子』の仔獅子を勤め上げ、その圧倒的な技量で大きな注目を集めた。現在は学業と両立しながら古典の大役にも次々と挑戦。中村屋の次代を担う若き旗手として、たゆまぬ研鑽を続けている。

二代目 中村長三郎
なかむらちょうざぶろう〇2013年生まれ。六代目中村勘九郎の次男。2017年2月、歌舞伎座『門出二人桃太郎』の弟の桃太郎役で二代目中村長三郎を名乗り初舞台。愛らしくも堂々とした佇まいで、幼少期より観客の心を掴む。

近年は父や兄とともに、平成中村座をはじめとする数々の舞台で経験を積み、瑞々しい感性を発揮。江戸歌舞伎の伝統を継承する中村屋の末っ子として、今後のさらなる飛躍に熱い視線が注がれている。

DATA
江戸東京博物館リニューアル記念特別展「大江戸礼賛」
会期/~2026年5月24日(日)
会場/東京都江戸東京博物館 1階特別展示室
開館時間/9時30分~17時30分、土曜日は19時30分まで(入館は閉館の30分前まで)
休館日/毎週月曜日
観覧料/一般 1,300円、65歳以上 650円ほか
常設展の観覧料/一般 800円、65歳以上 400円ほか

tel.03-3626-9974(代表)
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東京都墨田区横網1-4-1

東京都江戸東京博物館

撮影=セドリック・ディラドリアン 取材・文=大木夏子 編集=井本茜(婦人画報編集部)

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