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【小関裕太が探す 癒やしのデザイン】「帝国ホテル 京都」へ 受け継がれるもてなしの美学

  • 2026.5.5
MASAAKI INOUE

第6回は建築家・榊田倫之さんの案内で完成したばかりの「帝国ホテル 京都」を訪れた。



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2026年3月初旬、京都・祗園に「帝国ホテル 京都」が開業した。渋い光を放つ銅板瓦葺屋根。風合いのある石材や木材を用いたインテリア。敷地内にある祗園甲部歌舞練場、町家を望む客室。古き良き日本の伝統と現代的なデザインの要素が心地く融合した上質な空間が広がる。

<写真>ホテルのファサードは90年前の南西面の外壁をそのままに残した。

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「誕生したばかりのホテルなのに、すでに趣があって、心が自然と落ち着いていくから不思議ですね」。小関裕太さんは初めて訪れた場所なのに懐かしささえ覚えるとつぶやく。

「実は、この地には1936年に建てられた弥栄会館(やさかかいかん)という劇場があったんです。歴史的建造物の意匠をきちんと保存、継承しつつ、京都の町並みやフランク・ロイド・ライトによる帝国ホテル2代目本館の空間構成も織り交ぜていきました」。そう語るのは、内装デザインを担当した新素材研究所の榊田倫之さんだ。

<写真>ホテルのコンシェルジュデスク。壁の襖絵は、新素材研究所の共同代表である現代美術作家、杉本博司がデザインしたもの。

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<写真>1階宿泊者ラウンジの片隅には、地球の歴史を感じさせる杉本博司の作品『海景』が掲げられている。

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京都の景色と呼応する、多様なフロアプラン

驚くべきは、弥栄会館の南西面のファサードを残したまま、その内側に沿うように客室棟を新築したこと。京都市の景観規制に従いつつ、地上5階地下1階の建屋に全55室の客室を設けるために、現代のホテルとしては天井高を抑えめに。水平面の広がりを強調することで、居心地の良さを確保した。

客室の窓辺にたたずみ、美しい京町家や東山の緑を眺めながら小関さんが榊田さんに質問を投げかける。「客室から見る景色も絵になりますね。デザインされる際は周辺環境も意識してデザインされるんですか」

「ホテルは同一形状の客室プランを複製していくのが一般的です。でも、ここでは京都で時間を過ごしている感覚を存分に堪能してほしい。そのため、窓の外に広がる情景をも設計の中に取り入れ、部屋ごとに異なるプランを考え客室を丁寧にデザインしていきました」と榊田さん。

<写真>帝国ホテルとしては初となる畳敷きの和室を北棟に用意。サクラやトチ、スギ、クリなどをふんだんに使用している。

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細部にまでこだわった多角的な設計思想

1200年の歴史を誇る古都との調和を目指し、設計にかけた期間は5年以上。建材やしつらえの細部に至るまで徹底してこだわったデザインチームの心意気に「あらゆる時間軸に立った多角的な視点から建築を考え抜いているのは、本当にすごいです」と小関さんも敬服する。

<写真>最上階のオールドインペリアルバーで大好きなウイスキーを味わう小関さん。

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平安時代の人も同じ空を見ていたんでしょうかね(榊田)ーー時間旅行をしている気分になってきました(小関)

「建築を考えていて面白いのは、素材選び一つで時代や地域、人々の暮らし、ひいては自然や地球の成り立ちまで見えてくること。帝国ホテル 京都の設計は大きなチャレンジでしたが、おかげで視野が広がり、たくさんのことを学びました」

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水のそばにいるのに石に包まれている感じが新鮮です

プールにスパ、レストラン、バーなど、どの施設にも至るところに細やかな意識が及んでいる。「次はゆっくりと泊まりたいな。というか、住みたいかも!」と、小関さんはかなり気に入った様子だった。

<写真>地下1階にある全長17.5mの宿泊者専用プール。壁には岡山産の北木石を大胆に使用している。

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<写真>本棟2階のオールデイダイニング弥栄で、薪窯で仕上げた「弥栄カレー」も堪能。

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小関さんが、時間の重なりが生む趣と調和を表現したカットは『エル・デコ』最新号に掲載

「さまざまな変遷を経て雅な文化を現代に受け継いできた京都の街のように、多様な素材、意匠が豊かに融合している様子に感動しました。経年変化する銅板瓦の屋根はまるでその象徴のようです」(小関)

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今号のオフショットも!

オールドインペリアルバーで、抹茶とゆずリキュールを合わせたジンベースの京都限定カクテル「マウント比叡」を味わう。小関さんは、バーテンダーにレシピを聞くなど興味津々の様子だった。

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祗園の景色を堪能しながら、受け継がれてきた歴史に思いを馳せる。最上位客室「インペリアルスイート」に備えられたガゼボにも、「素晴らしい!」と心が動かされたよう。



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小関裕太(Yuta Koseki)

1995年東京都生まれ。ドラマや映画、舞台などで活躍するほか、2024年にはフォトグラファーとしての作品集『LIKES』、25年には30歳を記念したアーカイブブック『Y』を発売。NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』に出演中のほか、5月にはミュージカル『レッドブック~私は私を語るひと~』に出演。

ジャケット¥99,000 シャツ¥27,500 パンツ ¥42,900 /以上コム デ ギャルソン・オム ドゥ

Photo : MASAAKI INOUE Text : HISASHI IKAI Styling : SATOSHI YOSHIMOTO Hair & Make-up : CHIKA HORIKAWA

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