1. トップ
  2. ダイエット
  3. 天候で色が変わるコハナバチ、そのメカニズムとは?

天候で色が変わるコハナバチ、そのメカニズムとは?

  • 2026.5.1
湿度で体の色が変化するハチ / Credit:Madeleine M. Ostwald(QMUL)et al., Biology Letters(2026), CC BY 4.0

あるハチの体色は、空気の湿り気によって変わります。

乾いた空気では青みが強くなり、湿った空気では銅色(赤み)がかった緑に変わるのです。

そしてこの変化は、わずか1日ほどで起こります。

この不思議な現象について、イギリスのロンドン大学クイーン・メアリー(QMUL)の研究チームは、北米に生息するコハナバチの一種を対象に、湿度が体色に与える影響を実験と野外写真の分析から調べました。

この研究は2026年4月22日付で『Biology Letters』に掲載されました。

目次

  • 「色が変わるハチ」の真相を探る
  • 「湿度による変化」とそのメカニズム

「色が変わるハチ」の真相を探る

動物の体色は、単なる見た目ではなく、生存や繁殖に関わる重要な性質です。

例えば、外敵から身を隠すカモフラージュや、仲間へのアピール、さらには体温調節にも関係しています。

そのため体色の多くは、環境への適応など、長期的な要素が関わっていると考えられてきました。

しかし、色の違いにはもっと身近で短期的な原因があるかもしれません。

研究者や観察者の間では、金属光沢を持つハチの色が、状態や一時的な環境の違いによって違って見えることが以前から指摘されていました。

また、同じハチでも、地域による色の違いも指摘されていました。

研究チームは、これらの違いの原因が湿度にあるのではないかと考えました。

そこで彼らは、北米のコハナバチの一種、Agapostemon subtilior を対象に、湿度の影響を直接検証しました。

このハチは、金属のような緑や青の光沢を持つことで知られています。

その色は色素ではなく、体表の微細な構造が光を反射する「構造色」によって生まれます。

構造色は小さな形の違いに敏感なため、水分によって見え方が変わる可能性があります。

実験では、ハチの標本を高湿度、約95%の環境と、低湿度、10%未満の環境に置き、約55時間にわたって撮影しました。

色の変化は目視だけで判断せず、画像から赤と青の成分比を測ることで数値化しています。

また、新しく採集された標本と、数年前に採集された古い博物館標本を比べ、保存期間による違いも調べました。

さらに研究チームは、市民科学プロジェクト「iNaturalist」に投稿された写真も分析しました。

1738件の記録から、体色を確認しやすい雌の写真1035枚を選び、撮影地点の湿度データと照らし合わせたのです。

その結果、実験室では、湿度が高いと赤みを帯び、乾燥すると青みが強くなる変化がはっきり確認されました。

では、どうして湿度で色が変わるのでしょうか。より詳しい結果と共に見ていきましょう。

「湿度による変化」とそのメカニズム

実験の結果、コハナバチの体色は湿度によって大きく変化することが明らかになりました。

実験前の保管環境に近い湿度56%では中間的な緑色でしたが、高湿度では赤みがかった緑、低湿度では青みがかった緑へと変わりました。

この変化は、主に最初の24時間以内に起こりました。

つまり、環境が変わると比較的短時間で見え方が変わる現象だったのです。

また、湿った状態と乾いた状態の間で行き来する可逆的な変化であることも示されました。

では、なぜ湿度で色が変わるのでしょうか。

研究者たちは、構造色を生み出す微細な層が水分を吸ってわずかに膨らみ、反射する光の波長が変わる可能性を考えています。

湿度が高いと、より長い波長の光、つまり赤寄りの色が反射されやすくなり、銅色がかった緑に見えるというわけです。

ただし、ハチの体表で実際にどの構造がどのように変わっているかは、まだ直接確認されたわけではありません。

現時点では、他の昆虫や鳥の構造色で知られている仕組みと一致する、有力な説明と考えるのが正確です。

さらに興味深いのは、古い標本のほうが高湿度下で大きく色を変えたことです。

研究チームは、時間の経過によって外皮が劣化し、水分が入りやすくなったためではないかと考えています。

これは、博物館に保存されている標本の色が、生きていた時の色をそのまま反映しているとは限らないことを示しています。

野外写真の分析でも、湿度の高い場所で撮影されたハチほど、わずかに赤みがかった緑に見える傾向がありました。

ただし、この効果は小さく、体色の違いの大部分は、遺伝、光の当たり方、カメラの条件、地域差、個体差など、さまざまな要因によって左右されると考えられます。

それでも、この研究の意義は大きいと言えます。

地域による体色の違いを考えるとき、その場の湿度のような一時的な環境条件も見落とせないことを示したからです。

今後は、この小さな色の変化が、ハチの暮らしにどのような意味を持つのかを調べる必要があります。

参考文献

‘Chameleon’ bees change color with the weather
https://www.eurekalert.org/news-releases/1125294

These Bees Change Color With the Weather and Scientists Finally Know Why
https://www.zmescience.com/ecology/animals-ecology/these-bees-change-color-with-the-weather-and-scientists-finally-know-why/

元論文

Humidity induces structural colour change and contributes to biogeographic colour variation in sweat bees
https://doi.org/10.1098/rsbl.2025.0803

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

元記事で読む
の記事をもっとみる