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「何もしない時」に「何を考えるか」で神経症傾向が分かる

  • 2026.5.1
あなたは何もしていない時に何を考える? / Credit:Canva

人はストレスがあるから不安になる、そう考えるのが普通でしょう。

しかし、何も起きていないときでも不安を感じてしまうことはありませんか。

電車の中や寝る前、手が止まった瞬間に「将来は大丈夫だろうか」「あの失敗はまずかったかもしれない」と、問題や心配ごとが頭に浮かんでくることがあります。

アメリカのノースダコタ州立大学(UND)の研究チームは、この“ぼんやりした時間の思考”が、神経症傾向(ストレスや不安、落ち込みなどのネガティブな感情を抱きやすい性格特性)を理解する手がかりとなる可能性を示しました。

この研究は2026年2月24日に学術誌『Personality and Individual Differences』に掲載されています。

目次

  • 何もしていない時、心はどこへ向かうのか?
  • 「思考のクセ」が気分と結びついている

何もしていない時、心はどこへ向かうのか?

これまで心理学では、神経症傾向の高さは「ストレスへの反応の強さ」で説明されることが多くありました。

つまり、嫌な出来事が起きたときに強く不安や落ち込みを感じる人ほど、この傾向が高いと考えられていたのです。

しかしこの説明には、どうしても解けない疑問がありました。

それは「特に何も起きていないのに、なぜ不安になるのか」という点です。

この問題に対し、研究者たちは視点を大きく変えました。

外からの刺激ではなく、何もしていないときに人の心がどこへ向かうのかに注目したのです。

そこで実施されたのが、「あえて何もしない実験」です。

参加者は静かな部屋で一人、黒い画面を見つめるだけの時間を過ごします。

やるべき作業は一切ありません。

ただし、完全にぼんやりするのではなく、自分の思考や感情を観察するよう求められます。

その後、参加者は自分が何を考えていたのかを報告しました。

第1実験では「自分のこと」「人間関係」「良いこと」「問題」などを評価し、第2実験ではさらに「目標」や「不確実性」について考えていた時間も調べました。

あわせて、そのときの気分が快いものだったか、不快なものだったかも記録しています。

また、参加者は事前に質問紙で神経症傾向を測定されています。

つまり、神経症傾向の高低によって、報告される思考内容にどんな違いがあるかを比べられる設計になっているのです。

その結果、神経症傾向が高い人ほど、「問題」や「不確実性」について考える時間が長く、逆に「良いこと」や「目標」について考える時間が短い傾向が見られました。

また、思考の内容と気分の間にも明確な関係がありました。

良いことや目標を考えているときは快い気分と結びつきやすく、問題や不確実性について考えているときは不快な気分と結びつきやすかったのです。

より詳細な結果は、次項で見ていきましょう。

「思考のクセ」が気分と結びついている

今回の研究で重要なのは、神経症傾向の高い人が「嫌な出来事に強く反応する」だけではなく、何もしていないときの思考にも特徴が現れていた点です。

人は何もしていないとき、自然と何かを考え始めます。

次の予定、昔の出来事、誰かとの会話、将来への不安など、頭の中にはさまざまな話題が浮かびます。

しかし、その思考の行き先は人によって違います。

神経症傾向が高い人では、この思考の流れが、問題や不確実性に向かいやすい傾向がありました。

たとえば「今抱えている問題」や「これからどうなるか分からないこと」に意識が向きやすかったのです。

一方で、これから達成したい目標、生活の中の良いこと、人間関係といった内容には、比較的思考が向きにくい傾向がありました。

ここで注意したいのは、研究が示しているのは「思考が感情を一方的に作る」と断定するものではないという点です。

ただ、実験では「何を考えているか」と「その瞬間の気分」が強く結びついていました。

つまり、何も悪い出来事が起きていなくても、頭の中で問題や不確実性について考えている時間が長くなれば、その時間は不快な気分と結びつきやすくなります。

反対に、良いことや目標について考えている時間は、快い気分と結びつきやすいのです。

この結果から、神経症傾向を理解するうえでは、外からのストレスにどう反応するかだけでなく、「何もしていないとき、自然にどんなことを考えやすいか」も重要だと分かります。

これは日常の感情を考えるうえでも大切な視点です。

私たちは環境によって気分が左右されると考えがちですが、今回の結果は、特別な出来事がない時間に頭の中で何を考えるかも、気分と深く関わることを示しています。

もちろん、この研究にも限界はあります。

観察されたのは比較的短時間の思考であり、長期的な思考習慣を完全に捉えたわけではありません。

また、ある思考が次の思考を呼ぶような「思考の連鎖」までは、まだ直接調べられていません。

それでも、この研究は一つの重要な可能性を示しました。

「何もしていないとき、自分の心はどこへ向かうのか」

その答えが、日々の感情の土台となっているのかもしれません。

参考文献

A simple “blank screen” test revealed a key fact about the psychology of neuroticism
https://www.psypost.org/a-simple-blank-screen-test-revealed-a-key-fact-about-the-psychology-of-neuroticism/

元論文

Dark thoughts: Default thought tendencies as a function of neuroticism
https://doi.org/10.1016/j.paid.2026.113726

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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