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築8年中古4LDKを購入も「安かった理由が…」入居半年後、30代夫婦を悩ませた"大誤算"【一級建築士は見た】

  • 2026.6.6
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出典:PhotoAC ※画像はイメージです

「整形地より1,000万円も安かったんです。通路は自分の敷地だし、奥まっていて静か。最高だと思って決めました」

そう話すのは、都内近郊の旗竿敷地に建つ築8年の中古戸建て(延床30坪・4LDK)を約4,800万円で購入したHさん(30代夫婦・子ども1人)です。旗竿敷地とは、道路に接する間口が狭く、奥に広い敷地がある土地形状のことで、形が旗とその竿に似ていることからこう呼ばれます。

ところが入居から半年で、Hさん夫婦は隣家との間で複数のトラブルに直面しました。竿状の通路部分に隣家の自転車やゴミ袋が置かれていたり、隣家の窓からHさんの庭を覗き込まれるような視線を感じたり…。「安かった理由が、住んでみてわかりました」と振り返ります。

旗竿敷地で起こりやすい「3つの境界トラブル」

旗竿敷地は、敷地の大部分が他人の家に囲まれる構造のため、通常の整形地では起こりにくいトラブルが発生しやすくなります。

・通路への物の放置
竿状の通路は近隣にとって「人目につかないスペース」に見えるため、隣家の自転車・植木鉢・ゴミ袋などが一時的に置かれることがあります。

・境界線の侵犯
隣家の植栽の枝、ブロック塀、エアコン室外機などが、知らないうちに敷地内にはみ出していることがあります。

・視線・プライバシー問題
旗竿敷地の「旗」部分は周囲を隣家に囲まれるため、隣家の2階窓からリビングや庭、寝室が見下ろされることがあります。

これらは「我慢すれば済む」と思いがちですが、長く続くと精神的なストレスにつながり、近隣関係が悪化する原因にもなります。

法律上はどうなっているのか

境界をめぐる問題には、民法上の規定があります。

民法第234条では、建物を築造する場合、境界線から50cm以上の距離を保たなければならないと定められています。これに違反した建築物については、隣地所有者は工事の中止や変更を請求できます。

植栽の越境については、民法第233条で、隣地の竹木の枝が境界線を越えた場合、所有者にその枝を切るよう請求できると規定されています。2023年の民法改正により、催告しても応じない場合は越境された側が自ら切除することも認められるようになりました。

通路部分への物の放置については、たとえそれが旗竿敷地の通路であっても、Hさんの所有地内であれば、隣家が無断で物を置くことは違法な占有にあたる可能性があります。

Hさん夫婦はどう対応したのか

複数のトラブルに直面したHさん夫婦は、段階的に対応を進めました。

まず、通路と隣地の境界に明確な目印を設置。境界鋲を結ぶようにラインを引き、低い植栽プランターを並べて「ここから先は私有地」と視覚的に分かるようにしました(材料費約3万円)。

視線対策としては、リビングと庭の境に目隠しフェンス(高さ1.8m)を設置(約25万円)。寝室の窓には遮像レースカーテンも追加し、隣家からの視線を気にせず暮らせるようにしました。

「最初に境界の認識を共有しておかなかったのが原因。曖昧にしておくと、それが当たり前になってしまう」とHさんは振り返ります。

旗竿敷地は「境界の意識」を持って選ぶ

旗竿敷地の戸建てを検討する際は、価格の安さや静かさだけでなく、境界をめぐるリスクも理解した上で判断することが大切です。とくに以下の点を意識してみてください。

・境界鋲の位置と数:敷地境界がどこか、明確に把握する
・通路部分の幅と隣家との距離:とくに「旗」部分の隣家窓との位置関係
・隣家の植栽や設備の越境状況:購入前に必ず現地で確認
・隣家との関係性:可能であれば近隣の様子を事前に把握

「旗竿敷地」が合う人もいる

ここまでトラブルを中心に紹介してきましたが、旗竿敷地が暮らしにフィットする人もいます。

価格を抑えて広い敷地を手に入れたい人、道路からの騒音を避けたい人、静かな住環境を重視する人にとっては、十分魅力的な選択肢です。境界の意識を最初から持ち、隣家との関係を丁寧に築いていけば、旗竿敷地ならではの落ち着いた暮らしを楽しめます。

「安いから」だけで選ばず、「境界の見えにくさ」がもたらす影響まで含めて判断すること。それが、旗竿敷地で後悔しない選び方の第一歩です。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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