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廃遊園地でかけられた耽美な異変に少年バディが挑む、ゴシックホラー。小説『花檻の園』

  • 2026.4.27

小説『花檻の園』の作者、北沢陶さんにインタビュー。

推す側も推される側もちょっと悩ましい、そんな感じを出せればいいかなと

新作を出すごとに注目を集める北沢陶さん。『花檻の園』の舞台は、前作に続きまたも大正期の大阪だ。最近はレトロな雰囲気が残る観光地として知られる、通天閣のお膝元の「新世界」界隈だが、当時から夜は独特の雰囲気を持つ繁華街だった。

主人公の織辺朔哉(おりべさくや)は、東京から来た転校生、漆青路(うるしせいじ)に新世界のシンボルでもあった遊園地〈ルナパーク〉に連れていってほしいと頼まれる。そこは朔哉の姉が謎の死を遂げた場所でもあり、足が遠のいていたのだが、青路と一緒に園に出向くことに。いまは廃遊園地になっているルナパーク。足を踏み入れたふたりは不思議な体験をし、朔哉には死にもつながる呪いがかかる。呪いを解くための彼らの闘いが始まった。

「旧制の学校制度では尋常小学校以上の学校に上がると完全に男女が分けられたので、朔哉たちの学校も実質男子校です。中等教育を受けられるのはほとんどがエリートの子息。いまでいうブロマンス的な独特の雰囲気もあったであろう当時の男子中学生同士の関係を表現しようと腐心した一方で、現代の推し文化みたいな要素を入れたくて。朔哉はオーラのある超美形なので、周囲の同級生たちは彼の歓心を買いたがる。逆に、朔哉にとっては“見せ物”からの脱却がテーマ。推す側も推される側もちょっと悩ましい、そんな感じを出せればいいかなと」

そんな中で青路だけは特別な関係に行き着き、朔哉にとって得がたいバディとなる。

「好意を持つ相手に見返りを求めずにいられるかが真の友情を築くための鍵だと思うのですが、青路自身にそう気づいてもらう過程を描くのがすごく難しくて。元男子中学生、というか家族に(笑)、『男子中学生はどうやって仲直りするの』と聞いたんですね。そうしたら『仲直りはしない。けれど、しないままに協力はする』と。それは興味深かったので、描写にも反映しました」

少年が体験する青春、家族関係、友情など10代の成長をどう描くかに力を入れた、と振り返る。

「私はこれまで、資料を読んで面白いなと思った“発見”から書いてきました。いまはなくなってしまった文化や風景なども小説を通してお届けして、大阪の歴史にこんなものがあったんだという驚きを感じ取ってもらえればうれしい」

北沢陶

きたざわ・とう 大阪府出身。英国・ニューカッスル大学大学院英文学・英語研究科修士課程修了。2023年、『をんごく』が横溝正史ミステリ&ホラー大賞三冠に輝き、一躍脚光を浴びる。

information

『花檻の園』

当時の大阪の街のディテールが豊か。商いの都・大阪の研究で知られる橋爪紳也氏の著作や彼所蔵の資料などを多く参考にしたそう。 KADOKAWA 1925円

写真・中島慶子 インタビュー、文・三浦天紗子

anan 2492号(2026年4月15日発売)より

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