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アリを騙して「女王扱いさせる」蝶の幼虫、秘密は”リズム”だった

  • 2026.4.17
女王扱いを受ける蝶の幼虫。リズムを使ってアリを騙していた / Credit:Canva, ナゾロジー編集

アリの巣に、見慣れない“異物”が運び込まれていきます。

それは仲間でもない、ましてや同じ種ですらない、チョウの幼虫です。

しかし奇妙なことに、働きアリたちはこの幼虫を排除するどころか、丁重に運び、餌を与え、外敵から守ります。

まるで“女王”のような特別扱いです。

なぜアリたちは、こんな侵入者にここまで尽くすのでしょうか。

この謎に挑んだのが、イギリスのウォーリック大学(University of Warwick)などの研究チームです。

最新の研究によって、その背景にアリに似た振動リズムが関わっている可能性が見えてきました。

2026年2月24日付で、『Annals of the New York Academy of Sciences』に掲載されました。

※要注意:記事内にチョウの幼虫とアリの画像があります。

目次

  • 蝶の幼虫はアリを騙し、「女王アリ」のような世話を受ける
  • 蝶の幼虫はアリ独特の「複雑なリズム」の振動を起こす

蝶の幼虫はアリを騙し、「女王アリ」のような世話を受ける

アリと一緒に暮らすチョウの幼虫は珍しくありません。

こうした関係は「好蟻性」と呼ばれます。

こうした関係には、巣の近くで恩恵を受ける程度のものもあれば、アリがいないと生きていけないほど強いものもあります。

強い好蟻性を持つ種では、幼虫はアリの巣に運び込まれ、守られ、ときには餌まで与えられます。

これまで、この“潜入”の仕組みは主に匂い、つまり化学シグナルで説明されてきました。

アリはフェロモンで仲間を見分けるため、幼虫がその化学的な手がかりを真似れば、巣の中に受け入れられやすくなります。

今回の研究者たちは、そこにもう1つ重要な要素があるのではないかと考えました。

それが、地面や植物、巣の壁を伝わる微細な振動のリズムです。

過去の研究でも、幼虫は化学的にだけでなく、リズム的にもアリの“言語”を使っていると説明されています。

そこで研究チームは、アリ2種とチョウの幼虫9種が出す振動音響信号を、高感度の装置で記録しました。

調べたのは、振動のテンポ、信号と信号の間隔、リズムの規則性、そしてどのような時間パターンを持っているかです。

また種ごとの差だけでなく、アリとの関係の強さによってリズムがどう変わるかも比較しています。

その結果、すべての種に共通して見られたのが、一定間隔で刻まれる単純なリズムでした。

ところが、アリと、アリとの結びつきが強い幼虫では、それに加えてもっと複雑なリズム構造も見つかりました。

つまり幼虫は、ただ振動を出しているのではなく、アリに似たリズム構造を使っている可能性が示されたのです。

より詳しい結果は、次で見ていきましょう。

蝶の幼虫はアリ独特の「複雑なリズム」の振動を起こす

リズム構造の調査で特に注目されたのは、「double meter(二重の拍子)」と呼ばれる、より複雑なリズムです。

これは長い間隔と短い間隔の組み合わせが現れるパターンで、音楽の強弱のある拍を思わせます。

そして、この複雑なリズムが確認されたのは、アリと、アリへの依存度が高い幼虫だけでした。

一方、アリとの関係が弱い種や、ほとんど関係を持たない種では、より単純なリズムが中心でした。

ちなみに、アリへの依存度が高い幼虫は、アリと比べて信号を出す回数が少ない傾向にありました。

研究チームは、これはエネルギー消費を抑えたり、必要なときだけ注意を引いたりすることに関係している可能性があると考えています。

では、なぜリズムがそれほど重要なのでしょうか。

アリの巣の中は暗く、しかも多くの個体が動くため、振動のノイズが絶えません。

そんな環境では、ただ信号を出すだけでは埋もれてしまいます。

そこで、規則正しく、認識しやすいリズムが役立つと考えられます。

過去の研究では、女王アリと働きアリで異なる信号があり、チョウの幼虫や蛹がそれに似た振動を出すことも報告されてきました。

今回の研究は、その話をさらに一歩進めて、アリと強い関係を持つ幼虫が、振動のタイミングやリズムの並び方までアリに近づいている可能性を示したのです。

もちろん、限界もあります。

今回の研究は、どのリズムが実際にアリのどんな行動を引き起こすのかを、直接操作して確かめたわけではありません。

自然の巣の中で本当に同じ効果がどこまで起きているのかも、今後の課題です。

それでも、チョウの幼虫が匂いだけでなくリズムまで利用して、アリ社会に受け入れられている可能性を示せたのは大きな成果です。

小さな虫たちの世界では、“拍子を合わせること”が生き延びるうえで重要な技なのもかもしれません。

参考文献

Cheeky caterpillars trick ants into treating them as queens
https://refractor.io/biology/caterpillars-mimic-queen-ant-status-colony-rhythm/

Bug beats: Caterpillars use complex rhythms to communicate with ants
https://www.eurekalert.org/news-releases/1117052

元論文

Rhythmic Signaling of Ants and Butterflies With Varying Degrees of Myrmecophily
https://doi.org/10.1111/nyas.70223

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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