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「脳に腫瘍がある」突然聞こえ始めた声ーー実際に病院で検査した結果…

  • 2026.4.17
Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

もし、どこからともなく「あなたは病気です」と告げる声が聞こえたら、あなたはそれを信じるでしょうか?

イギリスで報告されたある症例では、40代の女性が突然、頭の中で響き始めた「声」に導かれるようにして病院を訪れ、その結果、実際に脳腫瘍が見つかったのです。

この不可思議なケースは、脳と心の関係の奥深さをあらためて浮き彫りにしています。

目次

  • 突然、脳内に聞こえ始めた「声」
  • 幻覚が告げた内容は「すべて正しかった」

突然、脳内に聞こえ始めた「声」

すべての始まりは、ごく普通の読書中の出来事でした。

女性は突然、聞き覚えのない声を耳にします。

その声は女性にこう語りかけたといいます。

「どうか怖がらないでください。

こんなふうにあなたに話しかけるのは驚くかもしれませんが、これが私に思いつく最も簡単な方法だったのです。

私と友人はかつてグレート・オーモンド・ストリート小児病院で働いていました。あなたを助けたいのです」

女性によると、その姿の見えない声は、自分が信頼できる存在であることを示そうと、彼女が知らなかった3つの情報を提示し、それを確認すれば「この声が真実を伝えている証拠になる」と説明しました。

女性がそれらを調べると、実際にすべて正しいことが確認されました。

しかし、声の正体は不明であり、女性は強い不安を感じます。

自分は精神的な異常をきたしているのではないかと考え、一般医を受診した結果、精神科へと紹介されました。

精神科医は彼女を「機能性幻覚性精神病」と診断します。

これは、脳の損傷など明確な身体的原因が確認されないまま、現実との接触が揺らぐ状態です。

抗精神病薬とカウンセリングによる治療が開始され、2週間後には一度、声は消えました。

ところが、その後の休暇中に再び声が現れます。

今度は「すぐに帰宅して医療を受けるべきだ」と強く訴えかけてきました。

帰宅後も声は続き、ついには具体的な住所を示して女性を導きます。

その場所は、脳のCT検査を行う病院の部門でした。

声は「あなたには脳腫瘍がある」と明言し、検査を受けるように促します。

女性は精神科医のもとへ戻りますが、当初、医師は検査の必要性に懐疑的でした。

高額な検査であり、医学的な根拠も乏しいと判断されたためです。しかし最終的には検査が実施されることになります。

幻覚が告げた内容は「すべて正しかった」

検査の結果、驚くべき事実が明らかになります。

女性の脳には、実際に腫瘍が存在していたのです。

具体的には、左右の大脳半球の間に発生し、脳を覆う膜(髄膜)から生じる腫瘍でした。

しかもその大きさは、長さ約6.4センチ、幅約3.8センチと、決して小さくはありませんでした。

この結果を受け、医師たちは腫瘍の摘出手術を提案します。

そしてここでも、あの声は「その判断に全面的に賛成する」と語ったといいます。

手術は無事成功し、女性が意識を取り戻したとき、声は最後にこう告げました。

「あなたを助けることができてうれしい。さようなら」

その後、声は二度と現れませんでした。女性は後遺症もなく回復し、幻覚用の投薬も中止。

手術から12年後、女性は精神科医に電話をかけ、季節の挨拶を伝えるとともに、それ以来ずっと症状がないと語っています。

なぜ「声」が病気を言い当てたのか?

脳腫瘍や脳の損傷が、幻覚や精神症状を引き起こすこと自体は珍しくありません。

実際、脳の異常は不安や抑うつ、認知機能の低下だけでなく、幻聴や幻視にも関係することが知られています。

しかし、この女性の症例が特異なのは、「幻覚が未知の病気を正確に指摘し、さらに治療の方向まで導いた」という点にあります。

担当した精神科医も、同様の報告例はこれまでに存在しないと述べています。

では、この現象はどのように説明できるのでしょうか。

一つの仮説として、女性が無意識のうちに身体の異常を感じ取っていた可能性が指摘されています。

脳そのものには痛覚はありませんが、それを覆う髄膜には痛覚があります。そのため、腫瘍による微細な違和感が、不安や違和感として蓄積されていた可能性があります。

そしてその不安が、「自分でも気づいていない情報」に注意を向ける形で、あたかも外部からの声のように表現されたのではないか、というのです。

実際、腫瘍の摘出後に声が完全に消失したことは、これらの症状が腫瘍の存在と密接に関係していたことを示唆しています。

場合によっては、腫瘍そのものがこうした異常な知覚体験を生み出していた可能性も考えられます。

私たちは普段、「自分の身体の異変は自分が一番よく分かる」と考えがちです。

しかしこのケースは、その「気づき」が必ずしも意識の表面に現れるとは限らないことを示しています。

もしかすると私たちの脳は、言葉にならない異常を別のかたちで知らせているのかもしれません。

参考文献

Diagnostic dilemma: A woman heard voices telling her she had a brain tumor ‪—‬ and scans confirmed she did
https://www.livescience.com/health/diagnostic-dilemma-a-woman-heard-voices-telling-her-she-had-a-brain-tumor-and-scans-confirmed-she-did

元論文

Hip, Hip, Hippocrates: extracts from The Hippocratic Doctor(PDF)
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/instance/2128009/pdf/9448541.pdf

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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