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ずっしりと重いランドセルを、引きずりながら歩いた5歳の私。その裏で、母は『ある苦悩』を抱えていて

  • 2026.4.16

筆者の話です。
保育園の帰り道、大きな箱をひとりで運んだ記憶があります。
何気ない出来事だと思っていたその日が、後になって違う意味を持ち始めて──。

画像: ftnews.jp
ftnews.jp

持ち帰る

「大丈夫、持って帰ります」
保育園の年長のとき、先生に呼び止められ「お母さんに取りに来てもらってね」と見せられたのは、ランドセルの箱でした。
保育園からあっせんチラシをもらっていたランドセル。
保育園経由で購入したのは、どうやら私だけだったようです。
当時の私は体が大きい方で、自分で運べると思い、そのまま持ち帰ることにしました。

箱についていた取っ手をぎゅっと握って持ち上げると、思ったよりもずっしりと重さが伝わってきました。
それでも、そのときは「早く開けてみたい」という気持ちの方が強く、誰かに頼るという考えは浮かびませんでした。

重い帰り道

箱は大きく、両腕で持っていても足に当たり、歩くのを遮りました。
歩き出してすぐに腕が疲れてきて、途中で何度も立ち止まることになります。
アスファルトの上にそっと箱を置き、息を整えてからまた持ち上げる。その繰り返しでした。

普段ならあっという間に着く道のりが、その日はとても長く感じられます。
箱の取っ手もどんどん破れてきて、途中からは、底を支えるようにして抱え直す。
道端の塀に寄りかかるようにして休んだり、持ち方を変えてみたりしながら、少しずつ前へ進みました。
ようやく家にたどり着いたときの達成感は、今でもはっきり覚えています。

母のひと言

その頃、母は仕事を始めたばかりでした。
忙しい中で準備してくれていたことを、当時の私は知りませんでした。

大人になり、テレビから流れてきたランドセルのCM。
ふたりでぼんやり観ていたとき、母がぽつりと言いました。
「離婚したてで、ランドセルも選べなくてごめんね」
そう言ったあと、母は少し笑って続けました。
「あの箱見たときは、正直焦ったよ」
何気ない会話の中で聞いたその言葉に、当時の記憶がよみがえります。

重みの意味

箱の底には、擦れた跡が残っていたそうです。
何度も立ち止まりながら運んだことを思い出すと、胸がぎゅっとなりました。
あの日の私は、ただ「自分で持って帰れた」という達成感だけを感じていました。
けれど母の言葉を聞いて、あの日の記憶の意味が、少しだけ変わった気がしたのです。

6年間背負い続けたランドセルは、母が一生懸命用意してくれたものでした。
あの日、自分で持って帰った記憶と重なって、今はあのときの母の気持ちを、少しだけ受け取れた気がしています。

【体験者:50代・筆者、回答時期:2026年4月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:Kiko.G
嫁姑問題をメインテーマにライター活動をスタート。社宅生活をしていた経験から、ママ友ネットワークが広がり、取材対象に。自らが離婚や病気を経験したことで、様々な悩みを持つ読者を元気づけたいと思い、自身の人脈や読者の声を取材し、記事として執筆。noteでは、糖尿病の体験記についても発信中。

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