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『脚の付け根に膨らみが…』“痛くないから”と放置→数年後、50代男性に告げられた“驚きの宣告”に「放置しなければよかった」

  • 2026.5.27
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

みなさんこんにちは、日々緊急手術に臨む麻酔科専門医の松岡雄治です。

「脚の付け根のそれ、前より大きくなってない?」妻の問いかけに、「少し膨らむけど、指で押し込めば戻るし、痛くないから大丈夫だよ」。

50代男性会社員・Aさん(仮名)は、鼠径部のポッコリをそうやってやり過ごし、病院の受診を避けていました。

しかし数年後、突然その膨らみが戻らなくなり、激しい腹痛と嘔吐に襲われ救急搬送されました。医師から「腸が腐りかけている」と告げられ、緊急で開腹し、壊死した腸を切り取る大手術を余儀なくされました。

お腹を開けたことで、癒着による腸閉塞のリスクがあると説明され、不安に怯える生活を送っています。奥さんに「指摘してくれたときに放置しなければよかったよ」と後悔を滲ませています。今回は、腸閉塞の緊急手術に関するエピソードをご紹介します。

「戻らなくなったポッコリ」が腸を破壊するメカニズム

この膨らみ、戻らなくなったら要注意です。
なぜ「痛くないお腹の膨らみ」が、これほど恐ろしい事態を招いてしまうのでしょうか。それは、筋肉の隙間から飛び出した腸が締め付けられ、血流が途絶えてしまうためです。

【嵌頓(かんとん)ヘルニアで腸が破壊されるフロー】
・腸の脱出(ヘルニア):加齢などで弱くなったお腹の筋肉の隙間から、腸が飛び出します。普段は横になったり、指で押したりすればお腹の中に戻ることがほとんどです。
・出口での締め付け(嵌頓):ある日、強く飛び出した腸が、出口(ヘルニア門)の筋肉にギュッと挟まり、お腹の中に戻らなくなってしまいます。
・血流の途絶と腸の壊死:首を絞められた状態になった腸は、血液が通わなくなります(虚血)。このままだと最短数時間(目安として4〜12時間)で壊死が始まり、最終的に絞扼性腸閉塞(締め上げられるタイプの腸閉塞)へと陥ります。

「押し込めば戻る」という安心感と、突然牙を剥く「嵌頓」の罠

「痛くもないし、横になれば引っ込むから病院に行くほどではない」「鼠蹊部は恥ずかしい場所だから見せたくない」。そうして、長年放置してしまうケースは案外多いものです。

しかし、鼠径(そけい)ヘルニア(いわゆる脱腸)は、薬や運動で自然に治ることはないため、根治のためには手術が必要です。軽症の場合には、十分な説明をした上で経過観察としてもよいとされていますが、ある日突然「嵌頓(かんとん)」を起こして牙を剥く可能性があるため、注意が必要です。

嵌頓して腸の血流が止まると、激痛とともに腸閉塞を引き起こし、4〜12時間で腸が壊死し始めます。こうなると、日帰りで終わるような負担の少ない手術ではなく、全身麻酔で大きくお腹を開け、腐った腸を切り取る命がけの緊急手術が必要になることもあるのです。

手遅れになる前に確認したい「3つのサイン」

取り返しのつかない腸の壊死になる前に、足の付け根の膨らみを振り返ってみてください。以下のサインがある場合、腸が締め付けられ、悲鳴を上げ始めている可能性があります。もし下記の兆候があれば、嵌頓のおそれがあるため、すぐに手術対応できる救急病院を受診してください。

1. 膨らみが硬くなり、指で押しても戻らない

今まで横になれば戻っていた腸が、筋肉の穴にガッチリと挟まり込んでいる(還納不能な)危険なサインかもしれません。

2. 膨らんでいる部分を押すと強い痛みがある

締め付けられた腸が腫れ上がり、血流障害(虚血)が始まりかけていることを示している可能性があります。

3. 激しい腹痛とともに、吐き気や嘔吐がある

腸が完全に詰まり(腸閉塞)、内容物や胃液が逆流している、極めて緊急性の高い状態かもしれません。

足の付け根の違和感は、ぜひお近くの消化器外科や鼠径ヘルニアクリニックに

「このくらい」と見て見ぬふりをしてしまうと、思いがけない代償を払うことになるかもしれません。

鼠径ヘルニアは、嵌頓を起こす前であれば、基本的には、メッシュ(人工網)を当てる手術などにより、短期間の入院や日帰りクリニックで安全に治すことができる病気です。

「最近、お腹のポッコリが戻りにくくなったかな?」と感じたら、激痛に変わる前に、まずお近くの外科や消化器外科や鼠径ヘルニアを専門としているクリニックにご相談ください。

軽症であれば、注意点を守って経過観察することで、手術をせずともよい可能性もあります。不安を取り除き、安心して過ごせるようにしましょう。


※本記事は一般的な医学的情報の提供を目的としており、特定の診断や治療を保証するものではありません。症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。

監修者・執筆:松岡 雄治

総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。

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