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「ずっと生理痛が重くて…」“痛み”があるも放置→数年後、下腹部の張りで受診…30代女性に告げられた“恐ろしい病名”【医師は見た】

  • 2026.5.8
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

みなさまこんにちは。産婦人科手術はもちろん、様々な手術において皆様の健康と日々向き合う麻酔科専門医の松岡です。

本日は、30代女性のチョコレート嚢胞が数年でがん化してしまったお話を解説します。

「このところずっと生理痛が重くて、市販の痛み止めも効きがいまいち。年齢のせいかしら」そうやって、痛みを受け入れて過ごしていた30代後半のCさん。

しかし数年後、下腹部の張りに気づいて受診した結果、「卵巣がん」と宣告されました。その後、卵巣を摘出する手術を受けましたが、再発の可能性が高いと知り、不安な日々を送っています。

「重い生理痛」の裏に隠れたリスク

重い生理痛の原因が「子宮内膜症(チョコレート嚢胞)によるもの」である場合には注意が必要です。

これを放置することは「がんの発生源」を放置することに繋がってしまうおそれがあるためです。

【古い血液が卵巣をがん化させるフロー】
・古い血液の貯留(初期):子宮内膜症により、卵巣の中に毎月剥がれ落ちた内膜や古い血液が溜まり続け、ドロドロのチョコレート状の嚢胞を作ります。これがチョコレート嚢胞と言われる所以です。この病変やその炎症によって起こる癒着(炎症が治癒する過程で組織同士がくっついてしまうこと)が、強い生理痛を引き起こします。
・酸化ストレスによる損傷:溜まった古い血液は強力な「酸化ストレス」を発生させ、周囲の細胞のDNAを長期間にわたり直接傷つけ続けます。
・がん細胞の発生(40代以降):傷ついた細胞が突然変異を起こして、卵巣がんへと進行します。

「ピルへの抵抗感」と「がん化リスク」の境界線

「生理痛は病気じゃないから我慢するもの」「ピルを飲むのは副作用が怖いし抵抗がある」。そう考えて痛みを市販薬でやり過ごしてしまうのは、ごく自然な心理です。

しかし、後述するように痛み止めが効かない生理痛は要注意です。

では、痛みの原因にチョコレート嚢胞がある場合に、「体質」と誤解して受診のタイミングを見逃すとどうなるのでしょうか。チョコレート嚢胞は年を重ねるにつれてがん化リスクが高まることが知られています。

低用量ピルなどのホルモン療法は、月経をコントロールして痛みを和らげるだけでなく、病変の進行を抑える有効な手段です。副作用のリスクと、がん化のリスク。専門医と相談しながら、どちらが自分にとって大きなリスクかを冷静に判断することが大切です。

手遅れになる前に確認したい「3つのサイン」

「いつもの生理痛」と誤認して、大切な治療のチャンスを逃さないためには、危険なサインを見逃さないことが重要です。

1. 市販の痛み止めが効かない、年々痛みが強くなっている

卵巣内で出血と炎症が繰り返され、病状が進行しているサインです。基本的に月経困難症であっても、市販の痛み止めが効くため、これで変化に乏しいと感じる場合には一度受診しましょう。

2. 生理の時以外でも、下腹部痛や腰痛、排便痛がある

子宮内膜症がある場合、出血によって腹膜が刺激されたり、炎症によって周囲の臓器(腸など)とくっついたり(癒着)している可能性があります。癒着があると、生理のタイミングとは関係なく、臓器が柔軟に動くことができないことで、引っ張られて強く痛むのです。

3. 40歳以上で、下腹部にぽっこりとした膨らみを感じる

40歳以上嚢胞が大きくなっている、あるいはすでにがん化して急速に増大している危険なサインかもしれません。大きさが10cmを超えると卵巣癌の合併率が跳ね上がることが知られています。大きさは手術を検討する一つの要素にもなるので、ある程度の大きさがある膨らみを感じる場合には一度受診しましょう。

心当たりがあったらぜひ一度エコー検査を

毎月やってくる生理痛を「いつものこと」と油断してしまったり、忙しさから婦人科を受診するのをためらってしまったりするのは、人間としてごく当たり前のことです。

しかし、もし今回ご紹介した「強くなる痛み」や「下腹部の張り」に心当たりがあれば、決して自己判断で放置しないでください。まずは痛みの状態をメモし、婦人科を受診してみましょう。

受診してどんな検査をされるのかと不安に感じるかもしれませんが、多くの場合、超音波検査でよくわかります。つらい痛みを我慢しすぎず、快適に安心して年を重ねられる毎日を送りましょう。


※本記事は一般的な医学的情報の提供を目的としており、特定の診断や治療を保証するものではありません。症状がある場合は、必ず産婦人科等の医療機関を受診してください。

監修者・執筆:松岡 雄治

総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。

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