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家族でキャンプ「テントは狭いから…」と車中泊をした父→翌朝、息苦しさで意識を失い…50代男性に起こった“恐ろしい異変”

  • 2026.5.6
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「テントは狭いから、お父さんは車で寝るよ」。

初夏の家族キャンプ。子どもたちを広く寝かせるため、50代の男性Mさんは車の運転席を倒して慣れない車中泊をしました。

翌朝、足のむくみと軽い痛みを感じました。筋肉痛だろうとあまり気にせず、車から降りた瞬間でした。胸を締め付けられるような息苦しさに襲われ、意識を失いました。救急搬送された病院で集中治療を受け、Mさんは一命を取り留めました。

しかし、肺機能は低下し、現在は少し歩くだけで息切れがします。「足を伸ばして広々とした場所で寝ていれば」と、大好きなキャンプにも行けなくなった日常に涙しています。

皆様こんにちは。周術期の血栓リスクと日々向き合う麻酔科専門医の松岡です。
今回は初夏のお出かけで起きた悲劇を通して、血栓症について解説します。

歩き出した瞬間に肺を塞ぐ「血栓」の恐怖

飛行機に乗っていないからエコノミークラス症候群にはならないというのは大きな誤解です。車中泊や長時間のデスクワークでも、足の静脈に血栓は作られます。恐ろしいのは、足にできた血栓が歩き出した瞬間に牙を剥くというメカニズムです。

【車中泊が肺の血管を塞ぐフロー】

・座った姿勢の長時間維持:狭い車内で足を曲げたまま座り、足の血流が極端にうっ滞する
・血栓の形成:水分不足も重なり、体の深い場所にある静脈で血液が固まり血栓ができる
・血栓の遊離:車から降りて歩き出した瞬間に、ふくらはぎの筋肉が静脈を押しつぶして、ポンプ作用で血栓が血管から剥がれて押し出されていく
・肺動脈の閉塞:血栓が血流に乗って心臓を抜け、肺の動脈に詰まる
・呼吸停止や心停止:血液に酸素を取り込めなくなり、急激な呼吸困難や心停止を引き起こす

「ただのむくみ」と「危険な血栓」の境界線

テントを家族に広く使わせてあげたい。自分は車で少し我慢すればいい。連休のキャンプでそんな気遣いから車中泊を選んだMさんは家庭的な心優しいお父さんです。

ただし、車中泊や長時間座ったままの姿勢を取りうる場合には、知っておくべき事実があります。足の深い静脈は長時間の不動と水分不足が重なると、あっという間に血栓の工場になってしまいます。

初夏から夏にかけてのレジャーは特に危険が潜んでいます。汗をかいて体内の水分が減っている状態に、キャンプで利尿作用のあるビールやコーヒーばかり飲むことが重なると、うまく水分補給できずに、血液はさらにドロドロになります。そこに足を下げたままの睡眠が加わると、血栓のリスクは跳ね上がります。

飛行機のような気圧の変化がなくても血栓は生じます。ふくらはぎの違和感をただの疲れだと自己判断し、急に歩き出すことは引き金を引くようなものです。正しい知識と少しの工夫さえあれば、この悲劇を防ぐことができたかもしれません。

手遅れになる前に、確認すべき3つのサイン

ただの筋肉痛という誤認は、致命的な血栓を肺に飛ばす原因になります。足が発する危険なサインを見逃さない配慮が必要です。

1.片足だけが異常にむくみ、赤黒く腫れている

両足のむくみは疲労でも起こります。しかし、片足だけの腫れは、そこの太い静脈が血栓で渋滞している危険なサインです。

2.安静にしていても、ふくらはぎの奥に強い痛みがある

血栓によって静脈に強い炎症が起きている証拠です。痛みを確かめようとふくらはぎを揉む行為は、血栓を剥がして血流に乗せてしまう可能性があるため控えてください。

3.歩き出した直後に胸の痛みや息苦しさを感じる

すでに血栓が肺に飛び始めている極めて危険な警告です。直ちに動くのをやめる必要があります。

まとめ

家族のための行動が突然の悲劇を招くのはとても残酷な現実です。夏のキャンプでまさか自分がエコノミークラス症候群になるなんてMさんも思いもしなかったでしょう。

車中泊の際は、意識的な水分補給と、座ったままかかとの上げ下ろし(足首の曲げ伸ばし)を行うなどの簡単な運動が推奨されます。また、水分補給に、ビールやコーヒーは適していないことにも注意が必要です。

長時間座っていた後、足に異常な腫れを感じた際は決して歩き回らず、直ちに救急要請をすることでさらなる被害を防ぐことができるかもしれません。楽しい思い出が悲劇に変わることがないように、ぜひ気をつけましょう。


監修者・執筆:松岡 雄治

総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など

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