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“2,000万の実家”を相続することに→「今のうちに」名義変更の手続きを進めるが…その後、50代息子が直面した“想定外の出費”

  • 2026.6.21
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは、家計・資産形成・相続など、お金に関するご相談をお受けしている、マネーシップス代表 ファイナンシャルプランナー/IFAの石坂です。

親の実家について、「元気なうちに子ども名義にしておけば、相続でもめにくい」と考える方は少なくありません。たしかに、生前に方向性を決めておくことは、家族間の争いを防ぐ一つの方法です。

しかし、不動産を親から子へ移す場合、家族内の話し合いだけでは終わりません。贈与税、不動産取得税、登録免許税、司法書士報酬など、相続とは違う費用が発生することがあります。

今回は、実家を生前贈与で受け取ろうとした50代長男の事例をもとに、名義変更前に確認したい注意点を見ていきます。

「早めに名義変更」で安心したはずが、費用でつまずく

50代会社員のAさんは、80代の母が一人で暮らす実家について悩んでいました。父はすでに亡くなっており、将来の相続人はAさんと妹の2人です。

実家は地方都市の一戸建てで、登記費用の目安となる固定資産税評価額は土地1,600万円、建物400万円、合計約2,000万円。母の預貯金は約600万円でした。母は以前から「この家は長男に継いでほしい」と話しており、Aさんも「相続のときに妹ともめるくらいなら、今のうちに名義を変えた方がよい」と考えました。

妹にも話したところ、その場では「母がそう言うなら」と大きな反対はありませんでした。そこでAさんは、母から実家を生前贈与してもらおうと、名義変更の手続きを相談することにしました。

ところが、手続きを進める段階で想定外の費用を知ります。贈与による所有権移転登記では、登録免許税が不動産の価額に対して原則2%かかります。固定資産税評価額が2,000万円なら、登録免許税だけで約40万円です。

さらに、司法書士報酬が10万円前後かかる場合もあります。加えて、不動産取得税や、土地・建物を受け取ることで発生し得る贈与税の負担も考える必要があると知り、Aさんは「親子間で名義を変えるだけなのに、ここまでお金がかかるのか」と驚きました。

相続なら少なく済む費用も、贈与では重くなることがある

生前贈与で実家を受け取る場合、まず確認したいのは贈与税です。親から子への贈与であっても、不動産を無償で受け取れば、原則として贈与税の対象になります。

暦年課税では、1年間にもらった財産の合計額から基礎控除110万円を差し引いて贈与税を計算します。実家のように財産価値が1,000万円、2,000万円規模になると、贈与税の対象額も大きくなりやすく、110万円の基礎控除だけでは収まりにくいケースがあります。

※なお、贈与税の評価は土地と建物で考え方が異なるため、実際の税額は個別に確認が必要です。

また、登録免許税も相続と贈与で異なります。相続による所有権移転登記では原則0.4%ですが、贈与では原則2%です。固定資産税評価額が2,000万円なら、相続では約8万円、贈与では約40万円となり、登記だけで約32万円の差が出ます。

さらに、相続で取得する場合は原則として不動産取得税はかかりませんが、贈与では原則として課税対象になります。住宅や土地には軽減措置が使える場合もありますが、「家族間だから少額で済む」と決めつけない方がよいでしょう。

もう一つ大切なのが、他の相続人との公平感です。Aさんが財産価値2,000万円規模の実家を先に受け取り、母の預貯金が600万円ほどしか残っていない場合、妹から見れば「兄だけが大きな財産を受け取った」と感じる可能性があります。その場では納得していても、介護費用や将来の相続財産の残り方によって、不満が出ることもあります。

実家の承継は「名義変更ありき」で進めない

実家の生前贈与を考えるときは、「早く名義を変えること」だけを目的にしないことが大切です。名義を変えれば、相続時の話し合いを減らせる可能性はあります。しかし、その代わりに税金や諸費用の負担が先に発生します。

いきなり名義変更を進めるのではなく、まず次の点を整理することをおすすめしたいです。

  • 土地・建物の評価を確認したうえで、贈与税がどの程度かかる可能性があるか
  • 登録免許税、不動産取得税、司法書士報酬を含めた総額はいくらか
  • 相続で受け取った場合と比べて、費用差はどれくらいか
  • 他の相続人に不公平感が残らないか
  • 親の介護費用や生活資金が不足しないか

生前贈与が悪いわけではありません。

※実家の承継には、遺言で承継先を明確にする方法、相続時精算課税を使った場合の贈与時・相続時の税負担や不動産取得税への影響を確認する方法、他の相続人に代償金を用意する方法、生命保険でバランスを取る方法などもあります。

「もめないために名義を変える」ことが目的だったはずなのに、税金や費用、兄弟姉妹の不満で別の問題が起きてしまっては本末転倒です。実家の承継では、名義をいつ変えるかだけでなく、税金・費用・家族の納得感まで含めて考えることが大切です。


執筆・監修:石坂貴史
証券会社IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー・証券外務員)、マネーシップス代表。累計1,200件以上の相談対応に加え、金融記事の制作・校正・監修の対応を行っています。専門は「金融・経済、不動産、保険、相続、税制」。資産運用やライフプラン設計では、分散投資の考え方と人の心理を踏まえた行動設計をもとにサポートしています。
保有資格:証券外務員一種、2級FP技能士、AFP、NISA取引アドバイザー、日本証券アナリスト協会認定 資産形成コンサルタント、金融リテラシー検定

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