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50代夫が急死→書斎で見つけた“USBメモリ”に2500万円が。データ復元を試みるも…1年後、妻を襲った“デジタル遺産の悲劇”

  • 2026.5.26
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

現役営業マンのたるみくまおです。

近年、資産の形は大きく変わり、ネット銀行やネット証券、暗号資産など、現金以外の形で持つ方も増えています。ですが、亡くなったときに家族にも分かる形で残しておかないと、思わぬトラブルを招くことがあるのです。

数年前、ある取引先メーカーの応接室で、商談が一段落しお茶を口に運んでいた総務担当のBさん(仮名)がふとこぼしました。

「セキュリティ意識を持つのはいいことなんだけど、意識が高すぎるのも考え物ですよね〜」

何のことかと尋ねると、Bさんが話してくれたのは、同じ会社で急逝したITエンジニアの遺族が、亡くなった方の暗号資産にアクセスできず、およそ1年にわたって業者を渡り歩いた話でした。引き出せないのに、相続税だけは発生する。デジタル時代の「遺品」が家族にどんな重荷を残したのか、その顛末を綴ります。

突然の急逝と、税理士が見つけた暗号資産

Aさん(仮名)は50代の運用系エンジニア。仲良くなると副業や暗号資産の話をしてくれる、投資にも積極的な方でした。

そんなAさんが、ある春、妻の横で眠ったまま急逝されたといいます。ご家族はしばらく葬儀や故人との別れに追われ、相続まわりの手続きに目を向けるどころではなかったそうです。

落ち着きを取り戻し、準確定申告(亡くなった方の所得を相続人が4か月以内にまとめて申告する手続き)の準備に入った頃、税理士が前年の確定申告書をめくる手を止めたそうです。「ここに、暗号資産の取引履歴があります」。通帳に取引所への送金記録、パソコンに取引所からの定期通知メール。Aさんが暗号資産を保有していたことが、家族にとってこのとき初めて明らかになりました。

取引所では500万円戻ったが、本丸は書斎の引き出しに

ご家族は取引所2社に相続手続きを依頼しましたが、戸籍謄本や遺産分割協議書など必要書類を揃えるのに相応の時間を要したそうです。

最終的に取引所口座にあった500万円相当はアクセスを取り戻せたものの、本丸はAさんの書斎の引き出しで見つかったハードウェアウォレット(USBメモリのような専用機器で、暗号資産をオフラインで保管できるもの)でした。

開けるには24語のリカバリーフレーズ(復元用のキーワード)が必要です。Aさんがどこにメモを残したのか、ご家族にも心当たりはなかったといいます。

業者を渡り歩いた1年、引き出せなかった2,000万円も課税対象に

藁にもすがる思いで、データ復旧やパスコード解析を扱う業者にも相談しました。5社を渡り歩き、約100万円をかけても、答えはどこも同じでした。「フレーズなしでの復元は、現実的には極めて難しい」。

暗号資産の存在が明らかになってからおよそ1年。気づけば相続税の申告期限10か月をとうに過ぎ、期限後申告となって無申告加算税や延滞税の負担も乗ってきたといいます。

都内のマンションや預貯金と合わせて遺産総額は、相続税の非課税枠(基礎控除、妻と子1人で4,200万円)を超えていました。

今回のケースではアクセス不能を税務上証明する手立てが乏しく、評価額2,500万円の暗号資産は、取り戻せた500万円も、引き出せなかった2,000万円も、亡くなった時点で持っていた財産とみなされ、税金の計算対象に含まれることとなりました。

「結局、引き出せないお金にも税金だけはきっちりかかるんですよね」。Bさんはお茶を口に運び、ふと付け加えました。「ITや金融に詳しかった人でも、家族にアクセス手段を残せていないとこうなるんですよね」。

家族に残すべきは「資産」より「アクセスする手段」

Aさんのお話は他人事ではありません。私たちの資産はいつの間にか目に見えない場所へ移り、家族にはその所在すら知らされていないことも多いのです。

今日からできるのは、ご家族と「目に見えない資産」について一度話してみること。そのうえで、エンディングノートにはID・パスワードではなく「保管場所」を残しておくこと。ハードウェアウォレットを使う方なら、リカバリーフレーズの置き場所を信頼できる家族にだけ伝えること。重要な金融資産は申告期限10か月を意識して、生前に一覧化しておくこと。

家族に残すべきは、資産そのものではなく、資産にアクセスする手段。私自身もこの話を機に、パスワード管理を見直し始めました。


※暗号資産(仮想通貨)の相続税評価(死亡日の市場価格の終値ベースなど)や、パスワード紛失時の税務上の個別判断、相続税の申告期限(死亡を知った翌日から10か月以内)は、個人の総資産額や国税庁の最新のガイドラインによって厳格に定められています。デジタル遺品の相続や税務申告でお困りの際は、自己判断せず、速やかにデジタル資産の取り扱いに強い税理士や弁護士などの専門窓口へ直接ご相談ください。

参考:国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」

ライター:たるみくまお
リユース業界での買取窓口業務を経て、現在は技術商社に勤務する現役ビジネスマン兼Webライター。古物商許可証を保有し、ブランド品・高級時計の査定現場で数多くのお客様と向き合ってきた経験を持つ。現職では技術商社の最前線に身を置き、ITをはじめとする幅広い分野の知見を日々積み重ねている。また、過去に借金を抱えた経験から、マネーリテラシーの重要性を痛感し、現在も金融知識の習得を続けている。二次流通市場の裏側から、お金のリアルな話まで、現場で得た実体験をもとに等身大の言葉で発信中。

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