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借金を返せず“自己破産”を決めた30代男性→「早急に事務所に来て」弁護士から1本の電話が…告げられた“思わぬ宣告”に絶句。

  • 2026.5.25
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「消費者金融や銀行には返せなくなっても、お世話になった友人や身内の借金だけは、内緒で返し続けたい」

借金問題に苦しみ、自己破産を決意した人の多くが一度は考えてしまう「人情」です。しかし、破産手続きの世界において、この優しさは「手続きを根底から崩壊させる最大の違法行為」となります。

今回は、弁護士に嘘をついて特定の相手にだけ返済を続けた結果、信頼関係を失い、手続きが途中で強制終了してしまった30代の男性Aさん(仮名)の事例をご紹介します。

借金を返せず「自己破産」を決意したAさん

Aさんは30代の男性です。

5年ほど前に事業を始めましたが、なかなか軌道に乗らず、どんどん借金が増えていき、ついに返すめどが立たなくなってしまいました。Aさんは、一旦事業から撤退して、自己破産しようと決意し、弁護士の元を尋ねました。

相談をした弁護士からは、やはり破産が相当だと言われました。そのため、Aさんは、その弁護士に自己破産をすることを決めて、契約を交わしました。着手金を一括で払うことができなかったため、毎月2万円ずつ積み立てることにしました。積み立てが終わるまでの間に、弁護士が、破産の準備をすることになりました。

仇となった友人からの借金

Aさんが弁護士に借入先を書いた書面を渡したところ、弁護士から「他に借り入れをしている先はありませんか?親兄弟や親戚、友人も対象となります。漏れていませんか?」と確認されました。Aさんは「他にはありません」と弁護士に告げました。

しかし、実際には、Aさんは友人から300万円ほどの借金をしており、月々10万円ずつ返済していました。この友人はとても親しい友人でした。「自己破産するのでもうお金を返せない」などと言うと縁を切られてしまうかもしれません。そうしたら、将来また事業を興しても、二度とお金を借りることはできないでしょう。そう考えて、Aさんは、友人に対する借金と返済していることを隠すことにしたのでした。

弁護士に嘘が発覚し、まさかの事態に

弁護士に自己破産を依頼して半年ほどになりました。着手金の積み立ては順調に進んでいました。Aさんは2か月に一度ほど、記帳した通帳や確定申告書、生命保険証書などの必要書類を持参して弁護士のもとを尋ねていました。

ある日のことでした。弁護士から電話がかかってきて「早急に事務所に来て欲しい」と言われました。1週間ほど前に事務所に行ったばかりだし、次の約束は2か月先でした。どうしたのだろうと思いましたが、Aさんは翌日弁護士のところに行くことにしました。

約束の時間に弁護士のところに行き、会議室で待っていると、弁護士が険しい顔で入ってきました。Aさんの顔を見るやいなや、「私に隠れて支払をしていますね?」と弁護士が言い出しました。Aさんは、びっくりしました。

弁護士はさらに「定期的に10万円が通帳から引き出されています。このお金はなんですか?」とAさんに尋ねてきました。Aさんは、嘘をついてその場を切り抜けようかと考えましたが、良い案が浮かびませんでした。そこで、友人に300万円の借金をしていたこと、毎月10万円ずつ返す約束をしていたこと、自己破産すると言えずに支払を続けていたことを打ち明けたのでした。

すると、弁護士はこう言いました。「やはりそうだったのですね。受任したときにもお話ししましたが、自己破産には債権者平等の原則というのがあって、特定の債権者だけを有利に扱ってはいけないんです。親兄弟や友人も全て同じです。私が受任したあとに、ここまで大きな金額をかくして支払っていたとなると、もう信頼関係を保つことはできません。私は今日限りで辞任させてもらいます。」

Aさんは、驚きました。そして、もう返済しないことを告げて何度も謝罪しました。しかし、弁護士は辞任を撤回してはくれませんでした。

隠れて払う「偏頗弁済」が招く最悪のブーメラン

なぜ、弁護士はここまで厳しくAさんを突き放したのでしょうか。それは、Aさんの行動が法律上で「偏頗弁済(へんぱべんさい)」と呼ばれる重大なルール違反にあたるからです。

自己破産の手続きにおいて、嘘や隠蔽が発覚すると以下のような致命的なペナルティが科されます。

  • 「免責不許可(借金が消えない)」になるリスク: 裁判所から「誠実な破産者ではない」と判断されれば、自己破産そのものが認められず、すべての借金がそのまま残る最悪の結果になりかねません。
  • 「管財事件」になり費用が跳ね上がる: 隠し財産や不適切な返済の疑いがあると、裁判所から「破産管財人」という別の弁護士が選出され、財産状況を徹底的に洗われます。その結果、裁判所に納める予納金(約20万円〜)の追加負担が発生します。
  • 返したお金は友人から「没収」される: 法律上、友人が受け取ってしまった計数十万円のお金は、管財人によって強制的に回収(否認権の行使)され、他の銀行や消費者金融へ平等に分配されることになります。結局、友人にまで多大な迷惑がかかるのです。

弁護士に辞任されたAさんを待っていたのは、地獄のような現実でした。辞任通知が各金融機関に届いたことで、それまでストップしていた借金の督促(ハガキやSMS、電話)が毎日のように猛スピードで再開されたのです。

精神的に追い詰められたAさんは、別の弁護士を必死で探し、今度は友人からの借金もすべて正直に白状して、一から手続きをやり直すことになりました。

まとめ

Aさんは「『どうせバレないだろう』という甘い考えのせいで、弁護士費用も時間も無駄にし、精神的にもボロボロになりました。最初からプロを信じてすべてを話すべきでした」と深く後悔されています。

自己破産は、国が作った「人生の再スタート」のための救済制度です。だからこそ、利用する側には100%の誠実さが求められます。

「身内だから」「お世話になった人だから」という個人の感情は、裁判所や法律の世界では一切通用しません。これから手続きを考えている方は、引き出しの中の書類や過去の記憶をすべて机の上にさらけ出し、弁護士という唯一の味方に対して絶対に嘘をつかないこと。それこそが、借金地獄から人生を確実にリセットするための、鉄に刻んだ大原則なのです。


※自己破産における債権者の申告義務や、特定の返済(偏頗弁済)に対する裁判所の判断、免責の許可基準は、借入の経緯や個人の資産状況によって細かく異なります。過去の返済に不安がある場合や手続きを検討される際は、自己判断で隠蔽しようとせず、必ず事前に破産実務に強い弁護士などの専門窓口へ直接ご相談ください。

執筆・監修:寺林智栄
2007年、弁護士登録(札幌弁護士会所属)。 2013年から2017年まで東京家庭裁判所家事調停官を務める。 離婚・相続などの家事事件、労働問題、一般民事事件、企業法務など、幅広い分野を担当している。

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