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“新築一戸建て”を買った30代夫婦→「月々が安くなる」新型ローンで契約するが…2年後、家計を襲った“想定外の事態”

  • 2026.5.21
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。FPとして家計相談やお金に関する情報発信を行っている柴田です。

「月々の返済が、将来グンと楽になるって聞いて」そう話してくれたのは、2年前に新築一戸建てを購入したAさん夫婦(夫35歳・妻33歳、仮名)。住宅展示場でたまたま説明を受け、その場で前向きになったといいます。

話を聞くうちに、夫婦が契約内容を十分に理解しないまま、「月々が安くなる」という一点だけに惹かれて契約していたことが明らかになっていきました。

そもそも「残価設定型住宅ローン」って何?

「残価設定型住宅ローン」は、2022年ごろから登場した、まだ歴史の浅い住宅ローンです。不動産価格の高騰で「家が買えない」人が増えるなか、国が住宅取得を後押しするために普及を促している商品でもあります。

仕組みは車の「残クレ(残価設定型クレジット)」に似ています。車の残クレでは、「5年後にこの車は100万円の価値がある」と先に決めて、その分を差し引いた金額だけ月々返済します。

残価設定型住宅ローンも同じ発想です。家の将来的な資産価値(=残価)をあらかじめ設定しておき、ローン開始から20〜25年後の「残価設定月」を迎えると、2つのオプションを使えるようになります(オプションを使わず、そのまま返済してもOK)。

  • 返済額軽減オプション:月々の返済額が2段階で大幅に減ります。当初借入から50年経つと最終的に金利のみの支払いになり、51年目以降は元本を生きている間は返す必要はなく、死後にJTI(一般社団法人移住・住みかえ支援機構)がローン残高と同額で家を買い取って精算します。
  • 買取オプション:住宅ローンの残高と同じ金額で家を買い取ってもらえます。不動産市況がどうなっていても、家を手放したときに借金が残るリスクがなくなります。

残価設定月以降に返済額軽減オプションを行使すると、住宅ローンが「新型リバースモーゲージ」に切り替わり、月々の返済額が大幅に下がります。ただし、通常のリバースモーゲージのように最初から金利のみの返済になるわけではなく、2段階で軽減される仕組みです。

具体的には、オプション行使後はまず「残価を引いた元本+利息」の返済を続け、当初の借入から50年が経過すると元本の返済がなくなり、51年目以降は金利のみの支払いになります。元本部分は生きている間は返さなくてよく、死亡時に一括精算する形になります。相続人がローンを引き継がない場合は、JTIがローン残高と同額で家を買い取って精算してくれるので、残債が遺族に残る心配はありません。

仕組みとしては悪くないように見えます。では、何が問題なのでしょうか。

「月々が安くなる」の裏に潜む4つの落とし穴

Aさん夫婦が気づいていなかったのは、この商品に付いてくる「条件」の重さでした。

家(物件・施工業者)の選択肢が狭い

まず、家の選択肢が極端に狭い問題です。この制度を利用するには、JTIが認定した長期優良住宅を、JTIの協賛業者から購入する必要があります。選べる住宅が限られるため、同じ条件の物件と比べて割高になりやすいのです。

金融機関が限られ、金利が高くなるリスクがある

次に、借りられる金融機関も限られます。JTIの指定金融機関しか使えないため、金利が市場相場より高くなる可能性があり、長期的な総返済額が膨らむリスクがあります。

定期点検・維持管理費(メンテナンス)の負担がある

さらに、JTIの残価保証を受けるには、定期点検が義務付けられています。利用条件の一つに「長期メンテナンスプログラムの実施」があり、この維持管理費の存在が、通常のローンよりも負担を重くします。月々の返済が安くなっても、別のコストで家計を圧迫されるケースが少なくありません。

歴史が浅く実績データが少ない・契約が複雑

さらに深刻なのが、データの少なさと契約の複雑さです。登場してまだ数年の金融商品であり、将来どうなるかを示す実績データがほとんどありません。

契約内容が非常に複雑で、一般の方が「これは自分に有利か不利か」を正確に判断するのは、専門的な知識がない限り極めて困難です。金融の世界では、『仕組みの複雑さ』そのものが隠れたリスクになり得ます。内容が難しければ難しいほど、不利な条項を見落とすリスクが高まります。住宅ローンに限った話ではありませんが、「理解できない商品に手は出さない」ことが、資産を守るための鉄則です。

まとめ

Aさん夫婦は今、私と一緒に家計の全体像を見直しています。「月々の返済額だけ聞いて、維持費のことは全然考えていなかった」と夫は苦笑いしました。

不動産価格が高騰しているいま、「借りられるから借りる」「月々払えるから買う」という発想は危険です。住宅購入で本当に大切なのは、月々の返済額ではなく、維持費・金利・将来の選択肢も含めたトータルの総支払額です。「身の丈に合ったマイホーム」という地味な原則が、結局のところ家計を守るうえで効果的なのです。


※残価設定型住宅ローン(新型リバースモーゲージ型)の適用要件、対象物件、将来の買取基準、および金利条件は、取り扱う金融機関や一般社団法人 移住・住みかえ支援機構(JTI)の最新の規定によって細かく異なります。利用を検討される際は、パンフレットや契約条項を入念に確認し、必ず住宅ローンや不動産税務に強いFPや専門窓口へ直接ご相談ください。

執筆・監修:柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,200記事以上の執筆実績あり。

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