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『相続人は自分たちだけ』父の遺産3,300万を分けるはずが?→戸籍確認で判明した事実に、40代兄妹が“青ざめたワケ”

  • 2026.5.22
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出典元:photoAC (※画像はイメージです)

こんにちは、マネーシップス代表 IFAの石坂です。

相続では、「相続人は家族だからわかっている」と考えてしまいがちです。
しかし、実際の相続手続きでは、家族の記憶や普段の関係性だけで相続人を決めることはできません。

戸籍をたどって確認した結果、家族が知らなかった相続人が見つかることもあります。特に注意したいのが、認知された子の存在です。面識がなかったとしても、父親が認知していれば、その子は法律上の相続人になります。

今回は、兄妹2人で相続を進めるつもりだったものの、戸籍確認の途中で認知された子が判明し、遺産分割協議をやり直すことになった事例をもとに、相続人確認の注意点を解説します。

「相続人は兄妹2人だけ」のはずだった

40代のAさん(仮名)は、父親が亡くなったあと、兄と2人で相続手続きを進めようとしていました。母は数年前に亡くなっており、Aさんと兄は「相続人は自分たち兄妹2人だけ」と考えていました。

父は長年、実家で1人暮らしをしていました。大きな借金はなく、財産もある程度把握できていたため、Aさんは「相続で大きく揉めることはないだろう」と思っていたそうです。

父の財産は、自宅不動産が約2,400万円、預貯金が約900万円。合計で約3,300万円ほどでした。

兄は父と同居していた時期があり、今後も実家を管理するつもりでした。そのため、兄が実家を引き継ぎ、Aさんは預貯金を中心に受け取る方向で話し合いが進みます。Aさんとしても、実家を売却するより、兄が管理してくれる方が安心だと考えていました。固定資産税や修繕費の負担についても、兄が引き受ける前提で話がまとまりかけていました。

不動産会社への相談や金融機関への確認も始めており、Aさんは「思ったより早く終わりそう」と感じていたそうです。

ところが、金融機関の相続手続きで、戸籍関係の書類を確認することになり、状況が変わります。Aさんは、父の死亡時の戸籍だけを出せば足りると思っていました。しかし、実際には父の出生から死亡までの連続した戸籍を確認する必要があると説明されました。

そこで、役所で戸籍を取り寄せながら内容を確認していくと、父が過去に別の女性との間の子を認知していたことが判明します。Aさんも兄も、その人の存在を聞いたことはありませんでした。父の生前の話にも、そのような人物は出てこなかったそうです。

しかし、戸籍上で父の子として記載されている以上、その人も相続人になります。Aさんたちは、すでに兄妹2人で財産の分け方を考えていました。しかし、もう1人の相続人を除いたままでは、遺産分割協議を進めることはできません。その結果、兄妹2人だけで進めていた話し合いはいったん止まりました。新たに判明した相続人も含めて、改めて遺産分割の進め方を考える必要が出てきたのです。

Aさんにとって大きかったのは、手続きが遅れたことだけではありません。「父にそのような過去があったのか」という気持ちの整理も必要になりました。さらに、これまで関わりのなかった相手と、財産の分け方について向き合う必要があります。相続は、財産の問題だけでなく、家族関係や感情にも影響する手続きだと実感したそうです。

認知された子も相続人になる

認知とは、婚姻していない男女の間に生まれた子について、父親が法律上の親子関係を認める手続きです。認知されると、その子は父親の相続人になります。

現在は、婚姻中の夫婦の子と、認知された子との間で、法定相続分に差はありません。そのため、今回の事例では、Aさんと兄に加えて、認知された子も相続人になります。父に配偶者がなく、相続人が子ども3人だけであれば、法定相続分はそれぞれ3分の1ずつです。

もちろん、実際の分け方は相続人全員で話し合って決められます。法定相続分どおりに分けなければならない、という意味ではありません(ただし、遺産分割には相続人全員の合意が必要です)。Aさんと兄だけで「実家は兄、預貯金はAさん」と決めていても、もう1人の相続人を除いたままでは手続きを進められません。

相続では、「知らなかった」だけでは済まないことがあります。戸籍上の相続人を確認しないまま進めると、後から大きなやり直しにつながるおそれがあります。

戸籍はどこまで確認する必要があるのか

相続人を確認するには、亡くなった人の現在の戸籍だけでは足りません。原則として、被相続人の出生から死亡までの戸籍をたどる必要があります。

出生から死亡までの戸籍を確認することで、婚姻・離婚・認知・養子縁組・子の有無などを把握できます。途中の戸籍を省略すると、相続人を見落とす可能性があります。

特に、次のようなケースでは注意が必要です。

  • 被相続人に離婚歴がある
  • 前婚の子がいる可能性がある
  • 認知した子がいる可能性がある
  • 養子縁組をしている可能性がある
  • 家族が知らない過去の戸籍異動がある

相続人の確認を後回しにすると、遺産分割協議書を作ったあとに相続人が増えることがあります。その場合、協議書を作り直したり、金融機関や法務局での手続きが止まったりする可能性があります。特に不動産がある場合、相続人の確定ができないと名義変更を進めにくくなります。預貯金についても、金融機関から相続人関係を確認できる戸籍の提出を求められることがあります。

相続手続きは、財産を分ける前に、まず「誰が相続人か」を確定することが大切です。

FP視点で見る、相続人確認は最初に行うべきリスク対策

FPの視点では、相続人確認は単なる書類集めではありません。相続手続きを止めないための、最初のリスク対策です。

相続人を見落としたまま進めると、協議書の作り直し、預貯金の解約遅れ、不動産の名義変更の停滞につながる可能性があります。

相続が発生したら、まず次の点を確認しておきましょう。

  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍を集めて確認する
  • 認知、養子縁組、前婚の子の有無を確認する
  • 相続人全員の合意を得られる形で遺産分割を進める
  • 戸籍の読み取りや相続人への連絡で不安がある場合は、司法書士や弁護士などの専門家に相談する

相続では、財産の分け方を考える前に、相続人を確定することが大切です。

「家族だからわかっている」と思い込まず、戸籍で確認することが、遺産分割のやり直しを防ぐ第一歩になります。


※亡くなった方の戸籍の連続性の確認や、面識のない法定相続人への連絡手続きは、親族関係の複雑さによって実務上の対応が大きく異なります。遺産分割協議の進め方に少しでも不安がある場合は、自己判断でデリケートな交渉を行わず、必ず相続に強い司法書士や弁護士などの専門家へ直接ご相談ください。

執筆・監修:石坂貴史
証券会社IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー・証券外務員)、2級FP技能士、AFP、マネーシップス代表。累計1,200件以上のご相談、金融関連の記事制作、校正・監修を手掛けています。「金融・経済、不動産、保険、相続、税制」の6つの分野が専門。お金の運用やライフプランの相談において、ポートフォリオ理論と行動経済学を基盤にサポートいたします。

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