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宿泊客「間違えて押しちゃったんだよね」1時間の“VOD料金請求”を拒む常連客に、ホテルスタッフがとった対応は?

  • 2026.5.2
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

ホテルのフロントで働いていた頃、常連の男性客Aさんがいました。

利用頻度が高く、売上面ではありがたい存在でした。ですがその一方で、女性スタッフを名指しで指名したり、ちょっとしたことに不満を口にしたりするため、スタッフの間ではよく知られたお客様でもありました。

表向きはにこやかでも、対応する側としては少し身構える相手だったのです。

ある日、Aさんが3泊4日の予定でチェックインに来られました。

フロントに立つなり、「○○ちゃんいないの? チェックイン、彼女にお願いしたいんだけど」と言いました。

対応していたスタッフが、あいにく席を外しているため別のスタッフが承ると伝えると、Aさんは目に見えて不満そうな表情を浮かべました。

フロントでは、特定のスタッフに対応が偏るとほかのお客様をお待たせしてしまうため、こうした指名をそのまま受けないようにしていました。個別の要望に応えるだけでなく、全体の流れを守ることも大切な仕事だったからです。

チェックアウトで見えた本音

数日後の朝、Aさんがチェックアウトに来られました。

フロントは混み合っていましたが、Aさんは後ろに並ぶお客様に「どうぞ、先で大丈夫ですよ」と順番を譲っていました。一見親切ですが、実際はお気に入りの女性スタッフの窓口が空くのを待っていたのです。

スタッフから見れば、その意図はかなり分かりやすいものでした。ようやくそのスタッフが対応すると、Aさんは上機嫌で「やっぱり朝から○○ちゃんだと気分いいね」と明細を受け取りました。

ところが、そこに記載されたVODの利用料金を見た瞬間、表情が変わりました。

「これ、間違えて押しちゃったんだよね。だから外してほしい」と言うのです。

ついさっきまで機嫌よく話していた空気が、そこで一気に変わりました。周囲にいたスタッフも、その変化をすぐに感じ取っていました。

記録はごまかせない

ただ、有料サービスには利用記録が残ります。

確認すると、Aさんは3泊とも1時間ずつしっかり視聴していました。スタッフが「3泊ともご視聴記録がございます」と伝えると、Aさんは「いやいや、間違えて押したんだよ」と繰り返しました。

それでもスタッフは表情を変えず、当ホテルのシステムでは、10分以上の利用は理由を問わず請求対象になると、事実に沿って淡々と案内しました。感情で押し返さず、記録で説明するのが現場では何より大切です。

見えているからこそ、言い方に配慮する

Aさんは無言で支払いを済ませ、足早に帰っていきました。

この出来事で実感したのは、ホテルではお客様が隠しているつもりのことも、記録や状況から自然と見えてしまう場面があるということです。ただ、見えているからといって、それを相手の恥にしてはいけません。

必要なことだけを、事実に基づいて静かに伝える。その言い方にまで気を配ることも、接客の大切な仕事なのだと改めて感じました。


ライター:りえぴん
ホテル・飲食業界で12年勤務。現場経験をもとに執筆し、現在はWebライターとして健康・書評・サービス業分野を中心に記事制作を行う。


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