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「母の口座を解約したいんです…」急いでいる男性→確認すると、発覚した“予想外の目的”。銀行員が違和感を感じたワケ

  • 2026.4.30
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出典:photoAC ※画像はイメージです。

こんにちは。くまえり銀行員です。

今日は、「家族に内緒で手続きをしたい」というご相談から始まった、ある代理来店のエピソードをお話しします。

一見よくあるご相談に見えて、その裏には見過ごせない違和感が潜んでいました。

窓口の内側で、私たちがどのように判断しているのか。少しだけ覗いてみてください。

代理人来店で感じた小さな違和感

その日来店されたのは、あるご高齢のお客様の「ご家族」を名乗る男性でした。

「母の口座を解約したいんです。本人は来られないので、代わりに」

代理手続き自体は珍しくありません。体調不良や高齢など、やむを得ない事情は多くあります。

ただ、その方の言葉には少し引っかかる点がありました。

「急いでいる」と強く繰り返す
・本人の状況説明が曖昧
・書類の準備が一部だけ不自然に整っている

経験上、“急ぎ”と“情報の曖昧さ”が重なるケースは要注意です。ここで安易に手続きを進めるわけにはいきません。

書類と発言の微妙なズレ

必要書類を確認していく中で、さらに違和感は強まりました。提出された委任状には確かに本人の署名がありました。ですが、筆跡と日付の書き方に不自然な点が見られます。

加えて、本人確認に関する質問をすると、男性の回答が微妙に食い違うのです。

例えば、
・生年月日の言い間違い
・最近の取引内容を把握していない
・口座の利用目的について曖昧な説明

どれも決定的な矛盾ではありません。ただ、積み重なると無視できない“ズレ”になります。この段階で、私は一度手続きを止めました。

発覚した“本当の目的”

丁寧に確認を重ねる中で、男性は少しずつ言葉を濁し始めました。
そして最終的に出てきたのは、こうした事情でした。

「実は…家族に知られたくないお金の使い道があって」
つまり、本人の意思を装って口座資金を動かそうとしていたのです。ここで重要なのは、「悪意があるかどうか」ではありません。

銀行として見るのはあくまで
・本人の明確な意思に基づくものか
・正当な手続きか
・不正やトラブルのリスクがないか
この3点です。

たとえ家族であっても、本人の意思確認が取れないまま資金を動かすことはできません。結果として、この手続きはお断りとなりました。

なぜ銀行はここまで厳しいのか

「家族なんだから、そこまでしなくてもいいのでは?」
そう感じる方もいるかもしれません。しかし実際の現場では、以下のようなトラブルが起きています。

・親族間での無断引き出し
・相続前の資金移動による揉め事
・認知機能低下に伴う不正利用

一度資金が動いてしまうと、取り戻すのは極めて困難です。
だからこそ銀行は、“未然防止”に全力を注ぎます。厳しさの裏側には、「お客様自身を守る」という明確な目的があります。

正しい代理手続きを行うためのポイント

では、トラブルを避けるためにはどうすればよいのでしょうか。
実務的な観点から整理すると、ポイントは以下の通りです。

① 本人の意思を明確にする
・委任状は本人が自筆で記入
・内容(何を・どこまで任せるか)を具体的に
② 必要書類を正確に準備する
・本人確認書類(原本)
・代理人の本人確認書類
・銀行指定の書式がある場合はそれを使用
③ 事前に金融機関へ確認する
・手続き内容によって必要書類が異なる
・不備があると再来店になる
④ 「内緒で」は基本的に通らないと理解する
・意思確認ができない手続きは原則不可
・特に解約・高額出金は厳格にチェックされる

※代理手続きの可否や必要書類のルールは、金融機関および手続きの内容によって大きく異なります。来店前に、必ずご自身の取引金融機関へ詳細をお問い合わせください。

「家族だから大丈夫」が一番危ない

今回のケースで印象的だったのは、男性に悪意の自覚が薄かったことです。

「家族のため」「バレなければ問題ない」という認識でした。

ですが、金融の世界ではその感覚が最も危険です。

家族間であっても、手続きはあくまで“法的・形式的に正しいかどうか”で判断されます。このギャップが、窓口でのトラブルや不満につながるのです。

見えないところで守られているもの

窓口で手続きが止められたとき、「融通が利かない」と感じることもあるでしょう。

しかしその判断の裏には、

・将来のトラブル防止
・本人の財産保護
・家族間の争い回避

といった、目に見えないリスク管理があります。少し厳しい言い方をすれば、“スムーズにいかない手続きほど、理由がある”ということです。その理由を知っていただくことで、銀行とのやり取りが少しでも安心で納得のいくものになれば嬉しいです。


ライター:くまえり銀行員
金融機関の窓口業務に携わり、日々さまざまなお客様対応を経験。忙しい日常の中で起こりがちな銀行手続きの行き違いやトラブルを、窓口の内側から見た視点で、読者に寄り添いながら伝えています。「知らなかった」が「なるほど」に変わる瞬間を大切に執筆中。  


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