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【世界初】3400万年前の「エンペラーバタフライ」の貴重な化石を発見

  • 2026.4.9
Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

ひらひらと優雅に宙を舞うチョウは、その美しさとは裏腹に「化石として残りにくい生き物」です。

薄く繊細な翅は分解されやすく、進化の歴史をたどる手がかりは長らく限られてきました。

そんな中、ドイツ・シュトゥットガルト自然史博物館らの国際研究チームが、約3400万〜2800万年前に生きていたチョウの極めて保存状態の良い化石を報告しました。

しかもこの標本は、タテハチョウ科のコムラサキ亜科、通称”エンペラーバタフライ”に明確に属すると特定できる、世界で初めての化石だったのです。

研究の詳細は2026年の古生物学誌『Acta Palaeontologica Polonica』に掲載されています。

目次

  • チョウの進化史を変える「奇跡的な保存状態」
  • 「進化の時計」を合わせる基準点になる発見

チョウの進化史を変える「奇跡的な保存状態」

今回発見された化石は、フランス南部セレストの前期漸新世(約3400万年前〜約2800万年前)の地層から見つかったものです。

1979年に採集されながら長く注目されていませんでしたが、近年の再解析によってその価値が一気に明らかになりました。

この標本の最大の特徴は、その保存状態の良さにあります。

右の翅の大部分と左の翅の広い範囲が残っており、翅脈(しみゃく、翅の網の目構造)眼状紋(がんじょうもん、目のような模様)まではっきり確認できます。

実際の化石の画像がこちら

さらに、頭部や胸部は両側から観察でき、腹部も大部分が保存されていました。

こうした情報量の多さは極めて異例であり、チョウの系統の中でどこに位置するのかを精密に判断することが可能になりました。

その結果、この化石は新属・新種「アパトゥロイデス・モニカエ(Apaturoides monikae)」と命名されました。

そして重要なのは、この種がタテハチョウ科の中でも「コムラサキ亜科(Apaturinae)」に属することが明確に示された点です。

コムラサキ亜科は、英語で通称”エンペラーバタフライ”と呼ばれます。

これまで、このグループに確実に分類できる化石は存在していませんでした。

つまり今回の発見は、チョウの進化史における「空白のピース」を初めて埋めたことになります。

「進化の時計」を合わせる基準点になる発見

チョウの進化時期を推定する方法のひとつに「分子時計」があります。

これはDNAの変化速度から、いつ分岐が起きたかを推定する手法です。

しかし、この方法には「実際の年代を裏付ける化石」が必要です。

今回のように、年代が明確で分類も確実な化石は、進化の時間軸を調整するための重要な基準点になります。

チームによれば、コムラサキ亜科(エンペラーバタフライの仲間)はこれまで、この化石の時代と同じ頃に分岐したと考えられてきました。

ところが今回の発見は、次の2つの可能性を示唆しています。

1つは、このグループの起源が従来の推定よりも古い可能性

もう1つは、現代のコムラサキ亜科が祖先の特徴を長期間ほとんど変えずに維持してきた可能性です。

いずれにしても、この化石はチョウの主要なグループが「いつ、どのように多様化したのか」を理解するための重要な手がかりになります。

太古の森を飛んでいた蝶のイメージ画像/ Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

博物館に眠る「未来の発見」

今回の研究が示しているのは、単なる新種の発見ではありません。

1979年に見つかりながら、長い間見過ごされていた標本が、数十年後に最新技術によって再評価され、進化史を書き換える発見へと変わりました。

研究チームも、化石産地の保護や博物館コレクションの重要性を強調しています。

つまり科学の進歩は、「新しい発見」だけでなく、「すでに存在しているものを見直すこと」からも生まれるのです。

もしかすると今この瞬間も、世界のどこかの標本庫に、進化の常識を覆す“次の化石”が静かに眠っているのかもしれません。

参考文献

This Wonderfully Well-Preserved Fossil From 34 Million Years Ago Shows The Earliest Emperor Butterfly
https://www.iflscience.com/this-wonderfully-well-preserved-fossil-from-34-million-years-ago-shows-the-earliest-emperor-butterfly-83066

Europe’s hidden majesty: researchers present first fossilised “emperor” butterfly
https://www.naturkundemuseum-bw.de/en/press/detailansicht/europas-verborgene-pracht-forschende-praesentieren-erstmals-fossilen-schillerfalter

元論文

Exceptionally preserved Oligocene emperor butterfly from France provides a new calibration point for Apaturinae evolution
https://doi.org/10.4202/app.01332.2026

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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