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私の春を始めるために、秋田を歩く。思いつき、ひとり旅1。 写真と文:祷 キララ (女優) #1

  • 2026.4.6

2023年春、私は『Pachinko パチンコ』というドラマのシーズン2の撮影で、2か月近くカナダのトロントにいた。 4月末、トロントでの撮影を終えて日本へ帰国することになり、あることに気がついた。

「もしかして。この春、桜見れない?」

寒かったトロントでは冬がまだ終わりきっておらず、少しだけある桜の木も花を咲かせていなかった。いっぽう、日本はまもなく初夏である。私はちょうど、春のあわいを逃そうとしていたのだ。

生まれてこの方、花見をしない春はあった。でも、桜の花を見ない春は一度もなかった。2000年3月30日、桜咲き誇る春の日本に生まれた私である。

「桜が、見たい…!」
「桜を見て、ちゃんと春を経たい!」
でもどうしようもない!

……いや、
ふとひらめいた。

日本は縦に長いじゃないか。

北の方の桜は、どうなってるんだろう!

必死になって調べてみると、これから見頃を迎える桜の名所は、案外たくさん見つかった。

行くしかない。

秋田にある日本国花苑というところに狙いを定めた私は、さっそく宿を探しはじめた。

私の春は、私が始めて、私が終える!

時差ボケを乗り越えて、急ぎ足で秋田へ向かった。

JR秋田駅のなまはげ。

来ちゃった……! 初めて降り立つ秋田駅。

ひんやりとした柔らかな風に吹かれて、春の予感に胸が高鳴る。どうしようもないように思えることも、意外となんとかできたりするんだ。しかもなんだか粋な旅じゃないの。自由じゃないの。素敵じゃないの!

秋田名物の稲庭うどんでお腹を満たし、ホテルへ荷物を置いたらば、いざ桜。

JR秋田駅から青森行きの電車に乗って、井川さくら駅で下車。見知らぬ土地をずんずん歩く。土の匂い、鳥の声、空の広さ、太陽の眩しさ。ひとつひとつに心が動いた。全身で今をキャッチする。

出典 andpremium.jp

歩くこと約20分、ついに日本国花苑へ到着。

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咲いている!

桜が、咲いている。

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広々とした公園の中をじっくりと歩き回ったあと、丘の上に座って桜を眺めた。心は不思議なくらい静かだった。夕日があたりをオレンジに染めてゆく。

私の春よ、こんにちは。

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秋田駅に戻る頃には真っ暗で、お弁当とご当地ビールを購入した私は、ほくほくとした気分で1日を終えた。

翌日、帰る前に岩手との県境付近にある玉川温泉へ寄ってみることにした。電車とバスを乗り継いで、山奥にある温泉へ。

バスに揺られてうつらうつら。山が深くなってきたころ、窓の外にあらわれた光景にびっくりして目が覚めた。

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エメラルドグリーンの湖の中から、新緑の木々が伸びている。現実? 幻想? なんだこれは。わからない! でも、美しい。

調べてみると秋扇湖(しゅうせんこ)という湖で、玉川温泉のほうから強い酸性の水が流れてくるために水がエメラルドに見えるのだそう。春になると、雪解けの水が大量に流れ込み、森の一部がこうして沈む。夏になると水位はもとに戻るという。私は偶然にも、この山の自然が織りなす神秘的な春の訪れを目撃していた。

ちょっと温泉にでも寄ってみよう。そんな小さな選択が、心揺さぶる未来に繋がる。

こんな奇跡が時々起こる、思いつきの旅が大好きだ。

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酸性のお湯でピリピリと身体をあたためて、湯気と轟音に包まれながらまたバスへ。帰りは盛岡駅から。

新幹線に乗る前に、じゃじゃ麺を食べたいなと思ったけれど、どこもすごい行列で諦めた。

これもまた一興! 私の春よ、さようなら!

女優 祷 キララ

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いのり・きらら/2000年3月30日生まれ、大阪府出身。2010年に映画『堀川中立売』で俳優デビューし、『Dressing Up』(2012年)で第14回 TAMA NEW WAVEベスト女優賞を受賞。『サマーフィルムにのって』(2021年)、『HAPPYEND』(2024年)など、話題作で新鮮な存在感を放ち、『恋脳Experiment』(2025)では主演を務めた。2026年1月期の日本テレビ系ドラマ「冬のなんかさ、春のなんかね」や、テレビ東京系ドラマ「俺たちバッドバーバーズ」などの話題作への出演が続いている。また、同年2月に、映画『パンジーな私にハッピーエンドを。』、玉田真也監督の新作公演、玉田企画「光る」の出演情報も解禁された。

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