1. トップ
  2. 朝ドラ【風、薫る】第1週で気になる“意外な存在”とは?占い師の予言と伏線を読み解く

朝ドラ【風、薫る】第1週で気になる“意外な存在”とは?占い師の予言と伏線を読み解く

  • 2026.4.6

朝ドラ【風、薫る】第1週で気になる“意外な存在”とは?占い師の予言と伏線を読み解く

1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。近代看護界の先駆者となった2人の女性を主役とする物語。「風、薫る」のレビューで、より深く、朝ドラの世界へ! ※ネタバレにご注意ください

主人公の父、あっという間の退場である

<主人公はそれぞれに生きづらさを抱えた二人の女性。当時まだ知られていなかった看護の世界に飛び込み、傷ついた人々を守るために奔走し、時に強き者と戦う――>(NHK朝ドラ公式より)

『明治のナイチンゲール 大関和物語』(田中ひかる・中央公論新社)を原案とし、激動の明治時代を駆け抜けた二人のナースを、見上愛・上坂樹里のダブル主人公として描くNHK連続テレビ小説『風、薫る』の放送がスタートした。

物語は明治期に活躍した二人のトレインドナース。大関和・鈴木雅をモチーフとしたもの。作品内のふたりの主人公はどのように出会い、ともに活躍していくのか。その描かれ方に期待が高まる。

第1週「翼と刀」は、栃木県の那須を舞台に幕を開ける。見上愛演じる一人目の主人公・一ノ瀬りんは、明治維新以後は帰農して暮らす元家老の父・信右衛門(北村一輝)、母・美津(水野美紀)の長女として明るくのびのびとした雰囲気で登場した。

冒頭から印象的なのが、那須の緑豊かで美しい田園風景と人々の眩しいほどの明るさである。この風光明媚な雰囲気と二人の主人公の交流といったイメージは、Mrs.GREEN APPLEによる主題歌『風と町』とそこに流れる映像にも、このドラマがどういった性質のものであるかが凝縮されているのではないだろうか。1羽の弱った小鳥が二人に手をとられ、やがて元気に大空を羽ばたいていく。そこに前々作『あんぱん』での作曲家・いせたくや役の好演が今も印象に残る大森元貴の歌声とともに、ポジティブな気分で作品世界に誘ってくれる。

そんなふうに明るい雰囲気で幕を開けたドラマではあるが、当時の日本は、感染症のコレラ(コロリ)が猛威を奮っており、効果的な治療法も模索中といった時期であった。りんの暮らす村でも感染者の家には「コロリ」と書かれた札が貼られ村八分状態にされるという状況だ。感染症の対策と考えればその拡大を食い止める手段としては〝村八分〟とすることはひとつの正解であるかもしれないが、そのコミュニティからの隔絶、そしてその看病は貧しき者がつとめるという構図には驚く。

りんの幼馴染の虎太郎(小林虎之介)の母が感染してしまうが、苦しむ虎太郎に「村八分にされるから」と手を差し伸べることもできず、どうすることもできないままその仲まで引き裂かれてしまうような姿に、症状と並ぶ村社会の大変さが伝わる。虎太郎の手を握れなかったことを「間違えた」とする感覚。感染自体は仕方ないことかもしれないのに、感染者の肩身が狭くなるリアルさは、コロナ禍の通過後ならではの人と人とのデリケートな距離感だ。

そんななか、父の信右衛門もコロリに感染してしまう。家族を守るため自ら納屋に隔離し、感染を防ごうとする切迫感は、ここまで描かれてきた、那須弁による優しい雰囲気の中にも元家老の芯が通っているような父の性格が印象づけられたからこそ強く響いてくる。虎太郎に続き、父親の手を取ることもできず、戸越しに折り鶴を届けたり歌を歌うなど可能な範囲での元気を届ける。しかし、思いも虚しく信右衛門はほどなく息を引き取る。

「また間違えた。また間違えた……」

朝ドラの父親像というものは、厳格だったり優しく見守る存在だったり、主人公の人生を波乱に導いたりと、時に作品の雰囲気を左右することもある存在だ。前作の主人公の父親・司之介(岡部たかし)は大借金で主人公一家の人生を大きく変えてしまったが、憎めない呑気さを保ったままなんだかんだ最後まで出演し、作品のムードメーカーであり続けたのとは対照的な、あっという間の退場である。

納戸の扉を開け、すでに冷たくなった父の手をここで握りながら、りんは再び「間違えた」と言う。「間違えた」という後悔としてとらえる気持ち、これがこの先のりんが生きる道を開く大きな動機となっていくのだろう。

占い師の存在にも注目していきたい

さて、もう一人の主人公・大家直美(上坂樹里)はといえば、東京にいた。身寄りもなく教会を転々としながら育ち、マッチ工場で働きながら一人で貧しい暮らしを送っている。コロリ前の穏やかな那須での暮らしぶりを見せてきたりんとは対照的な存在だ。教会での生活で身についた英語力をいかし、アメリカへ進出し自由を獲得しようという野心を秘めた性質が印象的である。

そんな直美を、少し違った角度から導くような存在となっているのが、本作の語りもつとめる占い師(研ナオコ)の存在だ。心から笑い合える人と出会うことになると言われるが、すさんだ気持ちのままの直美にはにわかに信じられない。

視聴者視点ではいずれそのような存在に出会うであろうことは分かっているわけだが、この二人の主人公がどう出会い、そして「心から」笑うことができるような存在になっていくのか、それがこの先の大きな見どころとなっていくのだろう。そういう意味でも、この先もさまざまな場面で関わることになりそうな占い師の存在にも注目していきたい。

「生きろ。お前はきっと、優しい風をおこせる」

りんへ伝えた信右衛門の最後の言葉が強く響く。人が「生きる」という意味、そしてその重みは、これからのりんの進む道として強く刻まれたはずだ。自らが生き、そして誰かを生かすためにおこすべき「優しい風」。りんはその言葉通りの風を吹かせることはできるだろうか。直美が心から笑える日はいつ訪れるだろうか。まずは二人のそれぞれの成長、そして運命となる出会いに期待したい。

元記事で読む
の記事をもっとみる