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「重い星ほどブラックホールになりやすい」は違った――常識を裏切る45倍の壁を観測

  • 2026.4.3
「重い星ほどブラックホールになりやすい」は違った――常識を裏切る45倍の壁を観測
「重い星ほどブラックホールになりやすい」は違った――常識を裏切る45倍の壁を観測 / Credit:Canva

私たちは重ければ重い星ほど、死ねば重いブラックホールになると考えがちです。

しかしオーストラリアのモナシュ大学(Monash University)などで行われた国際研究は、そういった単純な理解が単純すぎることを示し、「極端に重い星は、場合によってはブラックホールにすらなれない」ことが示唆されました。

具体的には、太陽質量およそ45倍以上のブラックホールは星の死によって作られたものではなく、ブラックホール同士の合体でできた可能性が高いことが示唆されました。

なぜ重すぎる星は、ブラックホールになれないのでしょうか?

研究内容の詳細は2026年4月1日に『Nature』に発表されました。

目次

  • 「重い星が死ぬとブラックホールになる」は正しいのか?
  • 太陽の45倍以上の重さのブラックホールは「星の死」で作られたわけではないようだ
  • ブラックホールから星の内部を読む時代へ

「重い星が死ぬとブラックホールになる」は正しいのか?

「重い星が死ぬとブラックホールになる」は正しいのか?
「重い星が死ぬとブラックホールになる」は正しいのか? / Credit:Canva

夜空を見上げると、たくさんの星が輝いていますが、全ての星には寿命があります。

星は基本的に水素という燃料を核融合で燃やしながら、そのエネルギーで輝き続けています。

このエネルギーが星の内側から外側に向かって押す力を生み出しています。

この内から外に向けた圧力あるからこそ、星は自分の重さ(重力)に負けてペシャンコに押しつぶされずに済んでいるのです。

しかし燃料が枯渇すると、星は死に向かって大きな変化を起こします。

たとえば私たちの太陽くらいの星は、星はゆっくりと外側をふくらませて「赤色巨星」になります。

その後、外側のガスを少しずつ宇宙へ放出し、中心だけが残って「白色矮星」という小さくて非常に密度の高い天体になります。

太陽の重力は宇宙の中では「ほどほどの強さ」でしかないため、最終的に外側の物質を重力で引き留めきれなくなるからです。

ところが、宇宙には太陽よりずっと強い重力を持つ星が存在します。

このような重い星で使える燃料がなくなると、内側から支えるエネルギーが減ってしまい、星は自分自身の重力で急激につぶれはじめます。

そして圧力が物質世界の抗える反発の限界を超えると、空間に穴が開いたようなブラックホールが生まれることになります。

そのため直感的には、星が重ければ重いほど、死後にはより重たいブラックホールが出現すると思いがちです。

実際、既存の理論では一般に太陽質量の20~40倍前後の星はブラックホールを作りやすいと考えられています。

しかし宇宙にはさらに超重量級の星も存在します。

天文学者たちはそんな、「超重い星」について以前から不思議な理論を唱えてきました。

それはものすごく重い星は「ブラックホールにすらなれないかもしれない」ということです。

しかし、どうして重すぎるとブラックホールになれない星があるのでしょうか?

結論から言えば「超重い星が起こす超新星爆発が激しくなりすぎて、ブラックホールの芯となる高密度領域すら消し飛んでしまう場合があるから」です。

鍵となるのは「重すぎる星の内部が熱すぎること」です。重すぎる星の中心部は超高温になると、これまで星の内部で光を作り出していた「光子(こうし)」という粒子が、エネルギーを使って「電子」と「陽電子」のペアに変化し始めるのです。
アインシュタインの相対性理論では「質量はエネルギーの一形態」であることが示されています。
そのため十分に大きなエネルギーがあれば、質量を持つ「電子」と「陽電子」対生成という質量変化イベントが起こり得るのです。高エネルギーの光は、十分に高温な環境では“ただの光”としてだけでなく、そのエネルギーが質量をもつ粒子対としても現れるわけです。
これは星にとって重大なトラブルです。
なぜなら、光子が電子と陽電子に変わると、これまで星を内側から支えていた光の圧力が弱まり、中心部が急激に自分の重力で縮みはじめるからです。ただし、そこでそのまま静かにブラックホールになるわけではありません。中心部が一気につぶれることで温度と密度がさらに跳ね上がると、今度は星の内部で酸素が爆発的に燃え、巨大なエネルギーが一瞬で放出されます。そのエネルギーが、いわば落ち込みかけた星の内部を一気に押し返し、反発する形で巨大な爆発を起こしてしまいます。
これが、「対不安定性超新星」と呼ばれる特別な現象です。
爆発と言うと内部から外側に一直線にいくものと思いがちですが、今回の対不安定性超新星では、このように外側の落ち込みが起こると同時に、内側でゴムボールのように反発する力が作られ、内側の圧力で外側が吹き飛ぶことで起こるのです。特に「対不安定性超新星」の爆発は普通の超新星爆発よりもはるかに強力で、星の中心部分だけではなく、星のほとんど全部を一気に吹き飛ばしてあたりに残骸を拡散させてしまう場合があります。すると、ブラックホールを作るために必要な高密度の芯の部分すらなくなってしまうのです。

既存の理論では、初期質量が太陽のおよそ100倍から260倍ものとても巨大な星が、この特別な運命を迎える可能性があり、結果として太陽の50倍〜130倍程度の質量を持ったブラックホールは星の死によってできにくくなると考えられていました。

つまりこの理論が本当に正しいとすると、宇宙には特定の重さのブラックホールが非常にできにくい、「空白地帯」が存在することになります。

しかし現実には、そのような重さの空白地帯は明白には見えませんでした。

というのも、ブラックホールは一度できたあとも、別のブラックホールと合体することでさらに重くなり、その空白をあとから埋めてしまう可能性があるからです。

そのため、長年、このブラックホールの空白地帯は本当にあるのか、なかなかはっきりとは分かりませんでした。

初期の重力波観測データでも、一見すると45太陽質量付近から上でブラックホールが減っているように見えましたが、その後さらに重いブラックホールが発見され、話は一層複雑になったのです。

ところが今回、研究チームは新たな視点でデータを見直し、この難問に新しい突破口を見つけることに成功しました。

一体どのようにして、研究チームはブラックホールの空白地帯が本当にあるのかを確かめ、それが私たちの宇宙にどんな新しい事実を教えてくれるのでしょうか?

太陽の45倍以上の重さのブラックホールは「星の死」で作られたわけではないようだ

太陽の45倍以上の重さのブラックホールは「星の死」で作られたわけではないようだ
太陽の45倍以上の重さのブラックホールは「星の死」で作られたわけではないようだ / もともと二連ブラックホールだったものが衝突した時の重力波を観測することで、小さなブラックホールの質量を予測することができます。Credit:Canva

どうやってブラックホールができない場合を探したのでしょうか?

ここで鍵となるのが「連星ブラックホール」という、2つがペアになったブラックホールの「軽いほう」でした。

なぜ重いほうではなく、軽いほうに注目する必要があったのでしょうか?

それは先に述べたように、重い方は既に合体済みの可能性があるからです。

それに対して、軽いほうのブラックホールは、そのような合体後ではなく、星の死によって直接誕生したブラックホールである可能性が比較的高くなります。

似た話は、太陽系内の惑星にも言えます。
太陽系内の惑星も、小さな原始惑星どうしが何度もぶつかり合って大きくなりました。
たとえば地球や金星は、いくつもの原始惑星が関わるような、何度もの合体を経て現在の姿になったと考えられています。
一方で小さな水星や火星は、大規模な合体の回数が比較的少なく、原始惑星の生き残りに近いのではないかとの説もあります。
(※個数においては現在でも諸説あります)

同様に研究者たちは軽いほうの質量に注目することで、より星の死と直接結びついたブラックホールの重さを調べていきました。

その結果、非常にはっきりした特徴が見えてきました。

まず、重いほうのブラックホールの質量分布を見ると、太陽の約45倍から120倍くらいまで、特に途切れず連続的に存在しているように見えます。

ところが、軽いほうのブラックホールだけに注目すると、その分布に大きな“空白”が現れたのです。

具体的には、太陽質量のおよそ45倍あたりを下端として、そこから100倍以上の領域まで、ブラックホールがほとんど見つからない帯が存在していました。

(※既存の理論では単一の星の死から太陽質量の50倍のブラックホールができないとされていましたが、観測データはもう少し軽い太陽質量の45倍のブラックホールでもできにくいことがわかりました)

さらに重要なのは、この「空白」が偶然ではないことです。

研究チームは、「ギャップが存在しない」と仮定したモデルと、「ギャップがある」と仮定したモデルを比べましたが、その結果、ギャップを含むモデルのほうが統計的によりデータに合っていることが示されました。

つまりこの空白は、単なる観測の偏りではなく、実際に宇宙に存在する構造である可能性が高いのです。

ここでさらに面白い証拠が加わります。

それが「スピン」、つまりブラックホールの回転の情報です。

ブラックホールはただの重い塊ではなく、コマのように回転しています。

研究では、この回転の分布にも注目したところ、太陽質量45倍あたりを境に、ブラックホールのスピンの性質が変わる兆候が見つかりました。

これはとても意味深です。

なぜなら、ブラックホール同士が合体してできた“二世代目”のブラックホールは、合体の影響で比較的強く回転する傾向があるからです。

つまり、「重いブラックホールほど回転の性質が変わる」という観測結果は、「そのあたりから上は、単一の星から直接生まれたものではなく、合体でできたものが増えている」という解釈と自然につながるのです。

こうして質量分布とスピン分布という、まったく異なる2つの観測結果が、同じストーリーを指し示しました。

研究者たちはこの点について「太陽の45倍以上の質量を持つブラックホールは、極めて質量の大きい死にゆく星の崩壊によってではなく、過去のブラックホールの合体によって生じたものであることを確認した」と述べています。

ブラックホールから星の内部を読む時代へ

ブラックホールから星の内部を読む時代へ
ブラックホールから星の内部を読む時代へ / Credit:Canva

今回の研究により、星の死によって太陽質量45倍以上のブラックホールはできにくいという、理論上の予測が観測によって確からしいことがわかりました。

この空白の存在を確かめることで、私たちはさらに深いことを知ることができます。

それは星がどのように生まれ、どのように進化し、どのような最期を迎えるか、という壮大な物語です。

星は誕生から死までの長い一生の中で、中心部でさまざまな元素を作り出しながら輝き続けています。

とくに重い星では、中心部で炭素や酸素のような私たちにも馴染み深い元素が次々に作られていきます。

実はこの「炭素」や「酸素」などの元素を生み出す核反応の仕組みや強さは、これまで主に理論や実験室でのデータに頼ってきました。

しかし、今回発見された禁制領域の「空白」の位置、とくに下端の位置は、実際の星の内部で元素がどのくらいの強さで反応しているのかを間接的に教えてくれる、重要な情報源になるのです。

具体的には、研究チームはこの質量ギャップの位置から、星の中心でヘリウムが炭素と反応して酸素を作る反応(専門的には炭素とヘリウムが融合して酸素になる反応)の強さを絞り込むことができる可能性を指摘しています。

これは驚くべきことです。

なぜなら、ブラックホールの質量を詳しく調べることで、私たちは星の中心の核反応という、まさに宇宙で最も謎めいた現象にまで「逆探知」できるからです。

ただ研究者はこの解釈が絶対とは言い切れないことも認めています。

実際に観測されたのは、「ブラックホールが少なくなっている空白」であり、「対不安定性超新星によって星が吹き飛ばされたこと」そのものを直接見たわけではないからです。

しかし、この研究の意義は非常に大きいです。

これまで私たちはつい、星が重ければ重いほど最後に巨大なブラックホールを残すと考えがちでしたが、重すぎるとブラックホールにすらならない場合がある、という可能性をはっきりと示したからです。

今後、さらにブラックホールの合体が観測されれば、この禁制領域の存在がどれほど確かなのか、またどのような仕組みが本当に働いているのかが、もっと明らかになるでしょう。

参考文献

New study finds evidence of cosmic explosions with missing black holes
https://www.artsci.utoronto.ca/news/new-study-finds-evidence-cosmic-explosions-missing-black-holes

元論文

Evidence of the pair-instability gap from black-hole masses
https://doi.org/10.1038/s41586-026-10359-0

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部

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