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ひと箱・月320円…家賃急騰時代にトランクルームにモノを預けて「コンパクト&低家賃」な部屋に住む損得勘定

  • 2026.3.31

家賃や不動産の上昇が続く中、寺田倉庫の宅配型トランクルーム「ミニクラ」が毎年120%の成長率で伸び続けている。トランクルームにモノを預けてコンパクトな家に住むのは、損得勘定としてありなのだろうか。生活史研究家の阿古真理さんが取材した――。

9割の部屋が収納スペース不足

引っ越しや巣立ちが多い春は、片づけや生活を見直すのによい季節とも言える。不動産価格の上昇が続く今、特に都会では、理想より狭い部屋で収納スペース不足の悩みを抱える人が多いのではないだろうか。

4半世紀にわたり、「捨てる」片づけの旋風が吹き荒れてきたが、誰もが捨ててすっきり暮らせるわけではない。ふだんは使わないが大切なモノもあれば、捨てることや片づけが苦手な人もいる。

宅配型トランクルーム ミニクラの創業メンバーである寺田倉庫MINIKURAグループ・グループリーダーの浅見開さん
宅配型トランクルーム ミニクラの創業メンバーである寺田倉庫MINIKURAグループ・グループリーダーの浅見開さん

寺田倉庫が2026年2月3~4日、東京23区内の狭小物件に住む20~60代の男女500人に聞いたインターネット調査によると、9割以上の人が、狭さゆえにモノの購入を断念している。また、部屋を片づけようと買った収納グッズや家具で、かえって居住スペースが狭くなったと感じたことがある人も、9割を超える結果が出ている。

そうした人たちに収納を提供するトランクルームが増加しているが、その中で最近注目を集めているのが、宅配型のサービスだ。月額料金が決まったサブスクリプションサービスで、箱単位で割安に預けられる、出し入れに出向かなくてよい点が特徴だ。

2012年に「minikura(以下、ミニクラ)」を始めた寺田倉庫は、宅配型トランクルームのパイオニアでもある。東京・天王洲の同社で、ミニクラの立ち上げメンバーでもある浅見開さんに、サービスの利用実態と背景を聞いた。

ひと箱の保管料は月320円から

まず、ミニクラの仕組みを説明しよう。インターネットで申し込むと、宅配便で段ボール箱が届く。その中に預けたいものを詰め、宅配便で送り返すだけで作業は完了。送料の負担はない。

ミニクラの仕組みは、1 宅配便で届いた段ボールに預けたいものを詰める→2 梱包が終わったら →3 宅配便で送り返す →4 倉庫でスタッフが1点ずつ預けたものの撮影をする(「MONOプラン」レギュラーBOX 写真つきプランの場合)
ミニクラの仕組みは、1 宅配便で届いた段ボールに預けたいものを詰める→2 梱包が終わったら →3 宅配便で送り返す →4 倉庫でスタッフが1点ずつ預けたものの撮影をする(「MONOプラン」レギュラーBOX 写真つきプランの場合)

「MONOプラン」のレギュラーBOXの場合、箱の幅・奥行・高さはそれぞれ38センチメートル。ミニクラの倉庫でスタッフが1点ずつ撮影し、パソコンやスマートフォンで確認できる写真つきで月額380円。中を開けて欲しくない人や割安なプランがよい人には、撮影なしの月額320円からの「HAKOプラン」もある。

MONOプランで必要に応じてモノを取り出す場合は1点あたり880円(注)。箱ごとの取り出しなら、1年以内であればボックスサイズに応じて1100円~1320円、1年を超えてからは箱ごと取り出す場合は無料。衣類に特化しハンガーで吊るして保管するクローゼットプランなどもある。

さらに2025年10月2日から、ベビーカーやスーツケース、大型ぬいぐるみ、ゴルフバックといった大物を1点単位で預けられる大型プランも月額880円から開始した。

(注)沖縄エリアへ配送する場合、全国一律配送料+1梱包あたり手数料1000円が発生

出向かずに使える宅配型トランクルーム

寺田倉庫はトランクルームのサービスでも、1975年に開始したパイオニアである。個人の家財を預かるほか、法人向けに書類や映像・音楽コンテンツの記録メディアを扱う。アート作品やワイン、建築模型の保管も手掛け、作家やコレクターから預かる作品をはじめとする現代アートと建築を紹介するWHAT MUSEUMを2020年、天王洲で開業した。

ミニクラ利用者には、貴重な資料を管理してきた実績をもとに「寺田倉庫だから」と選ぶ人も多いという。実際、預けるとなると、紛失や損傷のリスクがある。外気にさらされた倉庫では、高温多湿な夏に衣類にカビが生える、書籍が膨張するといった心配もある。

段ボールは温度・湿度を一定に保った環境下で保管される
寺田倉庫のミニクラ用の倉庫
段ボールは温度・湿度を一定に保った環境下で保管される
段ボールは温度・湿度を一定に保った環境下で保管される

貴重な家財を預ける場合は24時間365日、温度や湿度を一定に保つトランクルームでの保管が望ましい。自宅でも、「閉め切ったクローゼットだと、夏場は湿度が80%を超える場合があります」と浅見さんは話す。

2012年にミニクラを始めたのは、トランクルームの競合が増え価格競争が活発化していたことに加え、個人向けにITを活用した新しい倉庫のサービスができないか検討していたからだ。

トランクルームは一定の広さを確保して自由にモノを入れることができ、自分の都合に合わせて出し入れできる点が魅力だが、逆に言えば自ら足を運ばなければならず、重いモノやかさばるモノを運ぶのが大変といった側面もある。自宅に居たまま預けることができるミニクラは、ハードルを下げるためにできるだけ料金を低く設定し、スタートさせた。

送料を別にしないことも、1点ずつ撮影するのも手間とコストがかかるため、「当初は今ほど送料がかからなかったとはいえ、黒字化するには時間がかかりました」と浅見さん。

毎年120%で伸び続けている理由

近年トランクルーム市場の伸びは著しいと言われるが、成長率は年110パーセントほど。そのうち数パーセント程度を占めるに過ぎない宅配型トランクルームは、市場がまだ小さいこともあり、ミニクラの場合で年平均120パーセント程度も伸びている。特に巣ごもり需要の影響が大きかった2020年と2021年は、150パーセントも伸びた。

預かっている家財は、衣類やフィギュアといった趣味のモノ、書籍などが多い。「運ぶ途中で割れるリスクがある食器は、あまりおすすめしていません。また、お金や有価証券は預け入れできません」と浅見さん。

サービスの平均継続年数は3年で、平均保管箱数は11箱。どちらも徐々に伸びているという。預け入れや取り出しの動きは、コートなどの季節衣類が多いそうだ。

寺田倉庫は定期的にユーザーアンケートを取っている。その中に出てくる利用者の声として多いのは、「部屋が片づいた」が6割を占めるほか、「預けたことで気持ちがすっきりしました」という声も2割ほどある。

トランクルームを使用する2つのメリット

トランクルームを使うメリットは、大きく2つ考えられる。1つは住居費を抑えられること。住まいを購入する場合は、広くすればその分かかるコストが増える。賃貸住宅なら、首都圏の場合は2年に一度、家賃相当額の更新料がかかる。同じ地域で同じ築年数なら広いほうが家賃は高くなる分更新料も高くなる。しかし、トランクルームには更新料がかからない。

また、不動産価格が上昇している近年、新築住宅はより狭くなる傾向があり、広い家を購入することは難しくなってきている。賃貸住宅の場合、仮住まいを前提に供給されてきたこともあり、広い家ほど供給が少ない。

つまり、都会暮らしの場合、十分な収納を確保できる家に住むこと自体が困難になってきたと言える。ざっくりとでよいので、ふだん使わないが持っておきたいモノが占める面積と、不動産価格、トランクルームにかかるコストを計算し、どちらが得かシミュレーションしてみるとよいだろう。

宅配型トランクルームならではの理由が、2つ目。写真つきプランにすれば、自分が何を預けているのか明確になることだ。管理が苦手な人は、モノが多くなればなるほど自宅で必要なモノを見つけるのは困難になる。

マイページから預けたものを検索する(写真つきプランの場合)
マイページから預けたものを検索する(写真つきプランの場合)

しかし、ミニクラなら簡単に検索ができるという点で、管理はラクだ。自分がどのような家財を持っているのか、預けたモノに関しては一目瞭然となる。ただ、自宅なら見つければすぐに手にできるが、ミニクラは1日2日のタイムラグが生じるので、その点について考慮する必要はあるだろう。

「捨てる」でも「残す」でもない、第三の選択肢

ミニクラでは2023年10月から、寺田倉庫に所属する整理収納アドバイザーが訪問し片づけを手伝う「お片付けサービス」を始めたが、「第三者がパッと見て何かがなくなったとわかるほど大きな変化はないこともあるのですが、体験の満足度はめちゃくちゃ高い。皆さん、『いきなり生活が整いました』と言ってくださいます」と浅見さん。

当面の間使わないものを整理してミニクラに3箱預けた(右)場合の家族のクローゼットbefore(左)とafter(中)
当面の間使わないものを整理してミニクラに3箱預けた(右)場合の家族のクローゼットbefore(左)とafter(中)

片づけには、実際にスペースが生まれる以前に精神的にすっきりする側面がある。片づける行為が気持ちの整理につながり、モノとは直接関係ないが、人生の展望まで開ける場合が往々にしてある。とはいえ、捨てるのは勇気が必要だ。浅見さんは「捨てるか残すかの間に『預ける』を選択肢として加えて欲しい」と話す。

迷っていたモノを預け、それがなくても生活できる自分を発見すれば、手放す選択肢も出てくる。ミニクラはYahoo!オークションと提携しており、ミニクラからアカウントを連携させてオークションに出すこともできる。

“ふだん使わないモノ”の置き場所

さらに2024年1月には寄付オプションも開始。寄付された預かり品は、寺田倉庫の本社近くで開催される天王洲キャナルフェスにおいて、年に1回ミニクラのスタッフ総出で「minikuraバザー」として販売。この際の売り上げはすべて、認定NPO法人全国子ども食堂支援センター・むすびえに寄付している。

2025年に行われた「minikuraバザー」。寄付された品を販売し、売り上げはすべて「子ども食堂」を運営する「むすびえ」に寄贈される。
2025年に行われた「minikuraバザー」。寄付された品を販売し、売り上げはすべて「子ども食堂」を運営する「むすびえ」に寄贈される。

モノが多い悩みは現代人につきものだが、必要最小限のモノで暮らせる人はそう多くない。減らすには限界がある。しかし生活コストが上がる中、願ったとおりの広さを確保しづらい人はますます増えている。

日常的に使える面積は狭くなる、あるいは広くする分住居費は割高になるが、ふだん使わないモノも手元に置いておく安心感や、いざ必要になったときにすぐに手にできる利便性を取るのか。あるいは、必要なモノが1日2日待たないと手に入らずコストはかかるが、ふだん使わないモノは宅配型トランクルームに預けてしまい、その分住居費が割安になり管理がラクになる暮らしを手に入れるのか。

住居費と保管料を天秤にかけ、ふだん使わないモノをどこまで家に置く必要性があるのか、考えることが必要な時代になってきている。

阿古 真理(あこ・まり)
生活史研究家
1968年生まれ。兵庫県出身。くらし文化研究所主宰。食のトレンドと生活史、ジェンダー、写真などのジャンルで執筆。著書に『母と娘はなぜ対立するのか』『昭和育ちのおいしい記憶』『昭和の洋食 平成のカフェ飯』『「和食」って何?』(以上、筑摩書房)、『小林カツ代と栗原はるみ』『料理は女の義務ですか』(以上、新潮社)、『パクチーとアジア飯』(中央公論新社)、『なぜ日本のフランスパンは世界一になったのか』(NHK出版)、『平成・令和食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)、『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた。』(幻冬舎)などがある。

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