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「風の時代」の言葉を信じて100万円を失った…。笑顔と共感で忍び寄る投資コミュニティの罠を描いた実録詐欺被害コミックエッセイ【書評】

  • 2026.3.30

【漫画】本編を読む

「風の時代」という言葉をご存じだろうか。財産や肩書などの物質的なものではなく、情報や知識、精神性など目には見えないものに価値が置かれる時代への転換を示す言葉だ。『100万円、預けた先は“詐欺”でした。』(大久保ヒロミ)は、まさにこの「新しい時代の空気」に背中を押され、投資ブームの陰に潜む罠に足を踏み入れてしまった著者の実録コミックエッセイだ。

物語は、著者が知人から投資の話を持ちかけられることから始まる。「これからは風の時代」「あなたの仕事に役立つから」という、前向きで魅力的な言葉に誘われ、最初は30万円から投資をスタート。こうして、次第に投資コミュニティという独特な世界に深くのめり込んでいくことになる――。

本書の最大の特徴は、加害者が一見して悪人とわかる姿で現れないことだ。登場するのは、誠実そうな男性や、疑り深い著者が思わず拍手してしまうようなキラキラしたコミュニティの創設メンバーたち。彼らが作り出す空気は心地よく、人間的な成長も促す場所のように見える。しかし、その内実には少しずつ歪みが現れ始める。

特にゾッとするのは、人間関係が全て金銭でつながっているという事実だ。著者は自分が誰かの「カモ」であったことに気づき、仲間だと思っていた人々との間に見えにくい利害関係があったことに困惑する。信頼していた相手との人間関係が壊れていく描写はまさに現代の闇を映し出したホラーとも言える。そして、やがて投資話はエスカレートし、著者は「50万円預ければ毎月5万円の配当がもらえる」という夢のような話に乗ってしまう。もちろん配当金が入金されることはなく、最終的に被害総額は100万円にまで達してしまうのだ。

詐欺師たちは、私たちの心の隙間や「より良く生きたい」という純粋な願いを利用する。100万円を失った先に著者が得た「新しい時代を生きるための教訓」は、情報があふれる今だからこそ、自分を守るための頑強な防具として役に立つはずだ。

文=坪谷佳保

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