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一度見たら忘れない、日本の超・個性派建築5

  • 2026.3.30
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街を歩いていて、ふと足を止めてしまう不思議な建物。日本には、私たちが知っている建物の姿を鮮やかに裏切る、ユニークな建築が点在している。宙に浮いていたり、カラフルな迷宮のようだったり。四角い箱という建物のルールを飛び出したその姿は、眺めるだけで純粋にワクワクさせてくれる。建築家の遊び心やこだわりが、そのまま形になったような5つの場所。常識にとらわれない自由なデザインの世界を、さっそく覗いてみよう。

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顔の家/京都

京都の衣棚通、京町家が並ぶ一角に突如として現れる巨大な「顔」。1974年、建築家・山下和正がグラフィックデザイナーの自宅兼事務所として設計した「顔の家」だ。見る人の記憶に深く留まることを意図したその大胆な造形は、誕生から50年もの間、変わりゆく京都の街を静かに見守り続けてきた。かつては人々を驚愕させたであろうその姿も、今では地域のシンボルとして、当たり前のように日常の風景へと溶け込んでいる。

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現在は「studioかおのいえ」が運営するショップ&ギャラリーとして、新たな息吹を吹き込まれている。1階の店内には、文具やインテリア、アーティストの一点ものなど、自分だけの「好き」を見つけるためのこだわりの品々が並ぶ。2025年6月には小さな「FACE CAFE」も加わり、より親しみやすい場所へと進化した。時代にむやみに同調することなく、独自の世界観を大切にするこの空間は、観光客も地域の人々も心地よく迎え入れてくれる。

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<写真>1階ギャラリーでは、企画展やワークショップなどを不定期で開催している。

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顔の家
住所/京都府京都市中京区衣棚通二条上ル堅大恩寺町740

撮影:加藤健 提供:荒川修作+マドリン・ギンズ東京事務所

三鷹天命反転住宅 イン メモリー オブ ヘレン・ケラー/東京都

荒川修作とマドリン・ギンズが長年の研究を経て構築した「三鷹天命反転住宅」は、東京西郊外で異彩を放つ。瀬戸内寂聴が“極彩色の死なない家”と称した通り、内外装を彩る14色の色彩と、一つとして同じものがない9つの住戸が特徴だ。ここは単なる住居ではなく、身体が中心となるよう設計された実験的な環境。日常を過ごす場所を捉え直すことで、人間の潜在的な感覚を呼び覚ます“死なないための家”として、建築界や芸術界に大きな衝撃を与え続けている。

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「In Memory of Helen Keller」という名には、身体的条件を超えて天命を反転させた彼女のように、誰もが新たな可能性を開けるようにという願いが込められている。住む人の年齢や能力を問わず、それぞれの身体に合った使い方が許容される自由な空間は、日々の変化の中に未知の発見をもたらしてくれるだろう。現在は一部が賃貸住宅、また一部が教育・文化プログラムの発信拠点として運営されており、芸術作品の中に住むという新しい社会の在り方を提示している。

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<写真>現在は一部が賃貸住宅として使われるほか、見学会やワークショップ、ショートステイなどのプログラムも実施。内部空間を体験しながら、建築と身体の関係を実感できる場となっている。

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三鷹天命反転住宅 イン メモリー オブ ヘレン・ケラー
住所/東京都三鷹市大沢2-2-8

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空飛ぶ泥舟/長野県

信州・茅野市ののどかな風景の中に突如現れる、藤森照信設計の「空飛ぶ泥舟」。4本のワイヤーで吊り下げられ、地上約3.5mにふわふわと浮かぶその姿は、まさに名が示す通り、泥を纏った舟が宙を漂うかのような独創的な茶室だ。同じく藤森照信設計の世界一危険とも評される「高過庵」や、地下に埋まったピラミッドのような「低過庵」と共に、藤森の故郷に点在する茶室群のひとつとして、訪れる者に強烈なインパクトを与える。

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地元の職人やワークショップの参加者と共に作り上げられたこの建築には、手仕事の温もりと藤森建築特有の素材へのこだわりが息づいている。泥のテクスチャーや、雨対策として施された銅板のしつらえは、周囲の風景と静かに、けれど大胆に響き合う。普段は内部を公開していないが、特別なプロジェクトを通して茶室の内部に入れる体験も用意されている。

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<写真>宙に浮く茶室の内部。小さな窓からは、信州の象徴である八ヶ岳を一望できる。

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空飛ぶ泥舟
住所/長野県茅野市宮川389-1

撮影:Takuya Yamauchi 提供:m.products/Food Forest inc

コルゲートハウス/愛知県

愛知県東三河の地に佇む「コルゲートハウス」は、稀代のエンジニアであり建築家の川合健二が、地球視点のエネルギーから導き出したメタボリズム建築の傑作。巨匠・丹下健三のパートナーとしても知られた彼が、自らの手で未来の家を探求し創り上げたこの空間は、大地から独立した生命体のような瑞々しさを放つ。“一晩、地球と縁を切ってみる”というコンセプト通り、効率を極めた鉄の造形は、住む者を常識の外へと連れ出してくれる。エアコン等の設備を最小限に留めた一棟貸しの空間は、建築当時の哲学を肌で感じるための純粋な装置といえるだろう。

撮影:Takuya Yamauchi 提供:m.products/Food Forest inc

鉄の質感が剥き出しになった内部空間は、計算された光と影が交錯し、まるで巨大なアート作品の中に身を置くような感覚を抱かせる。スマートフォンの通知音を遠ざけ、素材の息遣いや木々の揺れる音に耳を澄ませる時間は、日常で失われた“思考の余白”を取り戻すための贅沢な儀式となるだろう。建物の足元に広がる「コルゲートファーム」で自生する野草から香りを抽出する体験も、五感を研ぎ澄ますための良きエッセンスだ。五感がゆっくりと目覚め、自分自身の内面を新しく代謝させてくれるはず。

撮影:Takuya Yamauchi 提供:m.products/Food Forest inc

<写真>六角形の部材を連ねたハニカム構造の窓が印象的な内部空間。高い構造強度を保ちながら光を取り込み、幾何学的な陰影が室内に独特のリズムを生み出している。

撮影:Takuya Yamauchi 提供:m.products/Food Forest inc

コルゲートハウス
住所/愛知県豊橋市大脇町大脇ノ谷74−31

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湘南台文化センター/神奈川県

藤沢市湘南台に位置する「湘南台文化センター」は、平成元年に誕生した。最大の特徴は、地球儀と宇宙儀を模した2つの巨大なドームだ。小径や橋、せせらぎといった外部空間のオブジェは一貫した世界観のもとに配置され、建築と宇宙の融合が試みられている。建物の約70%が地下に構成されたその特異な全容は、まさに“小宇宙を乗せた船”。直径37mのジオデシックドームや吊り下げ構造を採用した球体など、高度な構造設計が未来的な風景を創出している。

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内部には、直径20mの規模を誇るプラネタリウムが備わり、1千万個もの星々が広がる幻想的な世界へと誘う。地下の展示ホールは“おもちゃ箱をひっくり返したような”空間として構想され、世界の楽器や科学展示に直接触れて学べる遊び場となっている。構造設計者の技術と建築表現が結実したこの場所は、日常の中に忽然と現れた宇宙への入り口だ。子供たちの未来への夢を育むという使命を背負い、今も唯一無二の存在感を放ち続けている。

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湘南台文化センター
住所/神奈川県藤沢市湘南台1-8

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