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子供は“いらない”夫と子供が“欲しい”妻…「あなたが好きなのは自分だけなの!」“30代夫婦の衝突”に「ブッ刺さる」【最高の離婚】

  • 2026.4.23

ドラマや映画の中には、きれいごとだけでは済まない夫婦の現実を突きつけてくる作品があります。今回は、そんな中から“夫婦の生々しい描写が光る名作”をテーマに5本セレクトしました。本記事ではその第4弾として、ドラマ『最高の離婚』(フジテレビ系)をご紹介します。

笑えて痛くて、目をそらせない本作の魅力とはーー?

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

あらすじ

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「アクターズ・ショート・フィルム2」完成報告会 永山瑛太   (C)SANKEI
  • 作品名(放送局):ドラマ『最高の離婚』(フジテレビ系)
  • 放送期間:2013年1月10日〜2013年3月21日
  • 出演:瑛太(現・永山瑛太)(濱崎光生 役)、尾野真千子(星野結夏 役)、真木よう子(上原灯里 役)、綾野剛(上原諒 役)ほか

本作の軸になるのは、30代の営業職・濱崎光生(瑛太)と、自由奔放な妻・結夏(尾野真千子)のすれ違いです。30代の未熟な結婚観を通して、夫婦とは何かを軽快に描きました。

第1話から光生は、妻に楽しみにしていたお菓子を食べられたことをきっかけに、勢いで離婚届を書いてしまいます。たったそれだけのことでと思う一方で、毎日の小さな不満が積もると、夫婦は本当にそこでつまずくのだと伝わってきます。

物語は、光生と結夏だけでは終わりません。光生の元恋人・灯里(真木よう子)とその夫・諒(綾野剛)という、もう一組の30代夫婦も絡み、結婚していても孤独で離婚しても簡単には他人になれない現実が重なっていきます。

食卓での言い合いや帰宅直後の気まずい沈黙、目黒川沿いを歩きながら交わす何気ない一言まで、どれも生活の手触りがあります。本作は、夫婦がふと漏らす言葉が胸に刺さるドラマです。

「子供なんかいらない」に崩れた期待――第4話が突きつけた夫婦のすれ違い

本作の第4話は非常に強く印象に残ります。この回では、「子供なんかいらない」という光生の言葉が象徴的に語られます。結夏は、子どもができたら光生が少しは変わるかもしれないと期待していたのですが、この言葉でその願いを正面からはね返されてしまいました。

結夏は、楽しいことがあるたびに光生を思い浮かべていたこと、こたつに一緒に入る姿や子どものいる暮らしまで想像していたことを光生にぶつけます。ただの口げんかではなく、今まで積もった失望が一気に噴き出す場面です。結夏は光生に「あなたが好きなのは自分だけなの!」と言い放ち、核心に触れた言葉が苦しく響きます。

同じ回では、諒が灯里との婚姻届をまだ出していなかった事実も明らかになります。この回は光生と結夏だけでなく、灯里と諒の関係も同時に揺らぎ、2組の夫婦がそれぞれ別のかたちで壊れかけていることをはっきり明確に示しました。夫婦の危機を一つの大事件ではなく、朝帰りや未提出の婚姻届、食卓の会話という生活の断片で見せるところに本作のうまさがあります。

SNSでは、「最高の離婚の4話がとくに好き」「盆栽投げ飛ばして泣くシーンみて心がちくちくしてる」「衝撃的な回」「ブッ刺さる」といった感想が寄せられていました。

面倒くさいのに目が離せない――瑛太さんが光生の痛みを“実在感”に変えた

本作で瑛太さんは光生の性格における面倒くさい部分と寂しさを同時に見せました。光生は神経質で理屈っぽく、言い方ひとつで相手をいら立たせる人物ですが、瑛太さんは光生を単なる嫌な男で終わらせません。食卓で不機嫌そうに座る姿や結夏の一言にすぐ言い返す早口、そして言い過ぎた後に自分でもまずかったと分かっているような目線の泳ぎ方など、細部まで非常に丁寧に演じています。

評価の高さは受賞歴にも表れています。ドラマ『最高の離婚』は第76回ザテレビジョンドラマアカデミー賞で最優秀作品賞を受賞し、瑛太さん自身も主演男優賞を受賞しました。第39回放送文化基金賞でも演技賞を受賞しています。光生という偏屈な30代男性を、視聴者が見放せない人物として成立させた点が高く評価されたのではないでしょうか。

特に印象的なのは、第4話前後で光生が強がりと弱さを行き来するところです。婚姻届を懐に隠して慌てたり、ストレスで円形脱毛症になったりする姿は情けないのに、なぜか目が離せません。

瑛太さんは、その情けなさを笑いにしながら、夫として未熟な人間の痛みまで残しました。だからこそ視聴者は光生が現実にいそうだと感じられるのでしょう。

何げない一言ほど残酷――坂元裕二さんの脚本がえぐる夫婦の本音

本作の脚本を務めた坂元裕二さんは、夫婦の本音を会話の温度差で見せられる脚本家のひとりです。19歳で第1回フジテレビヤングシナリオ大賞を受賞し、その後ドラマ『東京ラブストーリー』(フジテレビ系)や『Mother』(日本テレビ系)、『それでも、生きてゆく』(フジテレビ系)などを手がけました。人が言いよどむ瞬間や、相手に届かない言葉の残酷さを書くのが非常に巧みな脚本家です。

ドラマ『最高の離婚』でも、坂元さんの持ち味が存分に発揮されています。食事のお礼を言わない、帰る時間を知らせない、などの日常の小さなずれをドラマの中心に置いたことで、爆発的な裏切りがなくても夫婦は毎日の言葉で深く傷つくのだと伝わります。

坂元さんの脚本は、ただ刺さるだけでは終わりません。本作では離婚は終点ではなく、関係を見直すための途中経過として描かれます。

結婚も離婚も相手を完全に理解できないまま、それでも関わろうとする営みとして描かれるからこそ、視聴後に自分の会話まで振り返りたくなります。笑えて痛いのに、最後には少しだけ人を信じたくなる脚本ではないでしょうか。

笑いのなかに痛みを忍ばせ、夫婦の未熟さを真正面から描いた本作は、まさに“夫婦の生々しい描写が光る名作”と呼ぶにふさわしい一作です。言い過ぎた一言や、言えなかった本音に心当たりがある人ほど、きっと深く刺さるでしょう。

※記事は執筆時点の情報です