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ルービックキューブの達人の「脳」で生じていること

  • 2026.3.26
ルービックキューブの達人では計画と実行で脳波が似ている / Credit:Canva

ルービックキューブを超高速で解く様子を動画などで見たことがあるかもしれません。

そんな達人たちの脳は常人とどう異なっているのでしょうか。

デンマークのオールボー大学(Aalborg University)の研究チームは、競技経験のある熟練スピードキューバーの脳波を測定し、「考えること」と「動かすこと」がどのように結びついているのかを調べました。

その結果、彼らはキューブに触れる前の段階から、すでに実際の動きに近い形で解法を組み立てている可能性が示されました。

この研究は2025年5月26日に学術誌『Experimental Brain Research』に掲載されています。

目次

  • ルービックキューブの達人は「観察」と「実行」で脳波が似ている
  • ルービックキューブの達人は「動かせる形」で考えている

ルービックキューブの達人は「観察」と「実行」で脳波が似ている

ルービックキューブを数秒から十数秒で解くという行為は、一見すると単なる手先の器用さのようにも見えます。

しかし実際には、色の配置を瞬時に把握する視空間認知、手順を保つ記憶、先を読む計画力、そして指を正確に動かす運動能力など、複数の力が同時に求められる高度な課題です。

研究チームはこの複雑なスキルの正体を明らかにするため、経験豊富なスピードキューバー13人を対象に実験を行いました。

参加者は平均23歳で、平均約17秒でキューブを解く実力を持っていました。

実験ではまず、キューブに必要な能力を個別に測る課題が用意されました。

たとえば、リングを最小手数で並べ替える課題では計画力を、線の角度や位置を判断する課題では視空間認知を測定します。

また、絵柄を記憶して一致するペアを見つける課題では空間記憶が、決められた手順でキューブを繰り返し回す課題では指先の細かな運動能力が評価されました。

研究者たちは、こうした要素を一つずつ切り分けて測ることで、ルービックキューブを速く解く力の中身を詳しく見ようとしたのです。

その後、参加者は本番としてルービックキューブを解きました。

まず15秒間キューブを観察し、その間に解法を考えます。

そして合図とともに、できるだけ速くキューブを完成させます。

このとき研究者は、観察している「計画段階」と、実際に手を動かしている「実行段階」の脳活動を脳波(EEG)で記録しました。

結果は興味深いものでした。

計画段階と実行段階で、脳波のパターンに大きな違いが見られなかったのです。

普通なら、考えるときと体を動かすときでは脳の使い方が変わりそうです。

しかし熟練者では、その二つがかなり近い形で現れていました。

では、この一致は具体的に何を意味するのでしょうか。より詳しい結果を見ていきましょう。

ルービックキューブの達人は「動かせる形」で考えている

詳しく見ると、ルービックキューブを解くときには、脳の複数の領域が関係しながら活動していました。

計画を担う前頭葉、視覚を処理する後頭葉、空間認識に関わる頭頂葉、記憶に関与する側頭葉が、それぞれ別々に働くというより、関連し合う形で動いていたのです。

つまり、ルービックキューブの速さは一つの才能だけで決まるのではなく、いくつもの能力が結びついて生まれていると考えられます。

特に注目されたのは、後頭葉のデルタ波と呼ばれるゆっくりした脳活動です。

この活動が強い人ほど、キューブを速く解く傾向が見られました。

後頭葉は視覚情報を処理する領域なので、この結果からは、見た配置を手の動きへつなぐ働きが、スピードに深く関係していることがうかがえます。

見えている色の並びをただ理解するだけでなく、それを次の指の動きへ素早く結びつけることが重要だったのでしょう。

また、計画力を測る課題では、側頭葉のデルタ波やシータ波との関連が見られました。

これは、複雑な手順を頭の中で組み立てる力が、特定の脳活動と結びついていることを示しています。

さらに視空間認知や記憶に関する課題でも、関係する脳領域の活動とのつながりが見られました。

研究チームは、ルービックキューブの解答が、記憶、計画、視覚、運動という複数の能力の組み合わせで成り立っていることを、脳波の面から確かめることができたのです。

ここで最も大きなポイントは、熟練したスピードキューバーが、キューブを手に取ってから一手ずつ考えているわけではなさそうだという点です。

15秒の観察時間のあいだに、解法を単なる抽象的な計画としてではなく、実際の手の動きにかなり近い形で頭の中に組み立てていると考えられます。

だからこそ、観察段階と実行段階で脳活動のパターンがよく似ていたのでしょう。

言い換えれば、達人たちは「考えてから動く」というより、「動かせる形で考えている」のです。

もちろん、この研究には限界もあります。

参加者は13人と少なく、全員が若い男性でした。

また初心者との比較も行われていないため、こうした脳の特徴が練習によってどのように育つのかは、まだはっきり分かっていません。

今後は、初心者が熟練者へと成長していく過程を追いかける研究が進めば、「できるようになる脳」の仕組みがさらに詳しく見えてくるはずです。

ルービックキューブの達人たちは、単に指先が速いだけではありません。

今回の研究は、複雑な思考と正確な操作が、訓練によって強く結びつく可能性を示しました。

あの驚くほど滑らかな手さばきの裏では、脳がすでに「動きに近い思考」を作り上げているのかもしれません。

参考文献

What brain waves reveal about people who can solve a Rubik’s Cube in seconds
https://www.psypost.org/what-brain-waves-reveal-about-people-who-can-solve-a-rubiks-cube-in-seconds/

元論文

The electrocortical activity of elite Rubik’s cube athletes while solving the cube
https://doi.org/10.1007/s00221-025-07104-w

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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