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50代女性「帰りも救急車で送ってくれるんじゃないの?」元救急隊員が語る、意外とトラブルになりやすい場面

  • 2026.4.11
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出典:photoAC ※画像はイメージです

こんにちは。ライターのとしです。

50代女性の発熱で救急要請が入り、夜間のため受け入れ先の調整に時間を要した事案がありました。

歩ける状態ではあったものの不安が強く、調整の末、少し離れた医療機関へ搬送することに。

本人にも行き先は説明して了承を得ていましたが、到着後に「帰りも救急車で送ってくれるんじゃないの?」と不満をぶつけられた現場でした。

搬送先まで行くことと、その後の帰宅手段は別だという認識の差を感じた事案です。

夜間の発熱で、遠方の医療機関へ搬送することになった

要請は、50代女性の発熱でした。

歩行は可能な状態でしたが、発熱があることで本人の不安が強く、夜間帯でもあり救急要請に至ったケースです。

ただ、その時間帯は受け入れ先がなかなか決まりませんでした。

夜間は診られる医療機関が限られますし、発熱があると、なおさら調整に時間がかかることもあります。

その結果、少し離れた医療機関で受け入れが決まりました。

本人には、行き先がやや遠方になることと、今受け入れ可能なのがその医療機関であることを説明し、了承を得たうえで搬送しました。

本人は納得しているように見えた

搬送中も、大きな混乱はありませんでした。

そのため救急隊としては、行き先については理解してもらえている認識でした。

現場では、まず受け入れ先を決めて、必要な説明をしながら搬送につなげることが優先になります。

その中で、本人が納得しているように見えれば、そのまま次の対応へ進むことも多いんです。

この時も、行き先が遠くなること自体には了承が得られているように見えました。

ただ、あとから振り返ると、本人の中では別の受け止め方が残っていたのかもしれません。

「帰りも救急車で送ってくれるんじゃないの?」

医療機関に到着し、医師へ引き継ぎを行ったあとです。

救急隊が引き上げることを本人にも説明したところ「帰りも救急車で送ってくれるんじゃないの?」という言葉が返ってきました。

さらに「こんな遠くまで連れてきて」と不満もぶつけられました。

搬送先を決める段階では納得しているように見えても、本人の中では「救急車で来たのだから、帰りも何とかしてもらえる」という受け止めが残っていたようでした。

ここは、救急隊として説明していたつもりでも、相手の理解とはずれていた部分だったと思います。

その後は、医師から本人に説明と注意があり、大きな混乱にはならず収まりました。

搬送と帰宅手段は、同じように見えて実は別の話

救急車は、必要な医療機関まで傷病者を搬送するためのものです。

一方で、診察後の帰宅手段まで担うものではありません。

ただ、この違いは、意外とそのままでは伝わりにくいことがあります。

特に今回のように、本人の不安が強い場面や搬送先が遠方になる場面では「行けるなら帰りも何とかしてもらえるのでは」と受け止められることもあります。

その感覚自体は、現場にいると見えにくいんですよね。

受け入れ先が決まったことに意識が向いているぶん、その先の帰宅手段まで話が及んでいないこともあります。

今回の事案では、まさにそこに認識の差がありました。

搬送先が遠方になる場合は、行き先の了承だけでなく、救急隊は医療機関到着後に引き上げること、帰宅手段は別に考える必要があることまで早い段階で具体的に伝えておく大切さを感じます。

説明したかどうかだけでなく、どう受け取られているか。

その確認まで含めて考えないと、あとで思わぬ不満につながることがある。

そんなことをあらためて感じた現場でした。


ライター:とし
元救急隊員。消防で17年、主に救急隊として活動し救急救命士資格を取得。現場経験をもとに、救急の分かりにくい部分を一般向けに噛み砕いて発信しています。