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「これ、口座に入れてください」一見普通の高齢男性から、銀行員が“詐欺のサイン”を察知した理由

  • 2026.4.13
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出典:photoAC ※画像はイメージです。

こんにちは。くまえり銀行員です。

銀行窓口で日々お客様対応をしていると、「なぜそこまで確認するの?」と疑問を持たれる場面に何度も出会います。

けれど、その確認にはすべて理由があります。
今回は、一見どこにでもいる普通の高齢男性とのやり取りから、銀行員がどのように“異変”を察知しているのか、その裏側をお話しします。

穏やかな来店、違和感のない第一印象

その男性は、開店からしばらくして来店されました。身なりは整い、受け答えも丁寧。

怒っている様子もなく、ごく普通のお客様です。
「これ、口座に入れてください。貯金です」
差し出されたのは、現金の束。金額は数百万円。

タンス預金としては珍しくありません。実際、同様の手続きは日常的にあります。

しかし…
私はすぐに小さな違和感を覚えました。
それは金額ではなく、“現金の持ち方”でした。

銀行員が見るのは「お金」ではなく「行動」

現金は封筒にも袋にも入っておらず、複数の輪ゴムで無造作にまとめられていました。
さらに気になったのは次の点です。
・紙幣の向きがすべてバラバラ
・新札と旧札が不自然に混在
・金額を本人が正確に把握していない
・質問すると視線が泳ぐ

長年窓口に立っていると、「長く保管していた現金」と「急に用意された現金」は感覚的に分かります。

タンス預金の場合、多くは几帳面に保管されています。

ところがこの現金には、“管理していた痕跡”がありませんでした。

そう疑念を抱きつつ、慎重に会話を進めます。

誰かに言われて持ってきたのでは……?

そう疑念を抱きつつ、慎重に会話を進めます。

「最近、お金のことでお電話などありませんでしたか?」

すると男性は一瞬言葉に詰まり、こう答えました。

「いや……別に。ただ、入れておいたほうがいいって言われて」
この瞬間、確信に近い感覚がありました。
詐欺の前兆です。

近年多いのは、「現金を確認する」「安全な口座へ移す」といった名目で高齢者に現金を動かすよう仕向ける手口。

銀行への持ち込み段階は、被害直前であることが少なくありません。
私たちは上司と連携し、時間をかけて事情を確認しました。

結果、その男性は数日前から“警察官を名乗る人物”と電話していたことが判明。被害を未然に防ぐことができました。

帰り際、男性は小さくこう言いました。
「止めてもらってよかった」

なぜ銀行は細かく質問するのか

窓口での確認を「面倒」「疑われている」と感じる方もいるかもしれません。

ですが銀行員が見ているのは、不正や詐欺からお客様を守るためのサインです。

特に以下は注意信号になります。
・突然の高額な現金移動
・使い道を説明できない
・電話しながら来店している
・「急いでいる」と強調する

これらが重なると、私たちは“通常業務”ではなく“防止対応”に切り替えます。
ルールが厳しいのは、過去に多くの被害があったからです。

読者へのアドバイス|詐欺を遠ざけるために

もし次のような状況があれば、一度立ち止まってください。

覚えておいてほしいポイント
・警察や銀行が現金移動を電話で指示することはない
・「誰にも言わないで」は詐欺の典型句
・急がせる話ほど第三者に相談する
・銀行員の質問は“防御”のため

銀行窓口は、単なる手続きの場所ではありません。
最後の防波堤になることもあります。

少し踏み込んだ質問をされたときは、「守ろうとしているサインかもしれない」と思い出していただけたら嬉しいです。


ライター:くまえり銀行員
金融機関の窓口業務に携わり、日々さまざまなお客様対応を経験。忙しい日常の中で起こりがちな銀行手続きの行き違いやトラブルを、窓口の内側から見た視点で、読者に寄り添いながら伝えています。「知らなかった」が「なるほど」に変わる瞬間を大切に執筆中。


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