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医師「1,000人に1人が命を落とします」→実は『はしか』の初期症状かも…“ただの風邪”と見分ける「重要なポイント」とは?

  • 2026.4.7
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

はしかは、感染初期には風邪と見分けるのが極めて困難です。しかし、その体内ではウイルスが猛烈な勢いで増殖しています。放置すれば合併症や後遺症のリスクを伴うだけでなく、強力な感染力によって周囲へウイルスを広めてしまうおそれがあるのです。

では、はしかを疑うべきタイミングとはいつなのでしょうか?また、もし感染の可能性がある場合、どのように医療機関を受診すべきなのでしょうか。麻酔科専門医の松岡雄治さんに、はしかの怖さと私たちがとるべき適切な行動について詳しく伺いました。

風邪と見分けがつかない初期段階。はしかを「放置」してはいけない理由とは

---はしかの初期症状は風邪と非常に似ていると言われますが、なぜ放置することがそれほど危険なのでしょうか?

松岡 雄治さん:

「初期段階では風邪と見分けるのは困難な一方で、体内では、はしかウイルスが猛烈な勢いで増殖しています。

【はしか発症までの流れ】
・ウイルスに感染後、約10日間の潜伏期間を経て発症
・初期段階に入り、風邪のような症状が2〜3日続く(風邪と見分けることは困難)
・その後、39度以上の高熱と全身の発疹が現れる

問題は、この風邪に見える時期を放置することです。
はしかウイルスは呼吸器だけでなく全身の臓器に侵入します。肺炎や中耳炎といった合併症を引き起こしやすく、先進国でも1,000人に1人が命を落とします。脳への感染は、頻度は10万人に1人程度と極めて稀ですが、ウイルスが脳に長期間潜伏するリスクがあります。数年から十数年後に「亜急性硬化性全脳炎(SSPE)」という中枢神経疾患を発症することがあります。

【放置による後遺症(SSPE)のメカニズム】
・増殖したウイルスの一部が脳の神経細胞内に静かに潜伏する
・数年かけてウイルスが突然変異を起こし増殖を始める
・脳の神経回路を徐々に破壊し、知能や運動機能を奪う

風邪だと思い込んで放置することが、思わぬリスクを抱えることになるかもしれません。はしかに罹患した人が近くにいる場合や、海外から帰ってきて10日前後など、思い当たるエピソードがある場合には、ぜひ医療機関を受診して診察を受けましょう。」

「市販薬で様子見」が命取りに。はしかの感染拡大を防ぐ重要性

---仕事や家事が忙しいと、つい市販薬で熱を下げて無理をしてしまいがちです。なぜそれが危険なのでしょうか?

松岡 雄治さん:

「市販薬で一時的に熱を下げて、通常通り生活してしまうと、重症化したり、無自覚なままウイルスを周囲にばらまく感染源となったりしてしまうおそれがあります。

誤解しないでいただきたい点は、解熱剤の使用自体が問題ではないということです。仕事や家事を休めず、手軽な市販薬に頼ってしまう事情はよく分かります。実際、治療の一環として解熱剤を用いた対症療法も行います。
問題なのは、市販薬で一時的に熱が下がることで、「このまま乗り切ろう」と受診が遅れて重症化したり、治ったと勘違いして外出して感染を拡大したりすることです。
はしかは飛沫感染や接触感染に加え、空気感染でも広がるという大きな特徴があります。

【解熱薬使用時の注意点】
・受診が遅れて重症化する可能性があります。治療介入が遅れてウイルスが増える可能性があります。
・はしかは免疫力を著しく低下させるため、肺炎や中耳炎などの細菌感染を合併しやすくなります。
・感染拡大の可能性があります。はしかの感染力は、非常に強力です。満員電車の中に一人でも感染者がいれば、車両内の免疫を持たない全員に感染するほどの強さを持ちます。

ただの風邪だろうという正常性バイアスが、自分と周囲の人々の命を脅かします。自力で対処しようとせず、不安な場合は迷わず医療の力に頼ってください。」

病院に行く前に知っておくべき「正しい受診」のフローチャート

---もしはしかが疑われる場合、いきなり病院へ行くのは控えるべきなのでしょうか?

松岡 雄治さん:

「とても重要な防衛の第一歩があります。

それは、「事前の連絡なしで直接受診するのを控えること」です。まずは電話で「はしかかもしれない」と伝えてください。
高熱や発疹が出たら、一刻も早く病院で診てもらいたくなります。事前の連絡なしに待合室に入ってしまうと、病院でウイルスが拡大するおそれがあります。病院には免疫力が十分でない方もいらっしゃるため、大きな危険を伴います。
空気感染するということを念頭に、拡大防止に努めてください。

【受診までフローチャート】
・はしかを疑う症状(発熱や発疹など)に気づく
・いきなり病院へ行かず、かかりつけ医などに電話をする
・医師の指示に従い、指定された時間と経路で受診する

医療機関は、院内で他の患者さんと接触しないよう隔離された動線を準備する必要があります。受診の前の電話で、この準備が可能になります。
また、移動の際にも厳重な注意が必要です。

【移動時のポイント】
・飛沫を飛ばさないよう、必ずマスクを着用する
・電車やバスなど、公共交通機関の利用は可能な限り避ける
・自家用車などを使い、他人との接触を最小限に抑える

事前の電話連絡と適切な移動手段の選択は、いずれも感染拡大の連鎖を断ち切る強力な防波堤となります。まずは医療機関に連絡して指示を仰ぎましょう。」

「自分は大丈夫」という油断を捨て、命を守る行動を

取材を通じて分かったのは、はしかは決して軽く見てはいけない病気であるということです。初期の風邪症状を「ただの風邪」と安易に判断して市販薬でやり過ごすことは、重症化を招くだけでなく、周囲へウイルスを撒き散らす危険な行為になり得ます。

特に、空気感染のリスクを考慮すれば、受診時の電話連絡や移動手段への配慮は、他者の命を守るための最低限のマナーとも言えます。まずは医療の力に頼り、正しい手順で受診すること。この一連の対応が、自分と大切な人を守るための、もっとも強力な防波堤となるはずです。


監修者:松岡 雄治
麻酔科専門医。総合病院、大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じ、幅広い周術期管理に従事。現在は急性期病院で麻酔科医として勤務する。日々、美容領域を含む各診療科の手術に携わっている。医師としての知識と経験を活かして医療系ライターとしても活動し、医療・健康・美容分野の記事執筆、医学論文の解説、商品監修、AI技術開発関連プロジェクトへの参加などの実績を有する。睡眠コンサルタント、睡眠検定1級の資格も保有。

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