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就寝後1〜2回トイレで起きるも「年を取ればこういうもの」と放置→数ヶ月後、血尿が出始め…70代女性を襲った“恐ろしい病”

  • 2026.6.8
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

泌尿器科専門医として、外来で多くの患者さんの排尿トラブルに向き合ってきた小内友紀子です。

「トイレが近い」「急に尿意をもよおす」「間に合わなくて漏れてしまう」
そんな症状に悩む方は少なくありません。こうした症状は「過活動膀胱」として診断・治療されるケースが多く、実際に適切な治療で改善する方も多いです。

しかし今回は、同じような症状の裏に膀胱がんが隠れており、発見が遅れてしまったケースをお伝えします。

※プライバシー保護のため、特定の個人が識別されないよう複数の事例を統合・再構成した架空のケースとしてご紹介しています。

「年のせいだろう」と受け入れた違和感

Tさんは当時70歳代の女性。

2〜3年前から、日中のトイレの回数が増え、急な尿意で尿がもれてしまうことが増えていました。就寝後も1〜2回は目が覚めるようになり、外出時には「トイレの場所」を事前に確認しないと不安という状態に。ただ、「年を取ればこういうものだろう」と長らく受け流していました。

症状が日常生活に支障をきたすようになり、Tさんはようやく近くの泌尿器科クリニックを受診しました。問診と尿検査、残尿測定などを経て、「過活動膀胱」と診断されます。処方された薬を飲み始めると、はじめのうちは「少し楽になった気がする」と感じており、Tさんも「やっぱり過活動膀胱だったんだ」と安心していました。

続く症状、そして見逃されたサイン

しかし数か月が経っても、根本的な改善には至りませんでした。むしろ、尿もれの頻度と量は増すばかりで、ある時期からは「尿に血が混じる」ことにも気づき始めます。Tさんはクリニックに伝えましたが、「薬の影響や膀胱炎かもしれない」との説明を受け、抗菌薬が追加される形で引き続き同じ治療が続きました。

血尿は断続的に続いていましたが、痛みがほとんどなかったため、Tさん自身も「大きな病気」とは考えていませんでした。痛みを伴わない血尿。これが、膀胱がんに特徴的なサインであることを、このとき誰も指摘しなかったのです。

病院での精密検査で判明した真実

症状が悪化し、血尿が明らかに増えてきたことをきっかけに、家族に勧められてTさんは総合病院の泌尿器科を受診しました。膀胱鏡検査と画像検査が行われ、結果は「膀胱がん(筋層浸潤性)」。がんはすでに膀胱の筋肉層にまで達しており、周囲のリンパ節への転移も疑われました。

治療は手術を選択。膀胱を全摘出し、尿の通り道を別につくる「尿路変向術」が行われました。Tさんにとって、身体的にも精神的にも大きな変化を強いられる治療でしたが、「これで治るなら」と前向きに臨まれていたといいます。

しかし術後の経過は厳しく、転移していたがんを完全に抑えることはできませんでした。

「頻尿」「血尿」を侮らないために

Tさんのケースを振り返ると、いくつかの重要な教訓が浮かび上がります。

まず、「痛みのない血尿」は膀胱がんの典型的な初期症状です。たとえ一度だけでも、あるいは薄いピンク色であっても、血尿があれば必ず精密検査を受けるべきです。痛みがないからといって安心してはいけません。

次に、治療をしているのに症状が改善しない場合は、診断そのものを見直す必要があります。過活動膀胱の薬で改善しない場合、別の原因が隠れている可能性を検討することが大切です。

そして、尿に関する症状は「年齢のせい」と放置しないこと。確かに加齢で頻尿になることはありますが、それを理由に受診をためらったり、検査をせずに治療だけ続けたりすることで、隠れた病変の早期発見を遅らせてしまうリスクがあります。

「トイレが近い」「血が混じった気がする」
その小さな違和感を、どうか見逃さないでください。早期発見であれば、膀胱がんは治癒が見込める病気です。気になる症状があれば、ためらわずに専門の医療機関へ相談することをお勧めします。


執筆・監修:小内友紀子
公益財団法人ときわ会 常磐病院 泌尿器科 診療副部長、東京女子医科大学病院 泌尿器科 講師、医師、医学博士
女性泌尿器科医師として、普段は女性によくある尿もれから、男性の前立腺癌をはじめとする泌尿器科領域の癌診療まで診療しております。
【資格】医師/ 医学博士 / 泌尿器科専門医・指導医 / 透析医学会専門医・指導医 / 排尿機能学会専門医

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