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『認知症になりやすい人』には“口に共通点”があった。歯科医が明かす、口内ケアで特に気をつけるべき「2つのNG習慣」とは?

  • 2026.4.9
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

年を重ねても「自分らしく生きる」ために、認知症予防に関心を持つ方は増えています。

そこで意外と見落とされがちなのが、毎日の「お口のケア」です。実は、しっかり噛めることや歯茎の健康は、脳の働きと密接に関わっていることが近年の研究で示されています。

では、なぜ口の状態が脳に影響を与えるのでしょうか?また、良かれと思ってやっているケアが、実は逆効果になっている可能性はないのでしょうか。

本記事では、歯科医師の鷹巣多紀さんに、口の健康と脳のつながり、そして今日から無理なく続けられる正しいオーラルケアの方法について詳しく伺いました。

「しっかり噛める」ことが脳を守る?認知症とオーラルケアの深い関係

---認知症になりにくい方の口には、共通する特徴があるのでしょうか。また、なぜ「口の状態」が「脳」と関わりがあるのかを教えてください。

鷹巣 多紀さん:

「認知症になりにくい方の口に共通しやすいのは、『しっかり噛める』『歯茎に腫れや出血が少ない』『口が乾きにくい』といった状態です。

自分の歯が多く残っていることは1つの目安ですが、もっと大切なのは、毎日の食事で無理なく噛めるかどうかです。
口の働きが落ちると、食べられる物が偏りやすくなり、栄養のバランスも崩れやすくなります。厚生労働省も、口の機能の低下は認知機能の低下と関わると示しています。また、歯を失っている方や歯周病が進んでいる方では、認知機能の低下や認知症との関連が多く報告されています。

では、なぜ口の状態が脳と関わるのでしょうか。まず、噛むこと自体が脳への刺激になります。噛むと、口やあごの筋肉だけでなく、脳の働きにも関わる変化が起こることが分かってきました。さらに、歯周病のように歯茎の炎症が長く続くと、その影響が口の中だけで終わらず、全身に及ぶ可能性があります。
つまり、よく噛める口と、炎症の少ない歯茎を保つことは、食事、会話、外出といった毎日の元気を支え、その積み重ねが脳の健康にもつながると考えられています。

ただし、ここは大事な点で、口のケアだけで認知症を防げる、とまでは言えません。認知症の予防には、運動・睡眠・禁煙・血圧や血糖の管理なども大切です。そのうえで、口の健康は毎日の生活の中で取り組みやすく、しかも食べる力や話す力にも関わるため、早めに意識しておきたいテーマだといえます。」

良かれと思ってやっていない?知っておきたい「オーラルケアの落とし穴」

---認知症予防のために口内環境を清潔に保つことは大切ですが、ケアを行う上で注意すべき点はありますか?

鷹巣 多紀さん:

「あります。特に気をつけたいのは、『力の入れすぎ』と『殺菌のしすぎ』です。

まず、歯みがきは強くこするほどよいわけではありません。力が強すぎると、歯の根元が削れたり、歯茎が下がったり、冷たい物がしみたりする原因の1つになります。一生懸命お手入れしている方ほど、ついゴシゴシ磨いてしまうことがありますが、歯ブラシの毛先が大きく広がるようなら、力が強すぎる可能性があります。歯みがきは、軽い力で小さく動かす方が、歯と歯茎の境目の汚れを落としやすくなります。

また、口の中を清潔にしたいからといって、殺菌力の強い洗口液(うがい薬)を過度に使用するのも注意が必要です。口の中には、健康を保つために必要な『常在菌(じょうざいきん)』と呼ばれる良い菌も存在しています。殺菌作用の強い成分やアルコールが含まれた洗口液を頻繁に使いすぎると、良い菌まで洗い流してしまい、口内環境のバランスが崩れる可能性があります。

さらに、アルコール成分は口の中の水分を奪うため、唾液が減って乾燥状態(ドライマウス)を引き起こすことも考えられます。唾液が減ると自浄作用(口の中を自然に綺麗にする働き)が低下し、かえって虫歯や歯周病の原因菌が繁殖しやすくなります。洗口液を取り入れる際は、パッケージに記載された使用回数を守り、アルコールが含まれていない刺激の少ないタイプを選ぶとよいでしょう。

認知症予防のために口をきれいにしたい、という気持ちはとても大切です。だからこそ、やりすぎるより、正しい方法を無理なく続けることが大切になります。毎回同じ場所から出血する、しみる、口臭が気になる、口がねばつくといった変化が続くなら、自己流のケアを重ねるより、歯医者で原因を確認した方が近道です。」

今日からできる最初の一歩。脳の若さを保つ習慣の作り方

---では、日々の生活の中で、具体的にどのようなケアを習慣化すればよいのでしょうか。

鷹巣 多紀さん:

「今日からすぐに始められる最初の一歩として、『歯間(しかん)清掃』を毎日の習慣に取り入れることをお勧めします。

多くの方は歯ブラシだけで歯磨きを終わらせていますが、実は歯ブラシ単独では、口の中の汚れである歯垢(しこう)を全体の6割程度しか落とせません。残りの4割は、歯と歯の間や、歯と歯茎の境目に潜んでいます。この磨き残しが蓄積すると、やがて虫歯や歯周病を引き起こす原因になります。

そこで、デンタルフロス(糸ようじ)や歯間ブラシといった専用のアイテムを使って、歯ブラシの毛先が届きにくい部分の汚れを丁寧に取り除きましょう。1日1回、特に就寝前のケアに取り入れると、寝ている間の菌の繁殖を抑えやすくなります。

もう一つ実践していただきたいのが、『一口につき30回噛んで食べる』という習慣です。よく噛んで食事をすると、脳への血流が促されるだけでなく、消化を助けたり、唾液の分泌を増やしたりと、全身の健康においてさまざまなメリットをもたらします。

もちろん、ご自身のケアだけでは落としきれない汚れもあります。そのため、毎日の正しいセルフケアを継続しつつ、3ヶ月に1回程度は歯医者を受診して、プロのクリーニングを受ける体制を整えましょう。毎日の積み重ねと専門家のサポートを組み合わせることが、脳の若さを保つための確かな土台作りに繋がります。」

毎日の正しい積み重ねが、脳の健康を守る土台になる

口のケアは、認知症を劇的に防ぐ万能薬ではありません。しかし、食事の質を高め、脳への刺激にもなる重要な要素であることは間違いありません。何より、毎日のセルフケアは私たちの生活において無理なく取り組みやすい習慣です。

まずは今日から「歯間清掃」をプラスすること、そして「よく噛んで食べる」ことを意識してみてください。自己流のケアで無理を重ねるのではなく、正しい方法でコツコツと継続すること。そして3ヶ月に一度の専門家のチェックを欠かさないことが、脳の若さを守るための何よりの近道です。


監修者:鷹巣 多紀
大学病院口腔外科にて研修後、一般歯科にて勤務。現在は1児の母として育児に奮闘しながら ママさん歯科医師をしています。
歯科医師ママkiki|note: https://share.google/uUYsDiSMnkNKZCrOw