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「毎朝走ろう」4月からランニングを始めた50代男性→家を出て30分後、胸をかきむしって道に倒れ…男性を直撃した“恐ろしい病”

  • 2026.4.9
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「いよいよ4月だな、明日から毎朝走ろう」

春の気配に誘われ、健康のために一念発起した50代のTさん。昨年の健康診断で高血圧と脂質異常症を指摘されていましたが、受診はせず、春になったら健康的に暮らそうと決めていました。翌朝早く、家族の「無理しないでね」という声に「いってきます」と元気に返事をして、早朝の冷気に包まれて走り出しました。

しかし、その30分後、Tさんは胸をかきむしって道に倒れていました。一命は取り留めたものの、心筋梗塞により心臓の機能は低下してしまい、運動も思うようにできなくなってしまっています。

皆様こんにちは。日々手術室で患者さんの命を守る麻酔科専門医の松岡です。
今回は、春に新たな習慣を始めた矢先の悲劇をご紹介します。健康習慣がなぜこのような事態になったのか、みなさんが安心して健康習慣を始める参考になれば幸いです。

早朝の運動は、血管への「過酷な負荷」

朝早く起きて運動することは、健康に良いと誰もが信じています。
しかし、実は医学的に朝は注意が必要な時間帯です。血圧は目覚める前から活動に備えて上昇し始めます。これをモーニングサージと呼びます。

【朝活ランニングで心筋梗塞が起きるしくみ】
・朝にかけて自律神経は交感神経が優位になって、血圧が急上昇する
・就寝中の発汗により、起床時には血中の水分が減って血液が濃縮されている
・そこに急激な運動と冷たい外気の刺激が加わる
・限界を超えた血圧が、血管内のコブ(プラーク)を傷つけて破綻させる
・できた血栓が血流を塞ぎ、心筋梗塞を引き起こす

「健康な朝活としての運動」と「危険な負荷」の境界線

「春の訪れとともに、健康になろうと決心して、良い習慣を始める」。その前向きで素晴らしい向上心がこのような結果になるのは非常に残念です。
とはいえ、長年かけて少しずつ硬くなった中高年の血管にとって、寝起きの急激なフル回転は、冷え切った車のエンジンをいきなり全開にするようなものです。

今回のケースでリスクを高めてしまったのは次の3つの行動です。

  • 起床直後、30分以内に外へ走り出している
  • 起きてからコップ1杯の水も飲んでいない
  • 高血圧や脂質異常症の指摘があるのに、薬を飲んでいない

春先は日中が暖かくても、早朝は冷え込みます。寒暖差による血管の収縮が最も激しくなるタイミングです。日本高血圧学会のガイドラインでも、早朝高血圧は心血管病の強いリスクと警告しています。健康のための行動が、思わぬ心血管リスクを招いてしまうのです。

手遅れになる前に、確認すべき3つのサイン

朝の運動を安全に行うためには、ご自身の血圧の状態を知ることが不可欠です。以下のサインを見逃さないでください。

1.朝起きた時、頭痛や後頭部の重だるさを感じる

寝起きの血圧が異常に高くなっているサインかもしれません。

2.上の血圧が「135mmHg」を超えている

高血圧の基準に該当します。一時的に数値が下がっても、走ると再び異常上昇する危険があります。ランニングは中止し、息が軽く弾む程度のウォーキングにとどめてください。

3.運動を始めると、胸の奥が「ギューッ」と締め付けられる

心臓の筋肉に血液が足りていない「狭心症」の初期症状の可能性があります。

まとめ

健康のために良かれと思って始めた行動が裏目に出る。その現実にショックを受けるのは当然です。誰もが『健康になりたい』という純粋な思いで始めているのですから、知識がなかった自分を責めたり、後悔したりする必要はありません。

だからこそ、今日から以下の『安全な朝活3ステップ』を新しいルールにしてみてください。

  • 起床後、トイレと給水(常温の水や白湯)を済ませて、「血圧を測る」
  • いきなり外に出ず「室内で準備運動」をして体を温める
  • 外に出たら「ウォーキング」から始め、体が温まったら「ランニング」へ

    血圧が135mmHgを超えていたら無理して走らず、その日はウォーキングにとどめましょう。
    ときには無理をしないことこそが健康への近道です。みなさんの安全な健康習慣を心より応援します。

監修者・執筆:松岡 雄治
総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。

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