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「新しい靴だったから…」“足の指の靴擦れ”を放置→数ヶ月後、『膝下から切断』を宣告され…50代男性に起きていた“異変”

  • 2026.4.28
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出典元:photoAC(※画像はイメージです

「新しい靴だったから少し靴擦れしたな」秋の行楽で家族と出かけた50代の男性Aさん(仮名)は、足の指にできた小さな靴擦れに絆創膏を貼って済ませました。

しかし、痛みがないからと放置した傷は、治るどころか数か月のうちに黒く変色しました。これはまずいと慌てて受診したAさんに告げられたのは膝下から切断という過酷な処置でした。現在は義足を用いたリハビリに苦痛を伴い、恐怖に怯えながら、自由に歩けたかつての日常を失った喪失感に苛まれています。

皆様こんにちは。周術期の全身管理を通じて、糖尿病の重篤な合併症と日々向き合う麻酔科専門医の松岡です。

痛みのない傷が無言で足を腐らせるメカニズム

痛みは体からのSOSだと誰もが知っています。だからこそ、痛くないならば大丈夫と考えてしまいがちです。しかし、糖尿病においてはそのアラート機能自体が壊れてしまうことがあります。これが糖尿病性神経障害です。

【小さな靴擦れが足の切断に至るフロー】

  • 神経へのダメージ蓄積:長年の高血糖で足先の細い血管が傷つき、痛みを感じる知覚神経に十分な血流が届かず、次第に機能しなくなる。
  • 傷の放置:靴擦れなどの傷ができても痛みが全くないため、問題ないと放置されてしまう。
  • 細菌の繁殖:高血糖で白血球の働き(免疫力)が低下しており、傷口から細菌が容易に侵入する。
  • 組織の壊死:血流悪化で酸素や栄養、抗菌薬が届かず、無痛のまま足が黒く壊死(えし)していく。

「痛くないから大丈夫」という自然な心理と危険な罠

旅行で歩き回れば、靴擦れくらいするものです。絆創膏を貼っておけばそのうち治るだろうと考え、痛くないからと病院に行かないのは無理もないことです。

しかし、血糖値が高い状態が続くと、足先から「感覚の靴下」を履いたように鈍感になっていきます。糖尿病性神経障害は感覚麻痺だけではありません。

また、自律神経の障害により足が乾燥してひび割れやすくなります。運動神経の障害で足の指が変形し、特定の場所に異常な圧力がかかって靴擦れやタコが生じやすい環境が作られます。そこに知覚神経の麻痺が加わると、靴に小石が入ったまま歩き続けてできた傷にも気づけないのです。

健康な足なら自然に治る傷も、血流と神経が阻害された糖尿病の足では致命傷になります。免疫力が極端に低下し、血流障害で抗菌薬も届かないため、細菌は気づかないうちに猛烈な勢いで繁殖します。痛みという警報機が壊れている以上、自分の目で見るしか防ぐ方法はありません。足を守る知識さえあれば、この悲劇は防ぐことができたかもしれません。

手遅れになる前に、確認すべき3つのサイン

ただの靴擦れという誤認で足を限界まで追い込まないよう、神経が発するSOSと視覚的なサインを見逃さない配慮が必要です。

1.足先が常にジンジンとしびれ、一枚皮を被ったような違和感がある

知覚神経の破壊が始まっている初期のサインです。すでに痛みを感じにくくなっています。

2.足の裏に分厚いタコができている、または指が変形している

自律神経や運動神経が障害されているおそれがあります。感覚がないため、歩くたびに同じ場所に異常な圧力がかかり続けている危険な状態です。

3.靴下を脱いだ時、身に覚えのない血液や黄色い膿のシミがついている

無痛のまま傷が化膿し、組織が溶け始めていることを示す危険な警告です。

まとめ

旅行を楽しんだ結果が足の切断の危機に繋がるのは大変なショックです。ぜひ糖尿病の痛みが消える恐ろしいメカニズムを知り、3つのサインを確認しましょう。

まずは、毎日の入浴時や着替えの際に、足の裏や指の間を自分の目で観察する習慣を取り入れましょう。小さな傷や赤みを見つけた際は決して自己判断で処置せず、直ちに糖尿病の主治医に相談し、必要に応じてフットケアや足病変を専門とする医療機関(皮膚科、形成外科、血管外科など)を受診します。

自分の足で歩き続ける自由な日常を守るためにぜひ早い段階で医療を活用してください。


監修者・執筆:松岡 雄治

総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など

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