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「健康のために」朝ウォーキングを始めた50代男性→歩き出して数分後、殴られたような激痛が走り…男性を襲った“恐ろしい病名”

  • 2026.4.11
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「少し暖かくなってきたし、健康のために朝はウォーキングをしよう」

50代男性の会社員Dさんは、春の冷え込む早朝に家を出ました。健康診断や病院で血圧が高いことを指摘されていましたが、自覚症状もなく未治療のままでした。

しかし、歩き出して数分後。背中から腰にかけてバットで殴られたような激痛が走り、Dさんはその場にうずくまりました。「ひどいぎっくり腰だ」と思いましたが、その場で倒れ込み、救急搬送された結果は「急性大動脈解離」でした。緊急開胸手術で一命は取り留めたものの、現在は再発の恐怖と背中合わせで、厳格な血圧管理と制限の多い生活を強いられています。

皆様こんにちは。日夜心臓血管外科を含む緊急手術に対応する麻酔科専門医の松岡です。今回は、春先の血圧変動を甘く見ることがいかに危険かというお話です。

激痛は「全身を貫く大血管が裂ける」サイン

背中や腰の痛みといえば筋肉や骨による痛みだろうと、誰もが最初は考えます。

しかし、ベースに高血圧がある場合、その痛みは筋肉ではなく「血管が裂ける痛み」の可能性があります。大動脈は心臓から全身へ血液を送る、最も太く重要なパイプです。

【高血圧から大動脈解離に至るフロー】
・高血圧の放置により、大動脈の内側の壁が常にダメージを受け、もろくなる
・春の寒暖差や起床時の血圧上昇(モーニングサージ)が重なり、血圧が急激に跳ね上がる
・限界を超えた血圧が、もろくなった大動脈の内壁に亀裂を入れる
・その裂け目に血液が猛烈な勢いで流れ込み、血管の壁が縦にメリメリと引き裂かれる
・裂ける場所が背中や腰を通るため、「背部痛」「腰痛」と勘違いしやすい激痛が生じる

「たかが血圧」という油断と、春先の危険な境界線

「どこも痛くないし、血圧の薬は一度飲み始めたら一生やめられないと聞くから、なるべく飲みたくない」「まずは塩分を控える生活から」そう考えて受診を後回しにしてしまうのは、みなさん同じです。忙しい日々の中で、痛みのない異常に向き合うのは少しエネルギーがいることです。

ただ、実のところ、大動脈解離という生死をさまよう大病の引き金は、ごくありふれた「高血圧の放置」なのです。実際に、大動脈解離を発症した患者さんの約8割には高血圧の背景があることがわかっています。

とくに危険なのは、朝起きてすぐに冷たい外気の中へ出ることです。起床時は交感神経が活発になって血圧が急上昇しやすい時間帯(モーニングサージ)です。
冷たい外気が肌に触れると、身体は熱を逃がすまいとして「血管をギュッと縮めるホルモン」を分泌します。このダブルパンチが重なることは、「劣化した古いホースを外から指で強くつまみながら、水道の蛇口を全開にひねる」ようなものです。

日々の血圧管理と、寒い朝は防寒を徹底する、自宅でストレッチなどをして身体を温めるといった「少しの工夫」さえ知っていれば、防ぐことができた悲劇かもしれないのです。

手遅れになる前に、確認すべき3つのサイン

「いつもの腰痛や背部痛だ」と誤認して救急受診が遅れないよう、大動脈解離特有のサインを知っておくことが不可欠です。以下の症状には特に注意してください。

1.突然、経験したことのない「引き裂かれるような」激痛が走る

筋肉や関節の痛みは「動かしたとき」に強くなったり、徐々に痛みが悪化したりします。しかし大動脈解離は、「何の前触れもなく突然、発症した瞬間が最も痛い」というのが最大の特徴です。

2.痛む場所が、時間とともに「移動」していく

血管が裂けながら進んでいくため、最初は胸や背中だった痛みが、お腹や腰、足の方へと移動していくのが非常に特徴的なサインです。

3.痛みに加えて、冷や汗が出たり手足がしびれたりする

裂けた血管によって手足や脳へ向かう血流が遮断されると、手足の冷え、しびれ、麻痺などの重大な症状が同時に現れます。

まとめ

血圧が高いだけで病院に行くのは大げさだ、薬に頼りたくないと考えるお気持ちはよくわかりますし、病気の恐ろしいメカニズムを知らないことも無理のないことです。

まずは明日、起きた時にトイレに行き、リラックスした状態の血圧を測ることから始めてみてください。もし上の血圧が135mmHgを超える日が続くようであれば、自己判断せずに循環器内科を受診しましょう。見えない恐怖に怯えることなく、血圧測定でリスクの見える化をすることがポイントです。
必要に応じて医療を活用して健康な毎日を守りましょう。


監修者・執筆:松岡 雄治

総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。

 

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