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『アンナチュラル』『MIU404』プロデューサー最新作「今期の本命」初回から“一筋縄ではない”物語に絶賛【金曜ドラマ】

  • 2026.4.24

『アンナチュラル』『MIU404』などで知られる新井順子プロデューサーの最新作『田鎖ブラザーズ』が放送スタートした。岡田将生と染谷将太を主演に迎え、31年前の両親殺害事件が、時効廃止のわずか2日前に時効成立してしまった兄弟が、その後それぞれ刑事と検視官として事件に向き合っていくミステリー作品だ。

重苦しい未解決事件ものと言えるが、第1話を見てまず印象に残るのは、「残された人の時間は止まってしまう」という痛切な感覚だ。新井順子は、常にそうした取り残されそうになる人に目を向けてきた。そんな彼女らしい作品に仕上がりそうな期待を感じさせた第1話となった。

時効の無念を知る2人が警察に

物語の発端となるのは、2010年4月27日。殺人などの公訴時効廃止を伝えるニュースを見つめる田鎖真と弟・稔の前に突きつけられるのは、自分たちの両親が殺された“田鎖家一家殺傷事件”の時効が、そのわずか2日前に成立してしまっていたという事実である。たった2日。そのわずかな差によって、犯人は永遠に裁かれない存在となり、兄弟の人生は決定的に変わってしまった。この設定だけでも十分に強烈だが、本作が巧みなのは、その理不尽を単なる背景説明で終わらせず、現在進行形の刑事ドラマの中に深く食い込ませている点だ。

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金曜ドラマ『田鎖ブラザーズ』第1話より(C)TBSスパークル/TBS

現在、兄の真は神奈川県警の刑事、弟の稔は検視官として働いている。第1話では、女性が帰宅すると、同棲相手が密室状態の部屋で死亡していたという不可解な変死事件が描かれる。鍵を持っていたのは被害者と恋人だけ。しかし彼女はその1週間、仕事でパリに滞在していた。

いかにも第1話らしい導入だが、話は単純なトリック解きには向かわない。解剖と検視を進めるうちに、遺体は名前と身元が一致せず、別人であることが判明、さらに死の直前にひき逃げ事故に遭っていた可能性が浮かび上がる。「どう死んだのか」だけでなく「誰が死んだのか」さえわからなくなる展開は鮮やかで、初回から一筋縄ではない物語が展開していった。

対照的な兄弟演じる岡田将生と染谷将太

第1話は、基本的な人間関係と人物紹介も兼ねながら進んでいく。面白いのは、物語の中心となる兄弟の対照的な性格だ。

岡田将生演じる真は、どこかずぼらで、軽口も多く、いかにも要領よく生きているように見える人物だ。だが、ひとたび事件の向こう側にいる“残された人”の感情に触れた瞬間、彼は豹変する。恋人を失った女性の戸惑い、何も知らなかったことへの痛み、どうして死ななければならなかったのか知りたいという切実さに、真は人一倍敏感に反応する。普段の緩さがあるからこそ、彼が本気で捜査に入った時の切り替わりが際立ち、その人間味が強く伝わってくる。

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金曜ドラマ『田鎖ブラザーズ』第1話より(C)TBSスパークル/TBS

一方、染谷将太演じる稔は、人付き合いが苦手で、感情を大きく表に出すタイプではない。検視官として淡々と遺体と向き合い、事実を積み上げていく姿はきわめて有能で、しかも兄の世話まで焼いているあたり、生活者としてはむしろこちらのほうがしっかり者だ。作中にも2人の関係が夫婦のようだというセリフが登場するが、視聴者もこの2人の関係の描写にはビビッドに反応しており、夫婦のような兄弟関係は本作の見どころになりそうだ。

そんな稔が口にする「残された人は、時間が止まっちゃうから」という一言は、このドラマの芯をもっとも端的に言い表している。この兄弟の時間は、31年前の事件から止まったままなのだ。

兄は人の痛みに感情で近づき、弟は死の事実に沈着に向き合う。やり方は違っても、2人とも事件によって取り残された人間であることに変わりはない。本作は兄弟の性格差を単なるキャラクターの面白さにせず、共通の痛みを抱える者同士としても描いている点に深みがある。

どんでん返しの第1話ラスト、果たして真相は?

変死事件はひき逃げ事故ということで、ひとまずの決着を迎えそうになる。だが、それで終わらない。むしろ、真相に近づいたと思った瞬間に、さらに別の疑問が顔を出し、このドラマが簡単に“一件落着”を許さない作品であることを示してみせる。31年前の両親殺害事件の真相はもちろん、毎話の事件もまた、表面だけをなぞっていては辿り着けない場所へ進んでいきそうで、考察を促す展開になりそうだ。

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金曜ドラマ『田鎖ブラザーズ』第1話より(C)TBSスパークル/TBS

SNSでも今後の展開に期待を寄せる声が多い。「今期の本命」や「想像以上に面白い」という声が上がっており、第1話は視聴者の期待にしっかりと答えたようだ。

『田鎖ブラザーズ』初回は、未解決事件の痛み、職業ドラマとしての手触り、そして兄弟ものとしての情感を過不足なく提示した好スタートだった。たった2日で時効の内と外が分かれてしまったという残酷さは、あまりにも理不尽だ。だからこそ、この兄弟が日々の事件と31年前の過去にどう向き合っていくのかを見届けたくなる。


TBS系 金曜ドラマ『田鎖ブラザーズ』毎週金曜よる10時

ライター:杉本穂高
映画ライター。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。X:@Hotakasugi