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ネトフリ配信決定で“再び注目”集まる【NHK大河ドラマ】天下人になれなかった武将を主人公にした“12年前の名作”

  • 2026.6.13

6月22日からNetflixで配信されることが決定したことで、『軍師官兵衛』に対する注目が再び高まっている。
本作は2014年にNHKで放送された大河ドラマで、天才軍師・黒田官兵衛(岡田准一)の物語だ。

※以下本文には放送内容が含まれます。 

時は戦国時代。黒田官兵衛は、播磨国の小寺家に家老として仕えていた。
播磨は織田家と毛利家に挟まれ、どちらに付き従うかの選択を迫られていた。
日に日に勢いを増す織田信長(江口洋介)を高く評価していた官兵衛は、小寺家を説得し織田家に従属することを決意。そして信長の家臣・羽柴秀吉(竹中直人)の配下となり、行動を共にするようになる。

三英傑以外の武将を主人公にした戦国大河

戦国時代は幕末と並ぶ大河ドラマの人気ジャンルだが、実は戦国大河には二種類ある。
それは織田信長、豊臣秀吉、徳川家康という三英傑を主人公にした作品と、それ以外の武将を主人公にした作品で、『軍師官兵衛』は後者にあたる。
近年では2023年の『どうする家康』がそうだったが、天下統一を果たした秀吉や家康、あるいはその一歩手前まで迫った信長の物語は、権力の頂点へと上り詰めていく英雄たちを描く大河ドラマとなっている。
対して、黒田官兵衛を主人公にした『軍師官兵衛』や、明智光秀を主人公にした『麒麟がくる』などの作品は、天下統一を果たした三英傑の間近にいた英雄にはなれなかった者たちの物語となっている。

2000年代以降、三英傑になれなかった者たちを主役にした戦国大河が作られる機会が増えている。
おそらく1973年の『国盗り物語』を筆頭とする三英傑が主人公の大河ドラマは昭和でやり尽くされてしまったため、これまでとは違う戦国武将に光を当てることで、新しい切り口で戦国時代を描きたいという、作り手の思いがあるのだろう。
また、作品が作られた時代状況も反映されているのではないかと思う。
日本が経済成長していく昭和の時代においては、天下統一を果たそうとする英雄たちの物語に、視聴者が感情移入して楽しめた。だが、不況が続く平成~令和の低成長時代になると、英雄たちに素直に感情移入することは難しくなる。
だからこそ、英雄になれなかった人々の視点から、三英傑の姿を改めて問い直すような物語が描かれるようになった。『軍師官兵衛』においては、秀吉の描かれ方にそれは強く表れている。

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竹中直人 (C)SANKEI

本作で秀吉を演じる竹中直人は、1996年に放送された大河ドラマ『秀吉』で主人公の秀吉を演じていた。
『秀吉』は平成8年に作られた大河ドラマだったが、農民の生まれでありながら、武将として出世していく英雄としての秀吉を明るく痛快に描いた昭和の大河ドラマの遺伝子を引き継いだ作品だった。『軍師官兵衛』の竹中直人は『秀吉』の時と同じように、秀吉を無邪気で明るい男として演じている。そのため、当初は人情味があふれる優しい男として描かれているのだが、天下統一を果たし太閤になると、老獪で横暴な権力者へと変貌していく。
『秀吉』では、権力の頂点に立った晩年の秀吉の姿は描かなかった。そのことによって秀吉を明るい英雄として描くことに成功していたのだが、『軍師官兵衛』では、竹中直人が晩年の秀吉を演じるため『秀吉』の続編を観ているような面白さがある。
同時に晩年の秀吉の醜悪な姿を観ていると、この頃から私たちは、秀吉の立身出世の物語を美しいとは思えなくなったのだと感じる。昭和の高度経済成長とリンクした秀吉の立身出世の物語を、平成に入ると私たちは信じることができなくなった。『軍師官兵衛』の秀吉の描かれ方に、それは強く表れている。

天才軍師だったが、天下人にはなれなかった官兵衛

一方、本作の主人公・官兵衛はどのように描かれたのか。軍師としての官兵衛はとても優秀だったが、信長に反旗を翻した親友の荒木村重(田中哲司)の説得に失敗して、土牢に幽閉されてしまう場面を筆頭に、戦以外の局面で大きな敗北を何度も味わっている。

最終回。家督を息子の長政(松坂桃李)に譲り、出家して黒田如水と名乗るようになった官兵衛は、関ヶ原の戦いが起きたことを契機に、九州を平定することで天下取りの闘いに挑もうと目論んでいた。しかし、関ヶ原の戦いは一日で終わり、徳川家康(寺尾聰)を総大将とする東軍が勝利する。長政が東軍で功績を残したため、黒田家は安泰だったが、ここで彼の夢はあっけなく断たれることとなる。

戦で負けたことがない天才軍師でありながら、不運が重なり天下人になれなかった如水の姿を見ていると、こういう人は現代にもいるよなぁと感じる。誰もが英雄になれるわけではない。どれだけ優秀な人間でも、時の運が味方しなければ、負けることもあるのだと、如水を見ていると思う。
だが、天下人にはなれなかったが、如水は信頼できる家族と仲間たちに囲まれ、幸せに年を取ることができた。その姿は天下人となりながらも孤独で哀れな老後を迎えた秀吉とは正反対で、天下人になるより大切なものを彼は手に入れたのだと思わせる最終回だった。


出典:NHK 大河ドラマ『軍師官兵衛』NHKアーカイブス

ライター:成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)、『テレビドラマクロニクル 1990→2020』 (PLANETS)がある。

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