1. トップ
  2. 朝ドラ初出演ながら“遊び心”を見せた人物「出番一瞬だった」「次は例の二人も…?」舞台の県に絡めた“キャスティング”の妙

朝ドラ初出演ながら“遊び心”を見せた人物「出番一瞬だった」「次は例の二人も…?」舞台の県に絡めた“キャスティング”の妙

  • 2026.4.29

2026年度前期の連続テレビ小説『風、薫る』で、“朝ドラ”初出演を果たしたザ・たっち。SNS上でも「待ってました」「出番一瞬だった」と話題になったその姿は、想像以上に作品の世界観にハマっていた。栃木県を舞台地のひとつにした本作で、双子の商人・柴田屋と松永屋を演じる二人は、得意の掛け合いと自然な栃木弁で、物語に独特の温度を加えている。さらにSNS上では「次は例の二人も…?」と、同じ栃木出身のお笑いコンビ・U字工事の登場を期待する声まで。なぜザ・たっちはここまで朝ドラにフィットしたのか。

※以下本文には放送内容が含まれます。

ご当地ドラマとしての側面も?

undefined
『風、薫る』第2週(C)NHK

第2週、主人公の一人・りん(見上愛)と亀吉(三浦貴大)の結婚式の場に現れた双子の商人・柴田屋と松永屋。ザ・たっちが演じる二人は、本編内でも双子の設定だ。

緑の着物の柴田屋、茶の着物の松永屋。しかも「どっちが柴田屋か、わかっかい?」という一言には、往年の“タッチ”ネタを思わせる遊びまで仕込まれていた。脚本側も、彼らの記号性をわかったうえで使っている。

実はこうした“栃木ゆかり”のキャスティングは、ザ・たっちに限った話ではない。すでに同じく栃木県出身の大島美幸(森三中)もゲスト出演しており、本作では土地の空気を知る人物たちを点描のように配する試みが見て取れる。こうした積み重ねが、作品にご当地ドラマとしての厚みを与えているのも興味深い。

『風、薫る』は、生きづらさや女性の自立という、決して軽くないテーマを抱えた作品でもある。そんな中で、ザ・たっちの掛け合いは、場面に呼吸を作っていた。緊張が少し緩み、人間関係の温度が上がる。しかも双子という設定が、そのまま本人たちの持ち味と一致している。無理に役を“演じている”感じがない。いるべくしてそこにいる。

芸人のゲスト出演はしばしば異物になりがちだが、ザ・たっちは作品世界に溶け込んでいる。むしろ昔からその町にいた人のように見える。それは芸人として積み重ねてきた“生活感のある笑い”があるからかもしれない。

現代につながる方言の魅力

今回の出演が効いている最大の理由は、やはり栃木弁にある。ザ・たっちは栃木県出身。本作の舞台と地続きの存在だ。ネイティブが放つ言葉の説得力は別格である。

語尾のやわらかさ、イントネーション、間の置き方。そうした細部が、“再現された方言”ではなく“生きた土地の言葉”として響く。

明治という遠い時代の話でありながら、不思議と今に繋がって見えるのは、この地元性があるからかもしれない。

しかも興味深いのは、双子で並ぶ構図が、りんと直美(上坂樹里)という二人の主人公の対照性と、どこか密かに呼応していることだ。

似ているようで違う。並んでいるからこそ個性が立つ。双子の二人が、作品のテーマ構造をさりげなく補強しているようにも見える。

そしてSNS上で盛り上がっているのが、「次は例の二人も…?」という声。つまり、お笑いコンビ・U字工事の待望論だ。たしかに、ここまで栃木色が濃くなってくると、“栃木ユニバース”のような楽しみ方も生まれてくる。

双子ならではの空気

undefined
『風、薫る』第2週(C)NHK

ザ・たっちの強みは、彼らの名前が出た瞬間に“こういうシーンが作れそう”と完成図が浮かぶ点ではないか。

双子である彼らにとって、代えがきかない資質だろう。双子芸人として2000年代に確固たるポジションを築いてきた二人は、“双子ならではの空気”を記号として共有されている。

だからこそ作り手は、その記号を前提に演出を組める。ドラマ『アテンションプリーズ』や『謎解きはディナーのあとで』などでスポット出演が重宝されてきたのも、このためだろう。

演出のアイデアそのものを生む存在は、強い。しかも双子のあ・うんの呼吸は、長尺の説明がいらない。出てきた瞬間に、関係性が伝わる。とくに“朝ドラ”のように登場人物が多い作品では、この効率の良さは非常に大きい。

“にぎやかし”に見えて、実はかなり機能的なキャスティングなのである。ザ・たっちは、『風、薫る』に少しだけ笑いを持ち込んだのではない。栃木という土地の空気そのものを、朝の茶の間へ運んできた。

それこそが、このキャスティングの本当のおもしろさなのかもしれない。


連続テレビ小説『風、薫る』毎週月曜〜土曜あさ8時放送
NHK ONE(新NHKプラス)同時見逃し配信中・過去回はNHKオンデマンドで配信

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X:@yuu_uu_