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「夜だけど朝ドラ感ある」「早くも良作の予感」NHK新・夜ドラの“期待を裏切らない”第1週目に、心つかまれる

  • 2026.4.6

NHK夜ドラ『ラジオスター』第1週は、派手な展開こそないものの、静かに心をつかむ導入だった。SNS上でも「夜だけど朝ドラ感ある」「早くも良作の予感」といった声が上がっている。本作は、震災後の能登を舞台に“声でつながる”ことの意味を描く物語。これからどんどん、おもしろくなっていくという予感が、はっきりと残る1週間だった。

※以下本文には放送内容が含まれます。

“よそ者”の視点が開く、物語の入口

『ラジオスター』第1週でまず提示されたのは、主人公・柊カナデ(福地桃子)の立ち位置にある。

大阪でEコマースの仕事をしていた彼女は、仕事や生き方に違和感を抱え、能登へとやってきた。多くの人や情報に囲まれる都市の生活にまみれ、気づけば“自分が嘘をついているような感覚”に陥っていたカナデ。その感覚は、現代を生きる多くの人にとって決して他人事ではないだろう。

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夜ドラ『ラジオスター』第1週(C)NHK

そんな彼女が“よそ者”として能登に入っていく構図は、視聴者の視線と重なる。自分に何ができるのか分からない。役に立てるのかも分からない。不要なよそ者として終わってしまうかもしれない。その戸惑いごと、この土地と向き合おうとする姿に、無理のないリアリティが宿る。

福地の演技もまた、この作品の空気を決定づけている。過剰に感情を表現することなく、あくまで自然体でそこにいる。その佇まいと、柔らかくも芯のある声が、ラジオという題材と見事に重なっている。
彼女がたどたどしくマイクに向かう姿は、小さな一歩でありながら、確かな始まりを感じさせる瞬間だった。

なぜいま、ラジオなのか

本作のもうひとつの軸は、ラジオというメディアの選択にある。
音声コンテンツはスマートフォンひとつで手軽に発信できる時代。好きな時間に、好きな場所で聴ける。それが当たり前になった現代において、あえて“コミュニティFM”という形にこだわる理由はどこにあるのか。
その答えは、松本(甲本雅裕)の言葉や行動に滲んでいる。

彼が目指しているのは、ただの情報発信ではない。同じ時間に、同じ声を聴くことで生まれるつながりだ。誰かがいま、この瞬間に同じ放送を聴いているかもしれない。見えないけれど、確かにそこに存在する他者の温度。その感覚こそが、ラジオの持つ本質なのだろう。
本編内のセリフ「孤独は人の根っこを枯らします」という言葉が示す通り、本作は“孤独”というテーマと真正面から向き合っている。だからこそ、ラジオというメディアが選ばれた意味は大きい。姿は見えなくても、声は届く。その距離感が、このドラマの温度を形作っている。

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夜ドラ『ラジオスター』第1週(C)NHK

第1週で描かれたもうひとつの重要なテーマが、“笑い”である。
震災後の土地では、笑うことにどこか罪悪感を抱いてしまう空気があるものだ。そんななかで、銭湯・すずの湯を拠点に、手探りで始まるラジオの準備。常盤貴子演じるさくらをはじめとした個性豊かな面々が集まり、どこかぎこちなくも温かい空気が生まれていく。

ここで描かれているのは、大きな奇跡ではない。ほんの一瞬、誰かの気持ちが軽くなるような時間だ。それでも、その小さな変化が積み重なっていくことで、人は少しずつ前に進めるのかもしれない。
こんな時に、笑っていていいのか、という問いに対して、本作は明確な答えを提示しない。ただ、その迷いごと受け止めながら、それでも笑おうとする人々の姿を描いていく。その姿勢が、どこかやさしく、そして誠実だ。

まだ小さな声が、やがて届くとき

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夜ドラ『ラジオスター』第1週(C)NHK

第1週は、物語として大きく動いたわけではない。それでも、確かな手応えが残る。
カナデという“よそ者”の視点、ラジオという媒介、そして“笑い”というテーマ。それぞれがまだ点の状態でありながら、ゆっくりと線になろうとしている。

派手なフックではなく、静かに積み重ねていくタイプのドラマ。その歩みはゆっくりかもしれないが、だからこそ一歩一歩が確かだ。

まだ小さな声にすぎないそのラジオは、きっとこれから誰かの心に届いていく。その広がりを、ゆっくりと見届けていきたいと思わせてくれる第1週だった。


NHK 夜ドラ『ラジオスター』毎週月~木 よる10時45分~11時00分
NHKプラスで見逃し配信中

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X:@yuu_uu_