1. トップ
  2. 大人気朝ドラ“夜ならでは”の放送内容「表現が直接的」「朝じゃ言えないワードが」本編からさらに“踏み込んだ”描写

大人気朝ドラ“夜ならでは”の放送内容「表現が直接的」「朝じゃ言えないワードが」本編からさらに“踏み込んだ”描写

  • 2026.4.6
undefined
『虎に翼』スピンオフドラマ『山田轟法律事務所』(C)NHK

3月20日(金)に『虎に翼』のスピンオフドラマ『山田轟法律事務所』が放送された。2年ぶりに放送された『虎に翼』の世界で描かれたのは、本編では描かれなかった戦後の山田よね(土居志央梨)の物語。そこには、寅子(伊藤沙莉)とは別の戦後の世の中を見つめ、憤るよねの姿があった。

SNSでは、「夜だから表現が直接的だった」「朝じゃ言えないワードが……」など、本編からさらに踏み込んだ描写に注目が集まった。

※以下本文には放送内容が含まれます。

戦後の上野で、よねはどう生きていたか

undefined
『虎に翼』スピンオフドラマ『山田轟法律事務所』(C)NHK

スピンオフの舞台は、荒廃した戦後の上野。よねは重傷を負った増野(平山祐介)を介護しながら、法律相談の代書屋をしていた。ほどなくして、新聞に日本国憲法の草案が発表される。そのなかには、第十四条「法の下の平等」が。そこに記されていた内容は、よねが生きる世界からは程遠いものだった。憤るのも無理はない。

第十四条 すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。出典:衆議院『日本国憲法』第三章 国民の権利及び義務 より

日本政府もGHQも地域で権力を持つ男性たちも、身体を売る立場の女性がいることを、一般婦女子を守るための尊い犠牲だと開き直っていた時代。当たり前に性差別、社会的身分による差別が存在していた。

久しぶりに再会したよねの姉・夏(秋元才加)は、慰安婦として誇りを持って働いていたようだが、搾取されていることを受け入れている夏をよねは許せない。夏と喧嘩別れしてしばらくして、夏は何者かに命を奪われてしまう。夏を殺した犯人は戦争で家族と許嫁を亡くし、進駐軍相手に商売する女性を恨んだ復員兵だった。

町を見渡すと、日本人と在日朝鮮人の喧嘩が勃発し、殺人事件に発展することも。よねの元には、被差別部落出身の男性が名字変更を希望してやってくるが、その願いは聞き入れられない。黒人である夏の元恋人・アンソン(ウィリー・スピアーズ4世)は夏の死を悲しむが、責めるよねに対し「自分の立場では何もできない」「私も虐げられている側だ」と告げる。人種、門地による差別も根強かったのだ。

スピンオフドラマでは女性だから、身体を売る職業だから、黒人だから、在日朝鮮人だから、被差別部落出身だからと虐げられ、さまざまな形で皺寄せを受けている人の姿が克明に記されていた。

スピンオフドラマは、そんな法の下の平等なんて叶えられないどうしようもない地獄で、よねが「正しく怒るよね」であるためにどう生きたかを描いた物語だった。

直接的な描写から逃げない

undefined
『虎に翼』スピンオフドラマ『山田轟法律事務所』(C)NHK

夏が登場した場面では、とくに直接的な描写が目立っていたように思う。実際に戦後の上野には、自活のために進駐軍相手に身体を売る女性が多く存在していたそうだ。朝には放送しづらいワードチョイスも、よねが暮らす町のリアルを正面から描くためだろう。街娼の存在、慰安所の事情など、戦後の上野をきちんと描きたいという意図が感じられる。それによって本編とは異なる形で女性差別を描くことができていた。

本編でも人種、信条、性別、社会的身分に関わる差別はたっぷりと描かれていたが、それは寅子が裁判官として関わる裁判や事件を通して留まる。寅子が関わる事件は、起きてしまってから時間が経ち、裁かれることが決まったものが多く、事件の内容はナレーションでカバーされることも多かった。一方で、スピンオフドラマで描かれたのは、たった今町で起きている事件だ。差別されたくないという願いが拒否されたり、抗うことで命を奪い合ったりと、よねの目の前には今この瞬間に苦しんでいる人々が現れる。本編よりも各種差別の描写が重たく感じられたのは、荒廃した上野で必死に生きる人々、差別され犠牲になる人の姿が、凄惨な場面として繰り返し描かれたからに他ならない。だからこそ、スピンオフとしては異例といえる重厚さがあった。そしてそれは、よねを主人公にしなければできなかったことだ。

よねが壁に十四条を書き記した背景には、法の下の平等を旗印として正しく怒ろうという決心があった。怒りの表明は理不尽と戦う意思の表明だ。苦しみながらも、光を浴びて怒りと共に前を見据えるよねの表情は、独特の美しさを放っていた。

よねの戦後という本編で描けなかった場面が描かれたことで、『虎に翼』の純度がまた高まったように感じる。施行から80年経とうと、法の下の平等が叶えられたとは言い切れず、国内外の社会情勢は不安定な現代。『虎に翼』を心に宿し、理不尽に立ち向かえるような芯を持ちたい。


連続テレビ小説『虎に翼』スピンオフドラマ『山田轟法律事務所』3月20日よる9時30分~
NHK ONE(新NHKプラス)同時見逃し配信中・過去回はNHKオンデマンドで配信

ライター:古澤椋子
ドラマや映画コラム、インタビュー、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。
X(旧Twitter):@k_ar0202