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「10年後はどうなるんだ…」昭和50年代開発のニュータウンで中古戸建てを購入→30代夫婦を襲った"想定外"の現実【一級建築士は見た】

  • 2026.5.9
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「都心の賃貸で家賃を払い続けるより、安く買えて庭もある家の方がいいと思ったんです」

そう話すのは、都心から電車とバスで約1時間、昭和50年代に開発されたニュータウンの中古戸建て(1979年築・土地100坪・建物30坪)を約1,500万円で購入したFさん(30代男性、夫婦・子ども1人の3人暮らし)です。

緑が多く道幅も広い、整った街並み。内覧では「この価格でこの環境はお得だ」と感じたといいます。

ところが入居後、少しずつ「想定外」が見えてきました。最寄りのバスが減便になり、近くのスーパーが閉店。

自治会の役員を頼まれたものの、周囲はほとんどが70代以上。「この街、10年後はどうなるんだろう」と不安を感じるようになったそうです。

ニュータウンで何が起きているのか

ニュータウンは、高度経済成長期からバブル期にかけて、大量の住宅供給を目的として全国各地に開発された計画的な住宅地です。開発当初は同世代の若い家族が一斉に入居しましたが、入居から40〜50年が経過した現在、住民の高齢化と人口減少が同時に進んでいます。

人口が減ればバスの利用者も減り、路線の減便や廃止につながります。スーパーや病院といった生活利便施設の撤退も、利用者の減少が直接の原因です。

こうした変化は数年単位でじわじわと進むため、購入時には気づきにくいのです。

「安さ」の裏にある構造的な理由

ニュータウンの中古戸建てが安い理由は、単に「古いから」だけではありません。建築士の視点から見ると、いくつかの構造的な要因があります。

・鉄道駅から遠い立地:
多くのニュータウンはバス便に依存しており、バス路線が維持されなければ生活の足そのものが失われるリスクがあります。

・インフラの更新時期:
開発から40〜50年が経つと、上下水道管や道路の舗装、側溝などが一斉に更新時期を迎えます。自治体の財政状況によっては、更新が後回しにされることもあります。

・旧耐震基準の建物:
1981年5月31日以前に建築確認を受けた建物は「旧耐震基準」で設計されており、現行基準と比べて耐震性能が不足している可能性があります。1979年築であるFさんの住宅もこれに該当し、耐震補強に数百万円かかるケースも珍しくありません。

・断熱性能の低さ:
昭和50年代の住宅は、現在の省エネ基準と比べて断熱性能が大幅に低いことが多く、冷暖房費がかさみやすい点も見落とされがちです。

これらを考慮すると、物件価格が安くても「住み続けるためのコスト」は決して安くない場合があります。

Fさん夫婦はどう対応したのか

旧耐震基準の住宅に住むリスクを購入後に知ったFさん夫婦は、まず自治体の無料耐震診断を利用しました。多くの自治体では、旧耐震基準の木造住宅を対象に無料または低額の耐震診断を実施しています。

診断の結果、Fさんの住宅は「倒壊する可能性が高い」と判定されました。そこで自治体の耐震改修補助金(Fさんの場合は上限100万円)を活用し、筋かいの追加や基礎の補強など、約300万円の耐震補強工事を実施。自己負担は約200万円に抑えることができたといいます。

それでもニュータウンを選ぶなら、確認しておきたいこと

もちろん、すべてのニュータウンが同じ状況にあるわけではありません。

自治体によっては、若年世帯の転入支援(住宅取得補助やリフォーム補助)、空き家バンクの活用、コミュニティ施設の整備など、再生に向けた取り組みを進めているところもあります。

ニュータウンの中古戸建てを検討する際は、建物の状態だけでなく、以下の点も確認してみてください。

・自治体の都市計画マスタープランで、そのエリアがどう位置づけられているか
・ニュータウン再生計画やまちづくり方針が策定されているか
・バス路線の維持方針や、今後の減便・廃止の予定がないか
・周辺の空き家率や人口推移

「安くて広い」は魅力的ですが、それだけで判断すると、10年後に「こんなはずじゃなかった」と感じることがあります。

物件そのものだけでなく、街の「これから」まで見ておくこと。それが、ニュータウンで後悔しにくい家選びのポイントです。

参考: 耐震改修補助 (神奈川県)


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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