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「地方なら土地が安いし余裕」と思いきや…移住を決めた30代夫婦を襲った"住宅コストの誤算"【一級建築士は見た】

  • 2026.5.7
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「地方なら土地が安い分、都会より広い家が建てられると思っていたんです。でも見積もりが出てきたら、全然余裕がなくて…」

そう話すのは、リモートワークを機に地方移住を決めたHさん(30代男性、夫婦+子ども1人の3人暮らし)です。

Hさん夫婦の当初の計画はこうでした。総予算3,500万円。移住先の土地は約80坪で約700万円。

もともと都内の郊外で土地探しをしていたときは、30坪前後で2,500万〜3,000万円が相場でした。移住先なら同じ予算で倍以上の広さが手に入り、差額を建物に回せると考えたのです。

4LDK・延床面積35坪の注文住宅を想定し、「書斎スペースも確保して、ゆとりのある暮らしができるはず」と期待していたといいます。

ところが、工務店から出てきた最初の見積もりは約3,200万円。土地と合わせると約3,900万円で、予算を400万円もオーバーしていました。

安いのは「土地だけ」という現実

建材や住宅設備の価格は、全国的にほぼ共通です。地方だからといって、建物そのものが安くなるわけではありません。

むしろ、資材の運搬距離が長くなる分、輸送コストが上乗せされるケースがあります。加えて、地域によっては工務店の数が限られやすいため、相見積もりが取りにくく、価格の妥当性を判断しにくい面もあります。

さらに見落としやすいのが、外構費(駐車場、フェンス、アプローチなど建物の外まわりの工事費用)です。

Hさんの場合、外構費は当初150万円程度と想定していましたが、実際の見積もりは約280万円。敷地が約80坪と都内で検討していた広さの倍以上あり、駐車2台分の土間コンクリート舗装、敷地全周のフェンス、玄関までのアプローチ工事だけで大きく膨らんだのです。

「土地が安い=家づくり全体が安い」とは限らないのです。

中古住宅の「格安」にも注意が必要

「それなら中古住宅を買ってリフォームしよう」と考える方もいるかもしれません。空き家バンクなどで、格安の物件が見つかることもあります。

しかし、築年数が古い住宅は慎重に検討する必要があります。1981年以前に建てられた旧耐震基準の住宅は、現在の基準を満たしていない場合があり、耐震補強だけで200万〜300万円かかることも珍しくありません。

さらに、湿気の多い地域では土台や柱にシロアリの被害が及んでいることもあり、表面からは判別しにくいのが厄介です。「物件価格500万円+リフォーム1,500万円」で計2,000万円のはずが、工事を始めてから追加の修繕が発覚し、最終的に2,500万円を超えたという相談も少なくありません。

Hさん夫婦はどうしたのか

予算オーバーに直面したHさん夫婦は、工務店の担当者と改めて打ち合わせを行い、計画を見直しました。

まず、延床面積を35坪から30坪に縮小。当初4LDKで計画していた間取りを3LDK+書斎コーナーに変更し、キッチン、浴室のグレードを下げました。これにより建築費を約350万円圧縮できました。

外構も見直しました。フェンスを敷地全周ではなく道路面のみに限定し、駐車スペースの一部をコンクリートから砂利敷きに変更。外構費は約280万円から約180万円に、約100万円の圧縮です。

最終的に、総額約3,450万円。予算内に収まりました。

「最初から建築費込みの総額で考えていれば、もっとスムーズだった」とHさんは振り返ります。

「建築費込み」の総額で計画を

地方移住で住まいの費用を見誤らないためには、土地の安さだけで判断せず、建築費・外構費・諸費用まで含めた総額で計画を立てることが大切です。

中古住宅を検討する場合は、契約前に専門家による建物の状態調査(インスペクション)を依頼しておくと、後から想定外の出費が発覚するリスクを減らしやすくなります。

地方移住は、暮らしの選択肢を広げてくれるものです。だからこそ、住まいのコストを「なんとなく安いはず」で終わらせず、具体的な数字で確認しておくこと。それが、移住後の大誤算を防ぐための第一歩です。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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