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「花粉は“内気循環”でシャットアウト」は間違い?クルマのプロが明かす、春ドライブの“危険な落とし穴”

  • 2026.4.2
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出典元:PIXTA(画像はイメージです)

本記事では、JAFの公開情報をもとに、内気と外気の賢い使い分けを解説します。花粉を防ぎつつ、快適で安全なドライブを実現するヒントをお届けします。

春のドライブ、なんだか頭がぼーっとしませんか?

ポカポカとした陽気の中で車を走らせていると、いつも以上に頭がぼんやりしたり、眠気を感じたりすることはありませんか?

つい「春の陽気のせいかな」と片付けてしまいがちですが、実はその不快感、車の空調設定が関係しているかもしれません。とくに花粉に悩まされている方が無意識のうちに続けている「内気循環の固定」が、その原因になっている可能性が高いのです。花粉をブロックしたい一心で選んでいるこの操作が、なぜ不快感につながってしまうのでしょうか?

花粉の時期、なぜ内気循環にしっぱなしになりやすいのか

最大の理由は、言うまでもなく花粉のつらさにあります。運転中に連続してくしゃみが出てしまうと、一瞬とはいえ視界が遮られることになり、ヒヤリとした経験がある方もいるかもしれません。「せめて車の中だけは花粉のない空間であってほしい」と願うのはごく自然なことです。

そのうえ、前を走る車の排気ガスが気になったり、トンネル内のこもった空気を吸いたくないと感じたりする場面も多々あります。そのような状況が重なると、「とりあえず内気循環にしておけば安心」と感覚的に設定してしまうケースは少なくないでしょう。内気循環は外からの空気の取り込みをシャットアウトし、車内の空気を循環させる機能です。花粉やにおいを物理的に防ぐという点では、理にかなっているように思えます。

しかし、その「内気循環に固定した状態」を長時間続けてしまうと、思わぬ落とし穴が潜んでいるのです。

でもJAFのテストでは、車内の空気はかなり悪化していた

その落とし穴の正体は、「車内の換気不足」です。内気循環のまま走り続けると、車内は密閉に近い状態となり、空気が淀んでしまう可能性があります。この点について、JAFが行った興味深いユーザーテストがあります。エアコンを内気循環に設定して市街地を走行し、車内のCO₂濃度を測定したところ、最大で6,770ppmにまで上昇したというデータが出ました。

外気導入で同じように走行した場合はおおむね1,000ppm前後に保たれていたとのことで、JAFの発表によると内気循環時の車内には外気導入時と比べて約5.5倍ものCO₂が充満していたことになります。この数値は決して軽視できません。一般的にCO₂濃度が3,000ppmを超えると疲労感の増加や注意力の低下が起こり、眠気や頭痛を訴える人が増えるとされており、6,770ppmはその基準を大幅に上回る極めて高い数値です。

実際にこのテストでは、内気循環で乗車していた乗員の一部が「眠気」や「軽い頭痛」を感じたと報告されています。冒頭でお伝えした「春先の運転で感じるぼんやり感」には、まさにこの車内の空気環境の悪化が関係している可能性があります。花粉を避けるために良かれと思っていた行動が、安全運転へのリスクや不快感を招いてしまうというのは、知らないと損をする盲点と言えそうです。

花粉対策としても、実は"内気固定"が絶対正解ではない

「ぼんやり感の原因はわかったけれど、やっぱり外気導入にしたら花粉が直接入ってきてしまうのでは…」と心配になる方もいらっしゃるでしょう。

しかしJAFによれば、最近の車に装着されているエアコンフィルターは花粉をある程度除去できる機能を持っていることが多く、実際のテスト結果でも「外気導入で走行しても、車内に入り込んだ花粉はわずかな量しか確認できなかった」と報告されています。つまり、外気導入にしたからといって、外の花粉がそのまま車内に吹き込んでくるわけではないのです。

また、車内に入り込む花粉の経路は空調だけではありません。乗り降りの際にドアを開け閉めしたり、衣服や髪に付着した花粉を持ち込んだりする影響も無視できません。「常に内気循環にしておけば完璧」という考え方だけでは、花粉対策として不十分である可能性が高いのです。

曇り、におい、雨、長距離運転…正解は"場面ごとの使い分け"

それでは、結局のところ空調の設定はどうするのがよいのでしょうか。正解は「どちらか一方が常に正しい」というわけではなく、状況に応じて使い分けることです。

内気循環が向いているのは、一時的に外の空気を遮断したい場面です。長いトンネルに入った時、排気ガスの多い大型車の後ろを走る時、外のにおいが強い場所を通過する時などが挙げられます。冷暖房を早く効かせたい時にも有効です。

こうした場面を過ぎたら、基本的には外気導入を選ぶことが推奨されます。通常走行時や長距離運転の時は、外気導入で新鮮な空気を取り入れることで、CO₂濃度の上昇を抑える効果が期待できます。

フロントガラスが曇った際も、基本的には外の乾燥した空気を取り入れる外気導入が有効です。ただし雨天時など外の湿度が高い場合は、外気導入では曇りが取れにくいことがあります。そのような時は「内気循環」と「エアコン(A/C)のオン」を組み合わせることで、除湿された空気をガラスに当てて曇りを取るのが効果的なケースもあります。

花粉の時期こそ、空調は固定ではなく"使い分け"で考えたい

このように、春の空調設定は「内気か外気か」の二択で決まるものではありません。花粉対策だけを優先して内気循環に固定するのではなく、車内の快適性や安全な運転環境の維持も含めて、バランスよく切り替えることが大切です。

オート(AUTO)機能で解決しようと考える方もいるかもしれませんが、車種によって制御の仕方は異なるため、自身の体感や外の状況に合わせて手動で見直す視点も持っておくとよいでしょう。

なんとなく内気循環のまま走っていたという方は、ぜひ次回のドライブから場面に合わせた使い分けを意識してみてください。そのちょっとした工夫が、花粉の時期の運転をもっと快適で安全なものに変えてくれるかもしれません。


参考:ドライブ中で、空調は「内気循環」「外気導入」どちらがいいの?(JAFユーザーテスト)(JAF)



ライター:Masaki.N
自動車メーカーで車体開発エンジニアとして設計・先行開発に携わった後、マーケティング/市場リサーチ領域で商品導入・訴求設計にも従事。さらに自動車サブスク系ITベンチャーでマーケティングを担当し、ユーザー視点のコミュニケーション設計を経験。現在は自動車ライターとして、新車情報、技術解説、モデル比較、中古車相場、維持費、業界動向まで幅広く執筆。SEO記事・コラム・インタビューなど媒体横断で制作し、専門知識を生活者の言葉に翻訳して「買う/持つ」の判断を支援します。加えて、カスタムを含む実車取材・体験を通じて得た一次情報を記事に落とし込み、机上の知識にとどまらない“現場感”のある解説を強みとしています。


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